英オックスフォード大学のコレッジ、植民地政治家の石像を撤去する意向

ショーン・コラン、BBCニュース家族・教育担当編集委員

The statue of Cecil Rhodes

画像提供, Reuters

画像説明, オックスフォードの中央通りに面するオリオル・コレッジの正面に立つセシル・ローズの石像。撤去を求める抗議が相次いでいた

オックスフォード大学オリオル・コレッジの理事会は17日、植民地政治家セシル・ローズの石造を建物から撤去したい意向だと発表した。理事会が多数決で決めたという。

セシル・ローズは植民地支配と人種差別の象徴だと反発する学生や活動家たちが以前から、石像の撤去を求めていた。オックスフォードの中央通りに面するオリオル・コレッジの建物の正面中央に、ローズの石像はあり、通りを見下ろしている。

石像は直ちに撤去されるわけではなく、コレッジは市の建築基準などとすり合わせる必要があるとしている。

「ローズは下さなくては」と運動してきた人たちは、コレッジの発表は「期待できる」としたものの、実際に撤去されるまでは注視を続けると声明を出した。活動家たちは「ローズの石像がオックスフォードの中央通りに面するオリオル・コレッジの正面を飾らなくなるまで」、大学の建物を彩る「帝国主義と植民地主義の図像」に対する抗議は続くと主張している。

オリオル・コレッジの理事たちは、「議論と検討を重ねた熟慮の期間」を経た決定だと説明し、さらに「こうした決定がイギリスや世界各地におそらく与える影響を、十分承知した上で」のことだと表明した。

大英帝国の拡張を推進し、南アフリカの鉱物採掘で巨万の富を得たセシル・ローズは、巨額の遺産をオックスフォード大学に寄付。イギリスの植民地などの学生を対象に、「ローズ奨学金」と呼ばれる留学生の奨学金基金を設立するなどした。ローズが一時学んだことのあるオリオル・コレッジは、ローズの残したものについて「独立調査委員会」を発足させる方針という。

Protesters outside Oriel College
画像説明, オリオル・コレッジの前でローズの石像に抗議した人たち

イギリスの文化遺産保護団体「ナショナル・ヘリテージ」の責任者だったキャロル・スーター氏(現オックスフォード大セントクロス・コレッジ学長)が、調査委員会の長となる。委員会は、ローズの遺産のほか、黒人や少数派民族の学生に対する支援や、「多様性」への取り組みなども検討する。ローズ像撤去を求めた活動グループや、大学の学生、地元住民、市議会議員などとも協議する方針という。

オックスフォード市議会のスーザン・ブラウン議長は石像撤去の決定を支持し、コレッジの委員会は像を「今後どこに置くのが適切か」検討する良い機会になると述べた。

ローズ像の扱いについては、様々な意見がある。

イギリス政府のミシェル・ドネラン大学担当閣外相はコレッジの決定に先立ち、像の撤去に反対していた。ドネラン氏は「歴史を書き換えようとする」のは「近視眼的」で、過去を「検閲したり修正」しようとするべきではないと主張した。

「人種差別はおぞましいもので、この国の社会でいっさい容認すべきではないということは、はっきり申し上げたい。それはこの国の大学でも同じだ」と、ドネラン氏は高等教育政策研究所の集まりで発言した。

ドネラン氏は、植民地時代の19世紀のウイリアム・グラッドストンにちなんだ名前の建物の改名や、ローズ像の撤去に反対すると述べていた。

一方で、オックスフォード中心部で抗議を続けた人たちは、ローズ像はもはや受け入れがたい帝国主義的な価値観を表すものだと批判していた。

これに対して、オックスフォード大学のルイーズ・リチャードソン副総長は先週、過去を「隠す」ことは問題だと警告し、ローズ像撤去を支持しなかった。

「自分たちの歴史を隠してしまっては英知を得られないというのが、私自身の意見だ」とリチャードソン氏はBBCに話した。

「この歴史を理解し、この石像が作られた文脈を理解し、なぜ当時の人がそのように考えたのかを理解する必要がある」

「この大学は900年前から続いている。そのうち800年もの間、大学の幹部たちは女性を教育する価値などないと考えていた。その人たちも非難すべきだろうか?」

「私自身はそう思わない。女性の教育を否定した人たちは間違っていると思うが、その人たちの時代背景をもとに判断しなくては」