(ブルームバーグ): ソフトバンクグループは、傘下のビジョン・ファンドで10%程度の人員削減を検討している。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。

ビジョン・ファンドの従業員は現在約500人。過半数がロンドンの本部で勤務しており、サンフランシスコや東京などにもオフィスを構える。関係者の1人によれば、削減は全役職が対象。関係者らは匿名を条件に語った。

ビジョン・ファンドの広報担当はコメントを控えた。

M&Aアドバイザリー業務を手掛けるカチタスの平井宏治社長は、人員削減について「ビジョン・ファンドの投資銘柄がつまずき、コロナが追い打ちをかけ、ファンドががたがたになったのを考えると当然だ」と述べ、「コスト削減が目的で、報酬の高い人材から切られるだろう」との見方を示した。

28日の日本株市場でソフトバンクGの株価は、一時前日比3%高の4875円と反発。4月20日以来、約1カ月ぶりの高値水準に戻した。

同社の前期(2020年3月期)決算は投資先の公正価値減少が響き、ビジョン・ファンドなどからの営業損益が1兆9313億円の赤字に転落(前の期は1兆2566億円の黒字)した。

孫正義社長は決算会見で、新型コロナウイルスの影響から投資事業を取り巻く環境は1929年の世界大恐慌と肩を並べる「未曾有の危機だ」と説明。3月末時点でビジョン・ファンドが投資する88社のうち、15社程度は倒産する可能性がある半面、うまくいく投資先も多くあると話した。

カチタスの平井氏は、人員削減が始まれば「優秀な人がよりよいファンドを求めて退職する副作用が出てくる。そうなると、ビジョン・ファンドは坂を転げ落ちるようになる」と指摘。米中対立の影響を受ける恐れもあり、「もしアリババがニューヨークで上場廃止になれば、さらに大規模なリストラを迫られるだろう。銀行も市場も固唾をのんで見守っているに違いない」と語った。

原題:SoftBank’s Vision Fund Is Said to Plan Deep Cuts in Staffing (2)(抜粋)

(識者のコメントを追記します)

©2020 Bloomberg L.P.