【分析】中国の敵対心を「歓迎」するトランプ大統領

2020/6/13
日々揺れ動く米中関係。コロナ後の世界では互いに攻勢を強めており、「新冷戦」の様相を呈している。今後、米中関係はどのような方向性を示すのか。次なる主戦場となるのはどこか。米政府機関ポストでの勤務経験を持つ、ジャパン・ソサエティー(NY)理事長、ジョシュア・W・ウォーカー氏が解説する。

WHOをスケープゴートに

COVID-19パンデミックは、21世紀において発生した最大の混乱である。世界の地政学的、外交的、経済的、技術的な流れを第二次世界大戦後のように大きく変えることになるだろう。
その中で当面の問題は、アメリカと中国のどちらが、この状況を踏まえて優位に立つことができるかである。
アメリカと中国が本格的な冷戦に突入するかどうかを予測するのはまだ早いが、明らかにその方向に向かっている。
3月中旬にコロナウイルスを「チャイナ・ウイルス」と呼んで物議を醸したトランプ大統領は、いま再び「中国からの疫病」という言葉を口にしている。
4月には、「中国の習近平国家主席とはもう話したくない」と述べ、中国のウイルス隠ぺい工作による被害は、貿易によってもたらされる利益よりも100倍も悪いという見方を示した。
3月19日、新型コロナウイルスの流行を受けて記者会見をする米トランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)
また、世界保健機関(WHO)への攻撃姿勢も強めている。
5月19日にツイッターに投稿された、WHOの事務局長に宛てた4ページにわたる書簡の中で、トランプ大統領は「2020年4月14日、私は世界保健機関への米国の貢献を停止した」と表明。
その上で、「私の政権による調査の結果、世界保健機関が中国からの独立性について驚くほど欠如していることを特定した」「パンデミックの対応において、WHOによって繰り返されている失策は、世界に多大な犠牲をもたらしている」と批判した。
5月29日には、「アメリカはWHOとの関係を永久に停止する」と発表した。
世界保健機関をパンデミックの発生当初から中国に支配されたスケープゴートとして非難することで、トランプ氏は自身の国内での失敗の責任を転嫁しようとしているのである。

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