経済産業省は3月30日、新たな国際資源戦略を公表した。中東情勢の不安定化など地政学リスク高まりに加え、アジアでのエネルギー需要急増などを受け、セキュリティー確保に向けた施策を明記した。日本企業のLNG(液化天然ガス)取扱量を2030年度に計1億トンにする目標を設定したほか、レアメタル備蓄制度を弾力的に見直す方針を打ち出した。

 LNGはこれまで、日本への輸入量のみを目標にしてきたが、新戦略では海外市場間での「外・外取引」に関わる日本企業への支援を強める方向性を明示。30年度の取扱量を計1億トンにする数値目標を盛り込んだ。

 レアメタルの備蓄制度も見直す。現状では34鉱種のうち、産出国の政情や依存度、需要などを考慮して鉱種を選定した上で、短期的な供給途絶への備えとして、国内基準消費量の60日分を目標に置いている。これを、地政学リスクの高い鉱種は180日分に上限を引き上げる。逆に、多角化されているものは引き下げるなど、備蓄にメリハリをつける。

 一方、パリ協定を踏まえた気候変動問題への対応の加速化も打ち出した。「環境と成長の好循環」を実現させる狙いから、二酸化炭素(CO2)を資源として再利用するカーボンリサイクルの取り組みを強化。研究開発や国際協力を推し進める。

 政府は、今国会に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)法の改正案を提出。非常時に発電用燃料の調達が困難な場合、電気事業法に基づく要請を受けて、JOGMEC自身が調達することを可能にする。また、海外にあるLNG積み替え・貯蔵基地など中下流域への出資・債務保証を業務の対象に加えることなどを盛り込んだ。新・国際資源戦略と合わせて、エネルギー供給の3E+S」の徹底を図る考えだ。

電気新聞2020年3月31日