ステロイド薬でコロナ重篤患者の致死率3分の1低下、英治験
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これは期待し過ぎるのは禁物です。
全ての感染症は重症化すると敗血症という病態になります。サイトカインストームというのは、敗血症の病態の一部を捉えた言い方です。当然、原因となる菌なりウイルスを殺す薬を投与した上で、炎症を抑えるステロイドにて治療効果が良くなるだろうとかなり前から言われてきました。結果、数十のランダム化比較試験が行われ、コンセンサスとしては効果なし、ということになっています。よって、数ある感染症の中でコロナだけに効くとは考えづらい訳です。
大規模ランダム化比較試験で効くという結果になったとしても、完璧な研究はなく、その解釈が重要です。しかもまだpreprintの段階。正式に論文発表されたら読んでみようと思います。
ちなみに炎症性サイトカインにも色々あり、たくさん薬が検討されています。ステロイドは漠然と炎症を抑えますが、よりターゲットを絞った抗炎症薬が期待されています。
注目のコメント
プレスリリースが行われたRECOVERY試験で用いられたデキサメサゾンは、日本のどこの病院でも用いられているステロイドと呼ばれる種の薬剤です。
例えば喘息の悪化のような場面で、炎症を抑えるのに用いられる強力な抗炎症薬になります。現在米国で積極的に用いられているトシリズマブなどと異なり、安価でどこの国、病院にもあり、医師なら誰もが使ったことがあるような薬という強みがあります。
今回報告された試験では、デキサメサゾンを投与した患者と投与していない患者を比較して、人工呼吸器に繋がった患者では8人に投与して1人の命を助けるという割合で、酸素投与のみの患者では25人に投与して1人の命を救えるという割合で有効であったことが報告されました。
記事で報告されている「1/3低下」というのは、誤解を招きやすく少し注意が必要な数字です。例えば、10000人中3人を2人にしても「1/3低下」となりますが、実際には、10000人もの患者に投与して1人にしか貢献できていない、ということになりえるからです。
上記のように、何人に投与してどのぐらいの方を助けたかという結果と合わせて解釈しなければいけません。しかし、今回の報告はそれを差し引いても大きな結果です。
ただし、この試験ではランダム化は行われているものの偽薬を使っておらず、どの患者がステロイドを使用されたかが医師や看護師に分かる設計のため、デキサメサゾンの患者群で他のケアが有利になるようなバイアスが働きやすいという点に注意が必要です。
いずれにせよ、この結果は、重症COVIDでは炎症を抑えることも重要だとする説をまた一つ支持するものであり、このような研究が今後も積み重なり、さらに強固なエビデンスが構築されていくものと思います。ステロイド薬「デキサメタゾン」が重症のコロナ感染症に効果があったとの報道です。デキサメタゾンは安価で既に幅広く利用されていることから低いコストでの救命が可能になる最初の薬としての可能性に注目が集まっています。論文としては未発表で実際のデータを含めた詳細は一早い公開に向けて動いているとのこと。本報道はオクスフォード大学と無作為化臨床試「RECOVERY」プロジェクトの共同プレスリリースに基づくものであることを念頭に置いて頂ければと思います。(RECOVERY: Randomised Evaluation of COVid-19 thERapY)
記事にあるように、人工呼吸器がなければ呼吸できなかった患者らの致死率は、同薬の投与により35%低下。また酸素吸入を受けていた患者では、致死率は20%低下したとのことです(※致死率は28日間でのデータです)。なお以下の2点にご注意ください①呼吸補助の必要がない患者に対する効果は本試験では確認されていない。②病院内の入院患者での実施のみ。デキサメタゾンは抗炎症剤の一種であり、COVID-19重症患者に生じる過剰な炎症を抑制したことが効果につながったと仮説がたてられます。
本臨床試験では、175以上のNHS病院内での実施で、全体としては11500人以上の患者数のある大規模臨床試験です。4321人の通常治療の群と各種薬投与群との間で比較した試験が行われています。2104人の患者が1日6mg・10日間のデキサメタゾン投薬を受けました。本試験ではこれだけで無く、以下の薬に関してもグループ別にデータが取られました。論文にまとめるのも大仕事かと思いますが、世界中が固唾を飲んで公開を心待ちにしています。
・ロピナビル/リトナビル(HIVの治療・予防薬)
・ヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)
・トシリズマブ (総称名アクテムラ・抗炎症 モノクローナル抗体医薬)
・回復後患者からの血漿 (新型コロナウイルスに結合する抗体が含まれる)
プレスリリース
https://www.recoverytrial.net/files/recovery_dexamethasone_statement_160620_v2final.pdf