[ニューヨーク 31日 ロイター] - 米ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性が白人警官の暴行によって死亡した事件への抗議デモが全米各地に広がり、暴徒化したデモ隊による略奪などが相次ぐ中、小売大手のターゲット<TGT.N>とウォルマート<WMT.N>は31日、各地の店舗を閉鎖したことを明らかにした。

新型コロナウイルスの感染拡大抑制策で店舗休業を強いられた米小売業界にとって、一段の打撃となる可能性がある。

抗議活動はニューヨークやシカゴなどで暴徒化。地元メディアによると、ロサンゼルスでは高級ショッピング街にあるアレクサンダー・マックイーンの店舗が略奪にあったほか、グッチの店舗では富裕層を標的とした落書きが見られた。

高級店舗が多数入る近隣のショッピングセンターでも、百貨店のノードストローム<JWN.N>やアップル<AAPL.O>の店舗が被害にあった。ノードストロームはロイターに対し、31日に全店舗を一時閉鎖したと明らかにした。「一部の店舗が被害を受け、状況を精査している」とした上で、「できるだけ早期の営業再開を目指している」と表明した。

アップルも、米国内の複数店舗を31日は閉鎖するとしたが、対象店舗の数や閉鎖期間延長の可能性には言及しなかった。

ターゲットは200以上の店舗で閉鎖や営業時間短縮といった措置をとると発表。閉鎖の期間は明らかにしなかった。

同社はロイターに対し、デモの発端となった事件が起きたミネアポリスの現場近くの店舗では安全のため入口などを木の板で覆う作業を始めたとし、同店舗については年内の営業再開を目指す考えを示した。

ウォルマートの広報担当者は、29日の抗議デモを受けてミネアポリスとアトランタの一部店舗を閉鎖し、31日午後5時に数百店舗を閉鎖したと発表。「それぞれの店舗や周辺地域の状況を日々精査した上で決定を行う」と述べた。

アマゾン・ドット・コム<AMZN.O>は状況を注視しているとした上で、「従業員の安全を確保するため一部の都市で配送業務の縮小やルート変更を行った」と明らかにした。

パー・スターリングのディレクター、ロバート・フィップス氏は「(抗議活動による)社会不安が小売りや外食などの業界に痛手となり、消費者・企業心理にさらなる打撃を及ぼす可能性がある」と指摘。「混乱が継続・拡大すれば、投資家心理に大きな影響を及ぼす可能性もある」との見方を示した。

米国では新型コロナに伴う外出制限の影響で小売売上高が統計開始以来の大幅な落ち込みを記録しており、第2・四半期の米経済成長は1930年代の大恐慌以来の大幅なマイナスとなる見通しだ。