【新潮流】いま面白い、ニッポンの「草の根研究」

2020/6/19
謎の生物「テヅルモヅル」に、ピカッと稲妻を走らせる「カミナリ雲」の秘密、はたまた聞いたこともない「ムラブリ語」の研究まで。
これらはいずれも、インターネットを通じて広く個人から研究資金を募る、クラウドファンディングによって支援を受けているユニークな研究たちだ。
既存の資金調達の枠組みの中では、スタートすらおぼつかず、日の目を見ることはなかったかもしれない、いわば草の根のマネーで成立した研究といえるだろう。
中には一流科学誌に成果を発表し、世界的に注目を集めたトップ研究すらあるから驚く。
2014年、日本で初めて学術系に特化した、クラウドファンディングサービスを始めた企業がある。アカデミスト株式会社だ。
「クラウドファンディングを通して、研究業界を変えたい」
そう語る柴藤亮介CEOに、すでに支援が成立した研究の中から、特にユニークなプロジェクトや研究を紹介してもらいながら、「科学マネー」新時代の夜明けについて、大いに語ってもらった。
紹介するプロジェクトは、それぞれ支援金額の規模は数十万〜100万円台と決して大きくはない。だが、その中身は、「知りたい」を追究するワクワク感にあふれたものばかりだ。
柴藤亮介(しばとう・りょうすけ)アカデミスト株式会社 代表取締役 CEO
首都大学東京大学院理工学研究科物理学専攻博士後期課程単位取得退学。専門は原子核理論、量子多体物理。2013年4月に中高生向けの教育事業を展開する株式会社エデュケーショナル・デザインを設立(2015年にアカデミスト株式会社へと社名変更)。2014年4月、研究費獲得のための学術系クラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」を開設。

謎の生物「テヅルモヅル」

テヅルモヅルという生き物をご存じだろうか。
一見、サンゴか海藻にも見えるが、深海で複雑に枝分かれをした腕を広げ、プランクトンを食べて生きている動物だ。
しかし、研究があまり進んでおらず、種の分類すら不明なものが多い。