【西野亮廣】「企画書がいらない」仕事を取りに行け。

2020/6/3
 どんな状況でも、楽しそうに働いている人はいる。仕事にやりがいを見出し、楽しみながら結果を出すには、どのような思考法が必要なのか?

 お笑い芸人や絵本作家などの多様な顔を持つ西野亮廣氏は、自身も楽しみながら、エンタメを武器に世界を驚かせ続けている人物だ。

 主体的に働くための秘訣はあるのか?周りも楽しく働ける「場づくり」の極意とは?西野氏に聞いた。(全3回連載)
カギは「ダイレクト課金」
── 西野さんは、お笑い芸人や絵本作家、オンラインサロンのオーナーなど、多様な肩書きを持ちながら、“楽しそうに”働いている印象です。西野さんはなぜ、そんなに楽しそうなのでしょうか?
 たしかに、楽しく働いてますね。しょっちゅう、死にかけてはいるんですが(笑)。
 でもやっぱり、自分に「決定権がある」仕事をしているのが、大きいと思います。約6万2000人(2020年6月時点)のメンバーが参加しているオンラインサロンを運営しているんですが、活動の予算は、基本的にはサロンの収益から出ているんです。
『西野亮廣エンタメ研究所』会員数6万2000人の、国内最大のオンラインサロン。議論・実験・作品制作・Webサービスの開発を繰り返しており、西野氏による本気の記事が毎日投稿される。エンタメの最前線を一番近くで覗くことができ、ときには作り手としての参加も可能となっている。
 お金の出どころが広告費じゃないんですよね。つまり、スポンサーさんにハマらないと活動できないモデルではなくて、お客さん(サロンメンバー)からのダイレクト課金で、プロジェクトの資金が回っている。
 ダイレクト課金なら、誰にも企画書を通さずに、「やりたい」と思ったことをすぐに実行できるんです。
 今の仕事を楽しめていないとしたら、自分に決定権がある仕事を1つでも持つと良いかもしれません。精神衛生上も、楽になると思います。
── 西野さんは全く異なる性質のプロジェクトを、ものすごいスピードで並行しながら進めていますよね。その秘訣は、あるのでしょうか?
 やることとやらないことを、実は決めています。20から30くらいのプロジェクトを同時に進めているんですが、プロジェクト同士の連携を示す『シナジーマップ』を作っていて。
 各プロジェクトを大陸に見立てて、プロジェクト同士の「お金」「広告」「世界観」の流れを、可視化する地図を描いているんです。
プロジェクトの「お金」「広告」「世界観」の流れを示したシナジーマップ。各プロジェクトの目的と連携が分かる、指示書のような存在。
 たとえば、オンラインサロン(ENTERTAINMENT LABORATORY)からは、お金の矢印(¥マーク)が絵本(PICTURE BOOK)に伸びている。
 絵本1冊作るのに2000万〜2500万円かかるんですが、この金額は印税だけでは回収できない。なので、絵本の制作費はサロンの収益から出しているということですね。
絵本『えんとつ町のプペル』の表紙。
 一方で左側のビジネス書(BUSINESS BOOK)からは、お金の矢印がどこにも伸びていない。つまりビジネス書の印税は全額、その本自体の宣伝費に回すんです。
 具体的には新聞の1面を買い取ったり、ゆりかもめの広告枠をジャックしたりしています。競合のビジネス書はこんなに宣伝費をかけられないので、ここで一気に差をつけられる。
 ビジネス書を読めばサロンに入りたくなる設計にしているので、ビジネス書が売れれば、自動的にサロンの宣伝になっています。印税で回収するよりも、サロンで回収した方が大きいんですよね。
 なので広告(AD)の矢印が、ビジネス書からサロンの大陸に伸びているという。
── 面白い。西野さんが複数の仕事を掛け持つ「複業家」だからこそ、それらを連携させてインパクトを大きくできるということですね。
 そうですね。『複業』をしていても、それぞれの仕事がシナジーを持っていないなら、意味がないと思っていて。
 たとえば「お笑い芸人」が、「編み物作家」をやって、「小説」を書くのは『複業』ではあるけれど、それぞれが単体で動いてしまっている。
 仕事同士を連動させることで初めて、本当の意味での『複業』ができると思います。
取材はオンラインで実施した。
お金の流れが変わった
── 西野さんのオンラインサロンでは、メンバーが主体的にプロジェクトに関わって働いていますよね。西野さんが楽しむだけでなく、「楽しく働ける場」を作るために、心がけていることはありますか?
 サロンでは1個ルールを決めていて。僕がたまに怒る時があるんです。もちろん怒鳴るようなことはしないですが、「それはやめておいた方が良いんじゃない?」みたいな。
 そういう時は、僕以外のサロンメンバー全員が、怒られた人のフォローに回るという(笑)。やっぱり、怒られたら結構ヘコむと思うので。
 あとは「ヒューマンエラーはない」とも、言い切っていますね。誰かがミスをした時は、ミスをさせたシステムが悪くて、ミスをした人自身は1ミリも悪くない、と。
 だからミスをした人はすぐに報告をして、そのシステムは一刻も早く改善する。これを徹底すると、結構みんなのびのびと活動できるので、そこは決めていますね。
── オンラインサロンのメンバーは、会員費を払いながら働いているのですよね。「お金を払って働く」というのは、新しい働き方に感じます。
 お金を作る選択肢が、増えたんですよね。お金の流れは一方通行ではなくなって、より複雑になっていて。
 たとえば、スペインのサグラダ・ファミリアで働いている人って、労働の対価としてお金をもらっているじゃないですか。でも「サグラダ・ファミリアで働いている」という「経験」自体も、今の時代は売れるはずで。
 作っている時の話をYouTubeで配信したり、「建物の内部って、実はこうなってて」とnoteにまとめて販売したり。そうすると、「1万円支払ってでも働きたい」という人が出てくるんですね。
 僕も実際、去年東京タワーやエッフェル塔で個展を開いた時は、「スタッフとして働ける権」を販売していました。誰もいない真夜中の真っ暗な東京タワーやエッフェル塔に入って、個展の準備をするんですが、普通に生きていたら、こういう経験はできない。
 「これは絶対回収できるぞ」というお仕事に関しては、売るようにしています。
「えんとつ町のプペル」のエッフェル塔での個展の様子。
「プロ聞き屋」を目指せ
── お金の流れが一方通行でなくなった時代には、どんな人が価値を出していけるでしょうか?
 Giver、つまり「与える人」であることは、間違いないですね。僕のところに入ってきたお金は基本的には全て人に還元しているんですが、そこでお金が回っていくことで、どんどん大きくなるんです。
 与えているとだんだん、「上手な与え方」が見えてくる。いやらしく聞こえるかもしれませんが、闇雲に与えることはしなくなります。
 僕の場合はシナジーマップを頭に入れながら、どうお金が巡るのかを考えて、与えるようにしています。ただ1つ、いきなり自分の取り分を考える、というのはやらないですね。
 あと今は、「話を聞ける人」が勝つ時代だと思います。上手に話を聞いてくれる人に、人と情報が集まっていく。聞き上手が今一番強いですね。
 発信なんて誰でもやっているんだから、SNSの発信なんて正直しなくて良い。それよりも、他の人の発信に全部返信できる人の方が良くて。「プロ聞き屋」になるのが良いと思います。
唯一の失敗は「情報を得られない」こと
── 西野さんはいろいろなアイディアを結びつけて、新しい作品を生み出し続けています。そのための習慣はありますか?
 僕はプロジェクトがうまくいくと、すぐに後輩とかインターンの子に渡してしまうんです。なぜかというと、僕はとにかく情報が欲しいから。
 「このアクションを起こすと、どうなるんだ」という所に身を置かないと、入ってくる情報は減ってしまうじゃないですか。情報が一番入ってくる場所にいたい。
 そうするとやっぱり、一番挑戦している時に、情報がとれるんですよね。だからプロジェクトがうまくいくと人に渡して、自分は次の挑戦に移る。
オンラインサロンでの会議の様子。
 挑戦して失敗することもありますが、それもサロンに投稿する記事のネタになります。唯一の失敗は、情報を得られていないことなんです。
 なのでルーティーンの仕事やレギュラー番組など、すでに勝ちパターンに入っている仕事は、なるべくやらないようにしていますね。
 アイディアってゼロイチではなくて、自分が持っている情報の組み合わせ、つまり編集作業じゃないですか。その編集素材を得るために、情報が得られる場所に身を置いておくことが大事で。そこを意識していますね。
── アイディアを結びつける中で、西野さんの頭の中に仕事とプライベートの境は存在するんでしょうか?
 ないと思います。むしろ皆さん、仕事とプライベートをうまくすみ分けできているものなんですか?(笑)
 ずっと考えていますね。考えていない時間がない。何かと何かをくっつける作業をずっとしています。
 プライベートであろうと、移動中であろうと、ご飯を食べている時であろうと。街を歩いている時も、あの看板の出し方って合ってるのかな?とか。これとこれ掛け合わせたら良いんじゃない?とか。
── この連載のスポンサーである日本マイクロソフトの「Microsoft 365 Personal」は、クラウド上で資料の編集やファイルの共有ができるサブスクサービスです。こうしたツールは楽しんで働くライフスタイルに、役立つでしょうか?
 そういうサービスは、超嬉しいですね。
 今の時代、普段使うのはほとんどスマホじゃないですか。文章とか、「これパソコンで書いたな」って分かる(笑)。パソコンで見た時は綺麗でも、そのままスマホに写すと、行間が詰まって読みづらいんですよね。
 だから僕も、パソコンで書いた文章を1回スマホに移して、スマホ上で見え方を調整してから投稿する、みたいな非効率なことをやっていて。パソコンとスマホの両方から編集できるのは、便利ですね。
「Microsoft 365 Personal」は、WordやExcelはもちろん、ストレージサービスのOneDriveなどを含めた定番ツールを搭載。スマホとパソコンを横断して、ファイル共有や編集を行える。
 いろいろな種類の仕事をしているので、たとえば朝オンラインサロンの記事を書いて、ラオスに小学校を作る打ち合わせをしている合間に、映画の脚本の直しとかをしているんですよ。
 そんな時に、いちいちパソコンとスマホで仕事を分けるのは効率が悪いので、嫌だなと思っていて。
 そういう意味でも、パソコンとスマホを横断して1つのツールで完結できるのは、助かりますね。
(取材・編集:金井明日香、デザイン:堤香菜、写真と挿入画像:吉本興業提供)