💡大きな変化を5つに分けてさっくり知る
新型コロナウイルスの世界的大流行により、私たちは貿易システムの弱点にリアルタイムで向き合い、次の大きな混乱に備えるために改善策を講じざるをえなくなった。Quartzが特集した世界貿易の課題を要約して紹介する。
🤔なぜ今、世界貿易が危機に
①これまで、グローバリゼーションによって貿易システムは異常事態の発生に翻弄されるようになった。
②しかも今、新型コロナウイルスのパンデミックによって、世界はリアルタイムで貿易システムの脆さに向き合わざるをえなくなっている。
③世界中の多くの消費者が初めて、物流やサプライチェーンの問題が自分たちの日常生活に与える影響を目にしている。
④このパンデミック渦にも健闘できている企業は、強いサプライチェーンを持っている。
⑤うまくいっていない企業にとっても、今回の危機は自らのビジネスを省みるチャンスと捉えることで、次の危機を生き延びることができるかもしれない。
5つのポイントをさらに詳しくみていこう。
1️⃣グローバリゼーションによって異常事態に翻弄される貿易システム
直観的にはそうは思えないかもしれない。グローバリゼーションはより多くの製品をより多くの場所で生産することを可能にした。だから企業にはより多くの選択肢が与えられると普通は思う。ところが実際には、サプライチェーンが交差し、中心となる部分は以前よりも一本化され、特殊化が進んだ。
複雑で、さまざまな要素が織り込まれたサプライチェーンのネットワークが生み出す製品の一例として、ワクチンがあげられる。Covid-19ワクチンの世界的な需要を満たすためには、研究者が必要な材料を自由に入手できる状態にしなければならない。そのためには、さまざまなストレス要因に負けないサプライチェーンが必要になる。
2️⃣パンデミックに際して、貿易システムの脆さに直面することに
今年初め、新型コロナウイルス感染症の発生によって中国のほぼ全土が閉鎖されたとき、ファッションのサプライチェーンは停止した。中国が世界最大の衣料品生産国であり、2018年に輸出されたすべての衣料品の約32%を生産したからというだけではない。中国はまた、他の国の工場が衣服を製造するにあたって必要とする原材料のほとんどを生産している。
この危機は多くの変化を促進するだろう。そこには、ファッションから医薬品製造までさまざまな産業が、中国からの生産を他国に移転する動きも含まれる。ある調査では、対象となった経営者の約46%が、顧客と比較的近い距離で生産を行う「ニアショアリング」が来年に増加すると予想すると答えている。アジアから長時間かけて輸送しなくてすむからだ。
3️⃣サプライチェーンが日常に影響することを感じ始めた消費者
昨年、米国は467億キロ以上の牛肉、豚肉、鶏肉を生産した。米国最大の食肉加工工場の労働者が新型コロナウイルス感染症にかかったため、多くの生産ラインが停止した。2020年およびそれ以降、食肉生産業者の未来がどうなるか、もはやわからない。
米国の食肉産業がウイルスに苦しんでいる主な理由は、アメリカの食肉加工システムのあり方と関係がある。現在のシステムの長所は、非常に効率がいいということだ。ただし、ひとつの工場で、予期せず生産ラインを停止せざるをえない事態が発生すると、それがシステム全体に並外れた影響を及しかねないという欠点がある。その結果として起きる商品の不足は、消費者が肌で感じられるほど大きいものになるだろう。
4️⃣この状態下でも強いサプライチェーンを持っている企業が健闘している
ウイルス禍で世界が景気後退に陥るなか、スイスに本拠を置く食品会社ネスレの業績は堅調だ。もちろんネスレが、コーヒーやペットフード、保存に適した調理済み食品など、世界がロックダウンされるなかで特に需要の高い製品を大量に製造していることも役に立った。だが、堅固なサプライチェーンのおかげで、世界中の消費者に製品を提供することもできていた。
5️⃣この危機をチャンスに捉え、自らのビジネスを改善する
手指の消毒剤を生産するうえで不可欠なのは、製造業者が消毒剤の主要成分であるエタノールを十分に入手できるようにすることだ。企業はそのことに気づいている。新型コロナウイルスのワクチンが完成するまでには、どんなに早くてもまだ数ヶ月はかかるため、手指消毒剤の需要は高止まりすると予想される。
だがすでに、企業は製造プロセスのトラブル解決作業に入っており、広範囲にわたる供給と輸送の混乱を解消し、世界的な需要の急増に対処するために緻密な計画を立てている。
元の記事はこちら(英語)。
(執筆:Quartz Staff for Global trade, rerouted、翻訳:栗原紀子、写真:Tryaging/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with KINTO.