(ブルームバーグ): 米投資ファンドのカーライル・グループは、日本拠点で強みを持つ中堅企業案件に加え、大企業案件に本格参入する。3月に設立した過去最大の日本特化ファンドを戦略の軸に、早期に4ー5人程度の専門家を採用して体制を強化。1件当たり1000億円規模の投資も可能として案件発掘を進める。日本代表の山田和広氏(57)がブルームバーグの取材で述べた。新型コロナウイルス禍を経験した日本企業が経営戦略を練り直す中、大企業の事業売却案件などが増えるとみており「その機会をもっと捉えていく」という。今年度中をめどに、現在21人の日本のアドバイザリーチームを大企業案件の専門家を中心に2割程度強化する意向を示した。その一環として、1日付で元マレリ(旧カルソニックカンセイ)常務執行役員の寺阪令司氏(48)をマネージング・ディレクターとして採用した。寺阪氏は2013年までの10年間カーライル・ジャパンに在籍した後、マレリやジャパンディスプレイなどの事業会社で要職を経験した。山田代表は「さまざまな事業会社で世界戦略にかかわった経験を生かしてほしい」と期待する。

大企業案件での戦略の軸となるのは3月に設立した日本特化ファンド。カーライルとして4番目の日本ファンドで調達額は3号ファンド(1195億円)の2倍超に当たる2580億円。グローバルなプライベート・エクイティ(PE)ファンドで日本ファンドの運用を公表しているのはカーライルのみ。山田代表は「日本拠点が投資戦略を決められる意思決定の速さが当社の大きな強みだ」と述べた。3号ファンドまではベビースターで知られる「おやつカンパニー」など中堅の事業承継案件を中心に手掛けることで、大企業案件が多い米KKRなどと差別化してきた。4号ファンドからは事業承継と大企業案件へ半分ずつの金額を目安に投資するという。運用期間は12年。

山田代表は、外部調達を活用して「日本ファンドだけで1000億円規模の投資が可能で、米本社などとの連携でさらに大きな案件にも関与できる」と説明。すでにパイプラインも豊富で、消費財やヘルスケア、テクノロジー・メディア・通信(TMT)、製造業など重点業種を中心に年1-3件の投資実行を見込んでいるという。

日本の投資環境の見通しについては「非常に強気だ」と述べた。もともと少子高齢化の進行で案件獲得の機会は拡大するとみていたが、コロナ禍により加速すると指摘。在宅勤務など「新しい生活様式」の普及で、弱点だったホワイトカラーの生産性が劇的に上がれば、相対的に日本企業の魅力が増す可能性があると期待を示した。

一方、コロナ禍によるマイナスの影響も否定しなかった。日本企業の業績は「まだ悪くなると思う」とし、案件増の顕在化は足元というよりは中長期的になるとみている。3月には環境悪化を受け、ソフトウエア開発などを手掛ける投資先のウイングアーク1stが上場を中止した。消費者行動の変化によって、投資先候補の評価をより慎重に行う必要があるとしたが「変化の見極めができれば、面白い投資ができる」とも語った。

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