【解説】アフターコロナに起こりやすい「倒産の傾向」

2020/6/18
新型コロナウイルスは経済全体だけではなく、店じまいして倒産を決意した企業の手続きさえも、停滞させてしまった。
2020年5月の全国企業倒産件数は、前年同月(648件)比で55.6%減。前月(758件)比で62.0%減の288件という倒産集計の歴史上記録的な少なさとなった。
景気が悪化しているのに、倒産件数が減少していると聞くと、不思議に思うかもしれない。
原因は感染拡大予防のために裁判所や弁護士事務所の業務が大幅に縮小され、倒産手続きの案件が減少したことだ。
そのため、裁判所や弁護士事務所が日常に戻るにつれて、手続きが遅れている倒産が表面化してくるだろう。
今後の企業の倒産動向を、占っていこう。

コロナで、倒産手続きが停滞

まず、288件という数字がどれほど少ないかを、帝国データバンクの倒産集計のデータから検証してみたい。
帝国データバンクが全国企業倒産集計の発表をスタートさせたのは、前回の東京五輪が開催された1964年の6月。以後、2020年5月まで56年間(672カ月)にわたり全国の法人および個人経営者を対象とした倒産の調査・集計・発表を行ってきた。
集計対象については、1999年までは法的整理および任意整理(銀行取引停止や内整理)を対象としていたが、2000年以降は法的整理のみに変更した。
また、時代背景なども異なるため、99年以前のデータと2000年以降のデータの単純比較はできない。
ただしそれでも、288件は2000年以降で最少、1964年以降では2番目に少ない件数となった。
※法的整理とは破産、民事再生法、会社更生法、特別清算の倒産4法を指す(2000年に和議に代わり民事再生法が施行された経緯がある)
国内の中小企業の動向については、経営者の高齢化に伴う後継者問題や人手不足という課題が根底にあるなかで、東京五輪の反動減や消費増税、暖冬などの影響が倒産件数に影響を及ぼすのではないかと懸念されてきた。
実際、全国の企業倒産件数は3月(744件、前年同月比14.3%増)、4月(758件、同16.4%増)と推移。4月まで8カ月連続で前年同月比増加が続き、件数増加の局面に入ったことは明らかだった。
そうしたなか、突如5月に288件と倒産件数が激減した。