Saqib Iqbal Ahmed Ira Iosebashvili

[2日 ロイター] - 現在の米国株上昇は当初、弱気相場からの自律反発という形で始まったが、いつの間にか史上屈指の劇的な高騰へと姿を変えている。投資家は、過去の反発局面や、オプション市場やチャートの動きなどに目を向け、さらにどのぐらい株高が続くのかを探ろうと必死だ。

S&P総合500種<.SPX>は3月終盤から6月1日の引け段階までに37%値上がりし、ナスダック総合<.IXIC>も過去最高値に接近。いずれも新型コロナウイルス感染のパンデミック(大流行)がもたらす幅広い経済の混乱や不確実性を、まるで無視するかのような勢いで上昇してきた。

こうした事態に投資家は困惑を隠せない。大方の予想を超えて進んできた相場の盛り返しにあえて逆らうポジションを構築する向きはほとんど見当たらないものの、株式市場は米連邦準備理事会(FRB)や米議会が無制限に支援してくれるとの期待を背景に、実態経済と切り離されてしまったのではないかと懸念する声が聞かれる。

例えばS&P総合500種の足元の株価収益率(PER)は21.2倍と2002年以降で最も高い一方、失業率は大恐慌以降の最悪水準にある。ロイター調査によると、5日に発表される5月米雇用統計では、非農業部門雇用の前月比減少幅が745万人と、4月の2050万人に続いて相当な大きさになると予想されている。

米国ではミネソタ州で起きた白人警官による黒人暴行死事件をきっかけとした人種差別や格差に対する抗議デモが全国に広がっているが、株式市場は今のところこれも深刻に受け止めていない。

ドイツ銀行のチーフ国際ストラテジスト、アラン・ラスキン氏は「われわれは従来とは違うゲームに参加しており、適正水準を決めようとする取り組みは困難になっている」と述べた。

歴史を見れば、株式市場と実体経済のかい離は長続きしそうにないことが分かる。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチが90年間近くの相場動向を検証した結果に基づくと、S&P総合500種は景気後退期間に入ってから30%余り下落した後、半年弱経過してようやく底を打つというのが従来のパターンだ。

それが本当なら、S&P総合500種はこの先いずれ、3月23日につけた安値の2191.86を再びうかがい、6月1日終値から28%下落することになる。つまり最近の相場上昇に乗じて買いを膨らませている投資家にとっては、好ましくない事態が訪れかねない。

バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチの分析では、景気後退が長引くほど弱気相場の期間も延びる傾向があり、景気回復の兆しが乏しい中で過去最高値まで10%圏内に入ったS&P総合500種にとって、やはり幸先の悪い材料といえる。

政策担当者が市場を下支えするとの見方がバブルを醸成し、投資家はそれが最善ではないと承知しながらも株式の買いに動いているかもしれない、とバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの株式デリバティブ調査グローバル責任者ベンジャミン・ボーラー氏は話した。

ボーラー氏は「自分たちの取引に確信が持てない市場参加者が多い以上、今までよりもっと荒っぽい調整局面を迎える素地が生まれている」と警戒する。

ソシエテ・ジェネラルが過去150年の弱気相場を調べたところでは、底値からの反発ペースはこれまでの方がずっと緩やかで、S&P総合500種が30%かそれ以上下落した後の3カ月間の平均上昇率は11%だった。反発期間が2年に及ぶと平均上昇率は40%に達するが、なんと3月終盤から足元までの値上がりがこれとほぼ同じなのだ。

ただ未曽有の規模の政策支援が後ろ盾にあることで、過去とは異なる相場の反応があってもおかしくないとの意見も少なくない。ロイターが5月終盤に市場ストラテジストとファンドマネジャー約50人に対して実施した調査では、年末のS&P総合500種は2950と、現在よりわずかに低い水準になるとの予想が示された。

チャート分析でも見通しは比較的明るい。ファイナンシャル・エンハンスメント・グループのポートフォリオマネジャー、アンドリュー・スラッシャー氏は、S&P総合500種はこれまでの上昇で、200日移動平均を突破しただけでなく、構成銘柄の9割強がそれぞれの200日移動平均を上回ったと説明し、大きな下落局面が終わる前に個々の銘柄の動きがこれほど強気な形状になるのは見たことがないと驚いている。

対照的にオプション市場は引き続き慎重姿勢に見える。S&P総合500種のオプションに織り込まれた今後3カ月で10%以上の幅で下落する確率は29%で、10%ないしそれよりも大きく上昇する確率の12%よりも高い。