私も小池百合子氏の卒業記録を目にした。繰り返される学歴問題に「結論」が出ないわけ

    小池百合子氏がカイロ大学を卒業していないのではないか、という疑惑が週刊誌などを中心に取り沙汰された。一方で駐日エジプト大使館は「間違いなく卒業した」というカイロ大の声明を公開した。何が起きているのか。なぜ、同じ話が繰り返されるのか。

    再選を目指し立候補を表明した東京都知事の小池百合子氏が、これまで最終学歴として公表してきたエジプトの名門・国立カイロ大学を、実際には卒業していないのではないかという複数の記事が週刊文春などに掲載され、石井妙子氏による評伝「女帝 小池百合子」も出版され、話題となった。

    そこに駐日エジプト大使館が6月9日、「小池氏がカイロ大を卒業したことを証明する」という、カイロ大学長名の声明を公表した。

    カイロ大学当局が小池氏の卒業を認めるのは、これが初めてではない。

    というのも、これまでも選挙が近づくたびに何度も同じ話が持ち上がり、新聞社や通信社、NHKなどカイロに特派員を置く報道各社の多くは、小池氏の卒業をカイロ大に確認したり、それを証明する書類を入手したりしているからだ。

    特派員としてカイロに勤務した経験がある私も、小池氏の卒業を証明する書類を目にしたことがある。

    こうした背景もあり、新聞やテレビの報道番組がこの話を取り上げる事はほとんどなかった。大学側が卒業を認める以上、それを覆すのは難しいからだ。

    それなのに「疑惑」はたびたび持ち上がってきた。なぜ、すっきりと解決しないのか。

    繰り返し浮上する「疑惑」

    2005年夏、私は新聞社の特派員としてカイロに勤務していた。この年の8月8日、当時の小泉純一郎首相が郵政民営化法案への賛否を巡り衆議院を解散。「郵政選挙」が始まった。もともと兵庫県が地盤だった小池氏は、民営化反対派への「刺客」として東京10区に鞍替え立候補した。

    この時、勤務先の東京本社から「小池氏がカイロ大学を卒業していないという噂がある。カイロで裏を取れないか(確認できないか)」という問い合わせの電話があった。

    報道機関は、候補者が公表する経歴の裏をできる限り取る。候補者が虚偽の経歴を公表すれば公職選挙法違反となる可能性があるし、そもそも読者(有権者)に事実でない情報を提供するわけにはいかないからだ。

    どうやって大学の関係者を探して確認しようかと考えつつ、隣室にいる上司のカイロ支局長のところに行き、「こんな電話がありました」と告げた。

    すると上司は、しばらく机の引き出しをごそごそと探った。「実はね、以前の選挙の時にも本社から同じような問い合わせがあって、調べたんだよ」

    自分で調べようと思っていたので、すでに記録があると知り、拍子抜けした。「選挙のたびに同じ話が来るね」。そう言って、紙袋に入れて保管していた小池氏の卒業記録を取り出し、見せてくれた。

    15年前のことなので、残念ながらどんな体裁の書類だったのかは、はっきりと覚えていない。ただ、アラビア語で「ユリコ・コイケ」という名前や「卒業を証明する」といったような文言があったと思う。

    上司はエジプト留学経験者で、アラビア語が堪能だ。カイロ大にも顔が広く、親しい教授もいた。支局のエジプト人スタッフにも、出入りする地元ジャーナリストにも、カイロ大出身者がいた。おそらく、こうした人脈から手を回して入手したのだろう。

    選挙の候補者による学歴詐称は通常、候補者が卒業したと主張した大学が、メディアの問い合わせに「そのような記録はない」と回答することで発覚する。

    小池氏の場合、卒業を証明する記録は存在した。候補者の経歴確認の作業としては、普通はそれで十分だ。

    「では、この書類は僕が本社に送っておくよ」と、上司はファックスで送信し、本社側と電話でやりとりした。

    小池氏が第一次安倍政権の防衛相として入閣した2007年7月、今度は東京本社の別の記者から私に、メールで問い合わせが来た。

    「小池氏がカイロ大を卒業していないという噂が...」

    「2005年に書類を本社に送っているので、そちらにファイルが残っているはずですよ」と返信した。話はそれで終わった。

    エジプト大使館が大学の声明をアップ

    東京都知事選の告示が近づく中、小池氏の学歴問題はまたもやクローズアップされた。週刊誌の記事だけでなく、「疑惑」を記した本も出版された。

    駐日エジプト大使館は6月9日、Facebook上で、「小池氏の卒業を証明する」という内容の、カイロ大学の公式声明を公表した。

    大学側の声明原文(英文)に駐日大使館が添えた「非公式翻訳文」の全文は、以下の通りだ。

    カイロ大学は、1952年生まれのコイケユリコ氏が、1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する。卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された。

    遺憾なことに、日本のジャーナリストが幾度もカイロ大学の証書の信憑性に疑義を呈している。 これはカイロ大学及びカイロ大学卒業生への名誉毀損であり、看過することができない。

    本声明は、一連の言動に対する警告であり、我々はかかる言動を精査し、エジプトの法令に則り、適切な対応策を講じることを検討している。

    モハメドオスマンエルコシト教授・カイロ大学学長

    訳文の上部には、エジプトの象徴・鷲とアラビア語で「エジプト・アラブ共和国」と書かれた国章がある。「非公式翻訳文」ではあるが、政府発行の文書であることがわかる。エジプト政府も小池氏のカイロ大卒業を暗黙のうちに認めている、ということだ。

    声明原文には右上にアラビア語で「カイロ大学学長室 発行番号376 発行日2020/6/8」とスタンプされており、こちらも学長室が正式に発行した文書である事が分かる。

    それでは、これで問題は幕引きになるのかといえば、そうとは言えないかもしれない。理由はいくつかある。

    声明にある「正式な手続きで卒業」の意味

    カイロ大学声明の内容のまとめると、要点は以下の通りだ。

    1. 小池氏の卒業を証明する。
    2. 卒業証書発行は正式な手続きで行われた。
    3. 日本の報道陣は繰り返し、証書の信憑性を疑ってきた。それは大学と小池氏への名誉毀損である。
    4. これは警告だ。従わなければエジプトの法令に沿い対応策を練る。

    小池氏の卒業を証明するだけでなく、その手続きの正当性や「警告」にまで、わざわざ触れている。

    2005年に卒業記録を見た時、私は当時の上司に「それ、本物なのですか?」と尋ねた。

    上司はこう言った。「書類の出所は間違いない。だが、どういう経緯でこれが発行されたのかまでは、分からない」

    私たちが当時、そんな会話をした理由は、必ずしも「小池氏が不正な手段で卒業した」あるいは「書類は偽造」と考えていたということを意味しない。

    しかし、公文書や公共機関の下す決定の意味が、日本とは異なる部分がある、と、それまでのエジプトでの取材経験から感じていたことが、その背景にある。

    教育分野で相次ぐ汚職の噂

    世界の汚職問題を専門とする国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が発表する腐敗認識指数で、エジプトは180ヵ国中106位。例年、低位に沈んでいる。

    TIは、その理由の一つとして、エジプト軍が政治権限から民生分野の製造業まで幅広い権限を独占している背景がある、と指摘している。

    エジプトでは、「自由将校団」によるクーデターで政権を握ったナセル大統領以来、空軍出身のムバラク大統領が退陣した2011年の「アラブの春」後の一時期を除いて、国の主役はエジプト軍であり、軍人が大統領となる構図が続く。

    カイロ大学は1908年開学の中東アフリカで最大規模の総合国立大学だ。

    学生数は23万人にのぼる。エジプトでは最も権威のある大学で、アラブ圏などから多くの留学生を集め、文化戦略面からも国家の威信をかけた存在といっていい。

    しかし、エジプトの各国立大学は政府、特に軍と治安当局の管理下にあり、日本や欧米と同じような意味での「大学の自治」は存在しない。

    カイロ大学のゲートは治安部隊員や委託の警備員らが管理し、自由に出入りすることはできない。報道関係者が教授にインタビュー取材する際は、入り口で警備員にその旨を伝え、確認を取った上でないと入ることはできない。

    大学の動きは全て、当局の監視下にある、ということだ。日本の国立大ならば、「自治の侵害ではないか」と大きな論争になるだろう。

    そしてエジプトでは、軍や政府など有力者とのコネがあれば、不可能も可能になると広く信じられている。

    謎の「0点」事件

    2015年、エジプト南部ミニヤで、それまでほとんどの試験でトップクラスの成績を収めてきた高校生マリヤム・マラクさんが、大学入学に必要な全国統一試験を受験した。英BBCなどによると、しかし、なぜか7科目全てで「0点」というスコアが返ってきた。

    受験生にとっては死活問題だ。諦めきれないマリヤムさんは弁護士と相談し、事態を公表した。

    弁護士は「有力者の関係者とマリヤムさんのスコアをすり替えられたかもしれない」と語り、マリヤムさんが汚職による不正の犠牲となった可能性を指摘した。

    大小の腐敗の存在を肌で知るエジプトの世論は沸騰した。Facebookには支援のグループが立ち上がった。

    「0点」の答案の筆跡は別人の疑いが強まったため、マリヤムさん側は検察当局に告発して筆跡鑑定を求めた。しかし、検察は「筆跡は本人の物」とした。教育当局も「0点」という結論を変えなかった。

    地元報道によると、マリヤムさんは翌年、圧力を避けるため数百キロ離れた別の県に出向いて再受験。94%という本来取れるはずだった高得点をあげた。

    そして、「0点」事件の真相は分かっていない。

    英字紙デイリー・ニュース・エジプトは2013年、複数の国立大学で教授が「面倒見」を頼まれた学生の得点を操作したり、自分の著書を教科書として高値で買わせたりしている、といった学生の証言を紹介する記事を掲載した。

    この記事では同時に、エジプト北部の名門・国立アレクサンドリア大の学生の7割が、教授や助手が汚職で利益を得ていると信じている、という論文を紹介している。

    教職員の給与は高いとは言えず、多くは生活のため「副業」をしている。20年近く前の話だが、私もカイロ留学時代、留学先での正規の授業のほか、ある大学のアラビア語科教授に私費を払い、教授の自宅で「個人授業」を受けていた。

    公立の小中学校でも、教員が有料で子どもたちの「家庭教師」をする。私も「家庭教師をさせなければ、子どもの評価を下げる」と教員に脅された複数の保護者を知っている。それが、当たり前の社会なのだ。

    また、エジプトは、もともと記録の管理などが日本のように厳密に行われているとは言いがたい社会でもある。

    カイロ大で博士号を取得した元同志社大教授の中田考氏は、Twitterで自らの卒業証明書を公開している。写真はホッチキスで留めただけ。間違いを修正液で消したりしている。

    カイロ大学の卒業証明書の写真をあげたのは実物を知らないと偽造かどうかの判断もできないから。見ての通り写真はホッチキスで一ヶ所とめただけだし、タイプした文字を白い修正液で消したところ、ボールペンで消した跡もある。本物でもこんなもの。

    中田氏はさらに、学位記をもらいに行っても、窓口で「ボクラ(明日こい)」と言われ続け、30年近くたった今も手に入らないままだ、とツイートしている。

    私もカイロ大ではないがエジプトにアラビア語留学をした時の最終成績を、いまだに知らない。

    「これ以上疑うことを許さない」という警告

    カイロ大を日本人留学生が4年で卒業することは、容易ではない。知人に、カイロ大法学部の卒業に四苦八苦する日本人留学生がいた。私は知り合った頃は、在籍8年目だった。

    前述の通りのエジプトの社会風土のなかで、1970年代にカイロ大学で、当時珍しかった日本人留学生の小池氏を巡り、「何か」が起きたかもしれないと推測することは、不可能ではない。

    文春の記事は、小池氏の父親が、エジプト政府の有力者とコネがあった、と伝えている。一連の記事や石井妙子氏の著書「女帝 小池百合子」では、「何か」をうかがわせる周辺のさまざまな証言を集めている。

    だが大学側が卒業を認める以上、第三者がそれを疑い、「卒業していない」と指摘するのであれば、その卒業認定が不正に行われた、あるいは大学と本人がグルになって嘘をついたことを証明する必要があるだろう。

    しかし、実際に不正があった、あるいはそれに関わったというエジプト当局や大学側の具体的な証言や、書類などの証拠を提示できている記事は、記憶にない。現状では、大学側の出した声明文を覆せる状況とは言えない。

    カイロ大の声明は、こうした各種の状況を踏まえたうえで、メディアに対し「我々には今も昔も不正はない。これ以上は疑うことを許さない」と警告している。

    エジプトに報道の自由は乏しい。カイロ特派員時代に私の同僚だったエジプト人記者バヘル・ムハンマド氏は2013年、当時私がいた新聞社を離れてエジプト政府に批判的なカタールの放送局アルジャジーラに転職した。間もなく彼は、2人の同僚とともに「虚偽の報道」といった容疑で投獄された

    国際人権団体アムネスティ・インターナショナルや各国のメディアは、これを言論弾圧と批判した。彼は3年の収監後に保釈され、カタールで事実上の亡命生活を送っている。彼もカイロ大OBだ。意図的な「虚偽の報道」を企てるような人物ではないことは、何年も一緒に仕事をした私が断言する。

    こうした状況下で小池氏の件を今後、日本の報道関係者が現地で深掘り取材をしようとしても、陰に陽に関係者に圧力がかかり困難を伴う可能性も否定できない。

    なぜ大使館が大学の声明を出したのか

    カイロ大学の声明をなぜ、エジプト大使館が公表したのか。

    エジプトにとって、小池氏はエジプト社会を肌身で知る貴重な政治家だ。そしてエジプトは、日本の援助を頼りにしている。

    ツタンカーメンの秘宝などを収蔵してギザのピラミッド周辺に近く完成する「大エジプト博物館」や、カイロ市内で進む地下鉄建設プロジェクト。さらに北部アレクサンドリア近郊に日本の全面協力で開学した「エジプト日本科学技術大学」など、日本の政府開発援助(ODA)によるプロジェクトは数多い。

    2011−15年まで駐日大使を務めたヒシャム・エルゼメイティー氏の妻は、政府で国際協力を取り仕切るファイザ・アブルナガ国際協力相(当時)だった。

    エジプトをよく知る小池氏の名誉を守り政治力を維持してもらうことは、エジプトの国益にもつながる。声明の公表に、そうした狙いがあったのではないかという推測は成り立つ。

    政界に米国留学経験者は多い。例えば、米国の大学を卒業していない可能性を取り沙汰される人物がいたとしよう。その人物が選挙に立候補を表明する直前に、駐日米国大使館が「この人物の卒業を証明する」という大学の声明を公表するだろうか。

    エジプト大使館に6月10日、声明を公表した理由と経緯の取材を申し入れたが、15日までに回答はなかった。

    問われるべきは政治家としての小池氏の姿勢

    カイロ大が声明を出したことで、小池氏は「これまで色々言われていたことがクリアになる、一つの証になる」と語った。ただし卒業証明書等の公表は行っていない(記事末尾にアップデートあり)。

    小池氏の学歴を巡る過去の報道をデータベースで調べると、カイロ大の卒業そのものを疑う記事は、朝日・毎日・読売・産経・時事・共同・NHK各社の過去記事からは見当たらなかった。いずれも当時の私たちのように大学側に確認を取ったりして、「詐称というのは無理」と判断したのだろう。

    一方で2018年6月、「カイロ大を首席で卒業した」と過去の著書で記していたことなどを月刊文藝春秋の記事が疑問を呈したことに、小池氏が「卒業は事実」としたうえで、「先生から『非常にいい成績だった』と言われ、うれしくてそれ(首席)を(自著に)書いたと思う」と釈明し、首席だったかどうかは明言しなかったという記事を、朝日新聞産経新聞など各紙が報じている。

    朝日新聞によると、小池氏の1982年発行の自著「振り袖、ピラミッドを登る」の著者プロフィールには、76年にカイロ大を「首席で卒業」と記載されていたという。

    小池氏が1983年に出したアラビア語(現代エジプト口語)の解説書「3日でおぼえるアラビア語」の著者紹介欄でも、「カイロ大学文学部社会学科を日本人2人目、女性としては初めて、しかも首席で卒業」となっていた。

    政界進出前のずっと前のことで公職選挙法上の問題はないとはいえ、かつて著書で自らの経歴を「首席卒業」と飾ろうとしたこと自体は、否定できないようだ。

    私は1998年に再版された「3日でおぼえるアラビア語」を持っていた。98年版では「カイロ大卒。アラビア語通訳などを経て現在、衆院議員」で「首席」の表現はなかった。なお、日本語で書かれたエジプト口語に関する本は少ないので、それなりに役に立ったことは記しておく。さすがに3日で覚えることができなかったが...。

    今回の件でも、カイロ大学がせっかく卒業を証明する声明を出したわけだから、小池氏もあわせて証書を公表すれば沈静化できるはずだ。

    小池氏は12日に都庁で開いた立候補会見で、出席した記者の1人から、改めて卒業証書の公表を求められた。しかし以下のように語り、応じなかった。

    「卒業云々については、カイロ大学は認めていると申し上げてきた。原本をかつて公表しているので、今日それを載せているメディアがございました」

    「そういったことで、私はすでに原本も示し、カイロ大学も正式にお認めいただいているものと考えております。それによって、すでに公表もしていると言うことでございますので、そのような必要な条件、要件を検討しながら進めていきたいと思っております」

    6月12日発売の週刊ポストが、1993年の小池氏の連載で掲載した証書を再掲載するかたちで、小池氏の卒業証書の写真を掲載した。

    近年は立候補会見時に卒業証明書や学位記を報道陣に公開する候補者が多い。「個人情報」として報道機関からの卒業確認に回答しない大学が増えていることもあり、一度に書類を示した方が、候補者本人にとっても無用な「疑惑」を招かず、一つ一つの取材に応じる手間が省けるメリットがあるからだ。

    小池氏はなぜ、会見の場に集まる報道各社を通じて有権者に示そうとせず、特定のメディアに掲載させたのか。さらに小池氏は、この質問をした記者からの再質問を受けなかった。

    小池氏はニュースキャスター出身で、メディアの特性を良く知っているはずだ。自らメディア戦略を立てたうえで、こう振る舞っていると考えても、不自然ではない。

    さらに、小池氏が4年前の立候補時に示した、待機児童・介護離職・残業・都道電柱・満員電車・多摩格差・ペット殺処分の7つで「ゼロを目指す」という公約は、どこまで達成できたのか。

    また、小池氏は2017年の衆議院選挙で、希望の党失速の原因となった「排除します」発言を引き出した特定の記者を「排除」しているのか、彼からの質問に答えることはほとんどない。

    こうした小池氏の政治家としての姿勢を様々な角度から論評する自由は、日本では保障されている。そして、寄せられた疑問にきちんと説明することは、公職にある者の責任でもある。

    「政治家・小池百合子」を論じる材料の一つとして、これからもこの件への小池氏の対応は取り沙汰され続けるかもしれない、と私は感じている。

    アップデート

    小池氏は、BuzzFeed Newsがこの記事を公開したのちの6月15日夕、再選に向けた公約を表明する会見を開き、「証書はこれまでも公表してきた、とお答えしてきた。政策論争より先にこの話ばかりが先に出るにはふさわしくないと考えている」と語り、卒業証書をスタッフ経由で公開した。

    週刊ポストが公開したものと、同一内容のものとみられる。