新型コロナの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言が全面解除された。これで問題の焦点は感染拡大の第二波をにらみつつ、経済をいかに立て直すかに移る。そのキモは、「金融崩壊をどう防ぐか」だと言えよう。
実際、これまでカネ余りに苦しんできた銀行の前に、融資を求めて多くの企業がさばききれないほどの列をなしている。銀行はコロナショックに直面する企業を救えるのか、あるいは不良債権の拡大で経営危機に陥り、金融崩壊が世界をより深い不況に陥れるリスクはないのか――。
今回、新作小説『よこどり 小説メガバンク人事抗争』で銀行の在り方について独自の切り口で迫った作家の小野一起氏が、メガバンクの現役幹部、地銀の中堅、元日銀幹部など金融の最前線を知る銀行員たちと緊急対談。「コロナ融資が不良債権の山になる?」「リーマンショックの30倍の経済的ダメージ…」「地銀・信金に忍び寄る巨大な損失」など……銀行員たちがそんな驚くべき内部事情と本音を次々に明かした!
ちょっとした高揚感
小野 コロナショックが企業経営に与えるダメージへの懸念が日々、深刻化しています。銀行は、苦しんでいる企業の経営を支えることができるのでしょうか。
メガバンク部長A(50代) 当初は久々に銀行の出番が来たというムードでしたね。経営からも「既存の取引先をしっかり支えろ」という指示が出て、ちょっとした高揚感もありました。新型コロナは一時的な危機で、必ず出口がある。だから、その間、企業の資金繰りを支えるのは、まさに間接金融である銀行の仕事というわけです。全国銀行協会のデータでも、4月末の銀行全体の貸出残高は前年同月比で4%増。最近では、ちょっとない高い伸びでした。
国内外の人の往来が途絶したことで、売上の急減に見舞われたANAやJALにも、すぐに融資枠の設定を決めました。ただ、この勢いも4月のある段階まででしたね。それ以降は正直、腰が引けています。
小野 IMF(国際通貨基金)が公表した2020年の世界の経済成長率の見通しはマイナス3%です。世界の経済損失が500兆円という衝撃的な推計です。500兆円と言えば、ちょうど日本のGDP(国内総生産)です。コロナショックで日本が1年間で生み出す富が根こそぎ吹き飛ぶ計算になる。このIMFの推計が出たのが、ちょうど4月の中旬でした。このころから急速にムードが変わりましたね。
元日銀幹部B(50代) リーマンショックがあった2009年でも、世界の成長率はマイナス0.1%でした。よく「リーマンショック級」なんて表現がありますが、コロナショックは、そんな甘いものではない。銀行にしてみれば、はりきって実行した融資が、不良債権の山になる恐怖に襲われたわけです。今は肝が冷えているでしょう。
もはや政府系の政策投資銀行あたりが全面に出ないと苦しいと思いますよ。