(ブルームバーグ): 政府は19日、新型コロナウイルスの感染拡大で自粛を呼び掛けていた都道府県をまたぐ移動を全国で解禁する。接待を伴う飲食店への休業要請も感染防止のガイドラインを守ることを前提に撤廃し、経済活動再開のステップが次の段階へ進む。18日夕の対策本部で決定した。

安倍晋三首相は対策本部で、緊急事態宣言解除後の国内の感染状況について「新たな感染は一部の自治体にとどまっている」と指摘した上で、「あす、社会経済活動のレベルをもう一段、引き上げる」考えを明らかにした。

その後の記者会見では、今後の対策として「社会経済活動を犠牲とするこれまでのやり方は長続きしない」と指摘。「できる限り、制限的でない手法で感染リスクをコントロールしながらしっかりと経済を回していく」として19日から導入する接触確認アプリを活用したクラスター(感染者集団)対策の強化や検査体制の拡充に取り組む方針を示した。各地への観光旅行についても、19日からは「人との間隔を取ることに留意しながら出掛けてほしい」とした。

対策本部では、海外との人の往来を部分的、段階的に再開するため、ベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドとの間で入国前のPCR検査証明やアプリによる位置情報の保存などの防疫措置を講じることを条件に協議を開始する方針も決定。安倍首相は会見で、「現在のような鎖国状態を続けることは経済社会に甚大な影響をもたらす」とし、貿易立国日本にとっては致命的だとも述べた。

現在の厳しい経済状況では、財政健全化を「最優先で考えるべきではない」とした上で、危機を乗り越えて経済を成長軌道に戻すことを優先すると強調。事態収束後に「財政健全化もしっかり進めていく」考えを示した。

来年に延期となった東京五輪・パラリンピックに関し、国際オリンピック委員会(IOC)や東京都などが簡素化やコスト縮減の議論を進めていることについては「五輪の原点に戻った大会にしていくこと」であると指摘。自身の任期の中で、「五輪開催の責任を果たしていかないといけない」とも語った。

政府が示した要請緩和の目安では、これまで東京など首都圏と北海道の間の県をまたぐ移動は慎重にするよう呼び掛けていたが、全面的に解禁となる。プロスポーツも無観客であれば開催可能で、プロ野球は19日に約3カ月遅れて開幕する予定。屋内イベントについても定員の50%以内であれば、1000人規模まで開催できる。

接待を伴う飲食店やライブハウスについては、客同士の距離を、できれば2メートル、最低でも1メートル確保するほか、客と従業員の連絡先の把握や体調チェックも求める。

西村康稔経済再生担当相は18日午前の記者会見で、現在の国内感染状況について、都内でバーやクラブなど接待を伴う飲食店関連の感染確認が相次いでいることは、「二次感染を防ぐために積極的にPCR検査を行っている結果で、前向きに考えている」と指摘。感染の早期確認に向け、感染者と濃厚接触した可能性を知らせるスマートフォン向けの接触確認アプリを19日にリリースすることも明らかにしていた。

政府は7月10日をめどに、イベントの上限人数をさらに引き上げるなど、次の段階への移行を想定している。

(安倍首相の記者会見での発言を追加して更新しました)

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