【永田暁彦】経営には、自分とかけ離れた才能が必要だ

2020/6/10
プロジェクト型スクール「NewsPicks NewSchool」では、ユーグレナ取締役副社長COO・リアルテックファンド代表の永田暁彦氏による「次世代CFO共創」プロジェクトを実施します。(「次世代CFO共創」の詳細はこちら。)

ミドリムシを使った食品・化粧品にとどまらず、近年はバイオ燃料にも挑むユーグレナ。CEOの出雲充氏を影で支える永田暁彦氏が「次世代CFO論」を語ったNewsPicksアカデミアのイベントリポートを全3回でお届けします。(イベント開催:2019年7月24日)
【永田暁彦】次世代CFOに求められる「4つの条件」
「CFOになりたい人」をCFOには選ばない
田中 トークのモデレーターを務めます、インテグリティの田中慎一です。
私はNewsPicksアカデミアでコーポレートファイナンスのゼミを担当したのですが、ゼミ生には、ファイナンスとご自身のスキルをかけ合わせ、CFOをはじめとしたCxO(なんらかの部門のトップという意味の「x」)を目指している方が多く見受けられました。
永田さんは一般にイメージされるCFOを超えた活躍をしていますが、CFOに必要な資質や要素はどういうものだと思いますか。
永田 私が社長だったら、「CFOになりたい人」は選ばないですね。財務の知識や能力より、「誰とやるか」を重視します。
常に自分の哲学をもって、事業を実現したいと思っている人。そのために足りない機能や能力は、自分に足すか、他人を連れてくるか、他人に足させるかして、「全員で実現するんだ」とCEOとともに思える人。そういう人と一緒に仕事がしたいです。
それはファイナンス能力というよりも、前回話したように、経営力だと思っています。
そのうえでファイナンスを担うのであれば最低限の財務知識は必要ですが、ここにいる皆さんでしたら、数カ月あればキャッチアップできるでしょうから、やはり「経営力」のほうを大切にしたいですね。
これからは「プロ経営者」が増える時代になるでしょうが、プロ経営者とアントレプレナーでは、やはり仕事の内容が違います。私は「プロCFO」ではなく、社長の出雲と一緒にアントレプレナーとして、事業を実現したいと思っています。
永田暁彦/株式会社ユーグレナ 取締役副社長
田中 経営者はパッションとロジック、2軸のスキルが必要ですが、今のお話を伺うと、永田さんはロジックよりパッションを重視しているということですか。
永田 前に進むための力は、何でもいいと思います。パッションでなくても「ストックオプションを持っているから」でもいい。要するに、自分が乗っている船を成功させるための思考ができるかということです。
というのも、CxOという役職名を重視し、ある分野、ある機能が自分の責任だと思ったとたん、発揮できる能力が下がってしまうから。
資金調達がミッション、開発がミッション、売り上げを伸ばすのがミッション……と分けている間は、絶対に成功しない。そうではなく、全体を支えることが大切です。
ただ、ほかのCxOと比べてCFOに特に必要とされるのは、責任感です。なぜなら、他人からお金を受け取っているから。これは絶対に返さなくてはいけません。
未来を語ってエクイティファイナンスをしたのなら、それを実現して返す。ここに意識のあるCFOと、調達するところまでが自分の仕事だと思っているCFOでは、明らかに違うはずです。
田中 コミットメントでいうと、ユーグレナはバイオジェット燃料を作ることもあり、結果が出るまでに時間がかかります。
実際に永田さんはユーグレナに参画して長いですが、先ほどの講演の「CFOの5類型」にあった、上場2年前に入って2年後に抜けていく「IPO特化型CFO」は、コミットメントといえるのでしょうか。
田中慎一/株式会社インテグリティ 代表取締役
永田 上場をゴールのように考える経営者もいますが、 それを支えるCFOがいてもいいと思います。
ただ、そういう人が「俺は孫正義(のようなCEO)の右腕になりたい」と言っても笑いごとですね。孫さんの横には、孫正義を作りたいと思っているCFOがいないといけないので。
(孫氏を目指すという意味ではなく)私は、出雲充をそういう男にしたいと思っています。ですからIPO特化型のCFOとは、コミットメントの仕方が違うのです。
CEO出雲氏との関係性
田中 ではユーグレナでは、社長の出雲さんと副社長でCFOの永田さんとでは、どういうふうに役割分担をしているのでしょうか。
永田 今日の時点では、出雲は別の役割を担っているので、少なくとも3ヵ月先までのすべての業務の決裁権は、私が持っています。この商品を作ろう、この研究をしよう、広告費にいくらかけましょう……とすべてです。 しかしこの役割は、時期によって変わります。
では、どうやって役割を設計しているか。私は、事業に必要な業務や領域を、一度すべて書き出します。
研究、開発、製造、企画、管理、販売、広告、顧客対応……。すべてを挙げたうえで細分化し、それぞれ誰が担当して、どの執行役員 が見るかというピラミッドを作ります。
そうすると、自分の部署名や役職名に紐づく仕事ではない「飛び地」が、ときどき現れることがあります。しかしそれを無理に役職に紐づけ直すことはしません。別に、理念を語るのがCTO(最高技術責任者)でもいいじゃないですか、経営者なのですから。
こうして掛け算を起こしながら役割を整理していくと、必ずやらなくてはいけないことを、お互い背中合わせに実行している状態になります。
田中 ここからここまでは俺の範囲、ここから先はお前の範囲、と明確に線引きをしているうちは、CxOとしては話にならないということですね。
永田 経営においてはそうですね。執行においては線引きが必要なので、半年に一度は見直し、線引きし直しています。
田中 なるほど。出雲さんとはどのようにコミュニケーションしているのですか。
永田 デスクは同じ部屋にあって、ハングアウトとスラックで重要度と緊急性を分けて連絡しています。週に1回、15分ほど顔を合わせて会議をします。
田中 同じ部屋でも会議をするんですね。そもそもなんですが、出雲さんのどういうところに惚れてユーグレナに参画したんですか。
永田 考えてもみてください。いつも緑色のネクタイをつけ、ミドリムシに異常なまでの情熱を燃やして「地球環境と貧困を救います!」なんて言える人、他にはいないでしょう?
ミドリムシで地球を救うなんて、私には絶対にできませんが、彼ならできる。逆に、彼ができないファイナンスを私はできる。
もし皆さんが、自分は財務人材として優秀だと思うのであれば、可能な限り、自分とかけ離れた能力をもった人と組むべきです。
また出雲はプリティで、人間的な魅力があります。だから頑張ってあげたいと思う。10億円のオファーよりも、出雲を何とかしたい気持ちのほうが勝りますね。
やはり、自分が頑張れる理由をきちんと作ることは大事だと思います。それが常に経済的な理由になったら、少しわびしくなるんじゃないかなと。
ユーグレナCEOの出雲充氏(Photo by Motoko Endo)
田中 長期間、会社のいろいろなステージを経験するうえで、関係がしっくりこなかった時期もあったのではないですか。
永田 経営をしていると必ず通る道だと思うのですが、思いとアクションにギャップが出て、論争が発生しやすい時期もありました。
少し意味合いは変わりますが、互いに人間としての欲や弱みが出ることもあります。たとえば社長が、事業の中身より会社の規模を追いたくなることだってあるかもしれない。
そのとき、横にいる人間が番頭として「違うのではないか」と言えるかどうか。現実問題として、副社長やCFOは社長より持ち株のシェアが少ないぶん浮かれにくいですから、トップを本筋に戻すのも、参謀としての仕事ではないかと考えています。
社会への責任を果たしたい
田中 出雲さんの熱を感じながら愛情をもって、ひとつのミッションをシェアしている同志のような感覚ですね。
永田 そうですね。ただ、情熱をもって仕事をしているモチベーションは、出雲と私では根本的に違います。
出雲はやはりアントレプレナーで、「ミドリムシで地球を救う」という思い、 ミッションが腹の底から湧き上がっている。しかし私は、そのビジョンに賛同しながらも、とにかく社会に約束したことを実現したいんです。
田中 社会への約束、ですか。
永田 はい、先ほど話したことと重なりますが、夢を語ってお金を集めたことに対する責任ですね。
2012年の上場直後、当社の時価総額が20億円から2000億円まで急上昇しました。 しかしユーグレナの株価は未来への期待値であり、本当に2000億円の価値があるわけではない。
上がった株価を売って抜けることはできますが、それはもう、ユーグレナの事業ではなく違うゲームです。私が こういう感覚になるのは、キャピタルマーケット(資本市場)側に生きている人間だからこそなのでしょうね。
このように私がユーグレナをやりきりたい理由は、出雲への愛情半分、社会に対する責任半分なのです。
田中 社会に対する責任が半分というのが、興味深いです。いつも感じるのですが、大義のある事業やチームは強いですね。
どんな会社にも経営理念やビジョンはありますが、紙切れになっている場合も少なくありません。個人的に思うのは、いい経営理念でも主語を入れ替えて他社にも通じるようでは、言葉だけになりやすい。
一方で、微細藻類で「人と地球を健康にする」というのは、他と入れ替えがきかないユーグレナならではの大義ですね。
永田 逆に、社会にいいことをせずに「しこたま儲けていっぱい配当します」と標榜する会社も、それはそれでいいと思いますよ。
田中 話はそれますが、永田さんは、人生における挫折はあるんですか。お話を聞くと、今の永田さんがどうやって作られたのか、とても気になります。
永田 もともと、コンプレックスは強いほうです。大学では環境になじめず、1年生を3回しています。
これでは普通に就職するのは無理だろうから資格を取ろうと、会計士の勉強をしていました。そのときに偶然誘われて参加したサッカーで、前職の副社長と知り合いました。高校時代の成績もとくによかったわけでもないですし、自分がレベルの高いところで生きてきた意識はまったくないですね。
ユーグレナが上場して3年ほど経った頃、ICCカンファレンスに呼んでもらって自分の考えを語ったときに、初めて経営者として評価されたと感じました。それまでは、自己肯定できるタイミングはほとんどありませんでした。
田中 ユーグレナの経営者として結果を出すことで、少しずつ自己肯定ができるようになったんですね。
永田 そうですね。よく、会社として何か成果が出たときに、自分のおかげだと思える人がいるじゃないですか。私は自己肯定感があまり高くないので、ある意味、そういう人がすごくうらやましいです。
実際には、いろんな要素が複合的に混ざり合ったうえでの成功なので、私は常に、チームの成果だと思っています。
とはいえ、社長が違う人だったら今のユーグレナはないでしょうし、同じメンバーで10年前に戻って同じ方法を試しても、同じ結果になるかどうかもわからない。
経営はそれくらい再現性の乏しいものだからこそ、チャレンジする回数が大切だと思っています。
※続きは明日掲載します。
(執筆:合楽仁美、撮影:鈴木大喜)
お知らせ
7月開校のプロジェクト型スクール「NewsPicks NewSchool」では、ユーグレナ取締役副社長COO・リアルテックファンド代表の永田暁彦氏による「次世代CFO共創」を実施します。
次世代CFO共創」の詳細はこちら
開校に先駆け、永田暁彦氏とマネーフォワード代表取締役社長 CEOの辻庸介氏による特別ウェビナー対談を開催いたします。
テーマは「新時代のCFO」。「CFOはファイナンス機能ではなく、経営者である」と考える永田氏とFinTechベンチャーとして上場を果たし、ユーザー数950万人を超えるサービスを生み出す辻氏の二人が考える新時代CFOの役割と経営のあり方について、お話いただきます。