「面接官の反応つかめず」 ウェブ採用に戸惑う学生
2021年春に卒業する大学生・大学院生を対象にした採用選考が1日解禁された。新型コロナウイルスの感染拡大の影響などを受け、企業の7割がウェブ面接を実施しているとの調査結果もある。ネットという限られた環境下でどう対話を進めるか、企業も学生もコロナ時代の採用に手探りで臨む。通信環境の整備など課題も多いが、地方や海外の学生の採用にはウェブ面接は効果的との見方もある。
損害保険ジャパンは1日、ウェブ会議システムを使った面接を始めた。東京都新宿区にある本社では、面接官専用の部屋を用意。担当者はタブレット端末に向かって書類選考を通過した応募者一人ひとりとやり取りをした。同社では1次から最終までの3回の面接をウェブで進める。
まず気を遣ったのは通信環境という。万が一動画が途切れた場合「予備のウェブ会議システムに切り替えたり、学生に電話して面接日程を変更できるようにしたりした」。また、面接時間は昨年よりも15分長い最長1時間にし、学生の緊張をほぐすための雑談の時間を確保した。
自宅で大手メーカーの面接をウェブで受けた都内私大4年の男子学生は「カメラ目線を保ちながら面接官の反応を見るのが難しく、最後まで慣れなかった」と打ち明ける。また都内私大院2年の男子学生は午後にあった大手企業のウェブ面接で突然音声が途切れ、足止めされた。「企業によって使うシステムが異なり不便だ」と訴える。
一方、全てをウェブで完結させることを避けようとする動きもある。三井物産は1次面接などの初期面接はウェブで、最終面接は対面で実施することを決めた。人事担当者は「ウェブ面接では有望人材を確信を持って判断できない」として、感染対策を講じたうえで対面の面接も取り入れることにした。
受付では学生に消毒液を使うよう促し、マスクを着用しているか確認。また面接会場には会話による飛沫感染を防ぐため、面接官側と学生側の間に高さ1メートルほどのアクリル板を設置した。
ウェブならではの効果を実感する企業もある。2月から全面的にウェブ面接に切り替えたUSEN-NEXT HOLDINGSの住谷猛執行役員は「地方の学生を順調にとれた」と話す。海外留学中の学生の採用にも生かせると見ている。
人材紹介大手のジェイエイシーリクルートメントの調査によると、ウェブ面接を実施している企業は全体の7割を占め、最終面接まで全ての面接をウェブで対応できると答えた企業は4割に達した。一方で企業からは「録画・録音されるリスクが不安」といった意見もある。「ウィズ・コロナ」の就活手法をどう軌道に乗せるか、学生も企業も試行錯誤が続く。
同日は次年度である22年卒の学生向けのインターンシップ(就業体験)の募集も本格的に始まった。ここ数年は学生優位の売り手市場が続いていたが「インターンの募集が例年より少なく、採用意欲が低下しているようだ」(採用コンサルタントの谷出正直氏)との声も出ている。
就職活動に励む学生、採用する側の企業は、ともにオンラインと対面を駆使しより良い出会いを求めます。就活に役立つニュースや、様々な疑問に答える『就活探偵団』などの読み物を掲載します。
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