[香港 9日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染拡大に関連した売りで割安感が出ていることから、プライベートエクイティ(PE)は、中国の上場企業を株式非公開化を通じて買収することに意欲的になっている。ただ、銀行は融資に慎重で、買収資金の調達が最大の課題となっている。

米中関係の緊迫化に伴い、米市場上場の一部中国企業が、上海や深セン、香港などへの上場変更を検討していることも、PEによる株式非公開化を通じた買収意欲につながっている。

今年4月、PEのオーシャン・リンクは、ナスダックに上場する中国の58ドット・コム<WUBA.N>に対して83億ドルでの買収を提案した。1株当たり17.8%のプレミアムを上乗せした水準となり、株式非公開化を通じた中国企業の買収案件としては年初から最大。

また、今後より大きな案件が浮上する可能性がある。ロイターは5月に関係筋の話として、中国の大手検索サイト百度(バイドゥ)<BIDU.O>がナスダック市場からの上場廃止を検討していると報じた。企業価値を引き上げるため、中国に近い市場に上場先を移すことを検討しているという。

バイドゥの株価は年初から9.5%下落。一方、米国に上場する中国企業の株価指数であるナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ・インデックス<.HXC>は年初から12%上昇している。

アジアに拠点を置くPEのDCPキャピタルのパートナーであるDavid Liu氏は「株式非公開化を通じた買収に最適な時期は、大きな危機の後だ」と指摘。「現在の環境では、より魅力的なバリュエーションで上場企業と非公開の交渉で取引を行うことが通常よりも容易になっている」と説明した。

<資金調達が最大のハードル>

ただ、どのように資金を調達するかが最大の課題だ。世界的な景気低迷で金融機関は融資に特に慎重になっているという。

UBSのアジア地域企業の合併・買収(M&A)部門代表のサムソン・ロー氏は、現在の環境では「資金調達は一筋縄ではいかない」と述べ、「銀行は通常、長期的な売り上げが見込め、貸出歴のある企業に融資を行う傾向がある」と説明した。

買収する側が提示する額よりも低く企業価値を見積り、中には、買収額よりも20─30%低く見積もる金融機関もあるという。

一方、中国の金融機関は、バランスシートの規模が大きく、国内企業との結びつきが強いため、中国企業への融資により積極的だ。

58ドット・コムに買収提案を行ったウォーバーグ・ピンカス[WP.UL]やジェネラル・アトランティックなどを含むコンソーシアムは、30億ドルの資金調達に向け中国の複数銀行と協議している。3人の関係者が明らかにした。

ウォーバーグ・ピンカス、ジェネラル・アトランティックはコメントに応じていない。58ドット・コムとオーシャン・リンクからもコメントの回答は得ていない。

また、別の関係者によると、香港と米国の市場に上場する中国企業の株主の中には、株式非公開化に向けた資金調達で中国地方政府に支援を求める動きもあるという。