【解説】TSMCがわかれば、「米中テック冷戦」がわかる

2020/6/3
ついに世界のハイテク製品の「黒子企業」にスポットライトが当たり始めた。
5月15日、米政府は中国の通信機器最大手ファーウェイに対する取引規制を大幅に強化した。
米国製品だけでなく、米国の技術が用いられている他国製品のファーウェイへの輸出を禁止し、サプライチェーンの分断を狙っている。
そしてこの禁輸措置を通して、世界のハイテク製品に欠かせない企業の存在が明らかになった。
TSMC──。台湾にある半導体製造の大手企業だ。
半導体は「産業のコメ」と呼ばれるほどハイテク製品に欠かせない部品で、ファーウェイは昨年の規制以降、TSMCからの供給に頼っていた。
しかし、今回の禁輸措置でTSMCからの供給が寸断される。世界2位の販売台数を誇るファーウェイのスマートフォン、中でも5G向けの最新端末の製造も危ぶまれている。
まさにTSMCは米中の覇権争いの鍵を握る、「影の主役」とも言える存在だ。
台湾、そして日本企業をも巻き込もうとしている米中テクノロジー戦争の見取り図を、経済産業省で通商政策や安全保障政策に長年携わった細川昌彦中部大学特任教授に描いてもらった。
1955年生まれ。1977年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。貿易局安全保障貿易管理課長などを経て1998年通商政策局米州課長、2002年貿易管理部長。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2006年経済産業省退職。現在は中部大学特任教授。著書に『メガ・リージョンの攻防』、『暴走トランプと独裁の習近平にどう立ち向かうか』

TSMCが対中制裁の「抜け穴」

安全保障の世界には、「チョーク(窒息)ポイント」という言葉があります。文字通り、その国にとって息の根が止まる部分のことです。
世界各国のパワーバランスを見極めるためには、各国のサプライチェーンのどこにチョークポイントが存在するか理解しなければなりません。
米国も中国も、当然それを見定めながら戦略を練っています。