【WEEKLY OCHIAI】“リモートワーク疲れ”の正体を解明せよ

2020/5/26
「WEEKLY OCHIAI」では、新型コロナウイルスについての最新情報の解説とコロナショックがもたらす新しい未来の可能性をめぐって、落合陽一と各界のプロフェッショナルによる“ハードトーク”をお届けしています。

この記事は5月20日に配信された「〝リモートワーク疲れ〟の正体を考える」のダイジェストです。
番組本編の視聴はこちらから(タップで動画ルームに遷移します)

なぜリモートワークで疲弊するのか

リモートワークの普及によって、仕事が捗る人もいれば、心身ともに疲弊している人もいる。
この日のゲストも猛者揃いの中、JINS/Think Lab取締役の井上一鷹氏は、この違いについて、独自のリサーチをもとにこう仮説をたてた。
井上 まず単身かどうか、環境が整っているかどうか、この二点が大きく影響するというのが前提にあります。
今って、社会的な空間がすべて家に押し込まれている状態なんですよね。
すべてが生活にとって大事な要素なのですが、それが今はひとつの物理空間に全部落とし込まれて、ゆとりがなくなっている状態です。

カメラの画角に収まることは意外に苦痛

落合陽一は、リモートワークによって自ずと規定される「身体性」に注目し、井上氏の指摘に続く。
落合 ここ1,2ヶ月の間、妻子が実家に帰っているので僕は単身者と同じような環境で仕事をしています。でも正直疲れ自体はあまり変わらない。
じゃあ、疲れの正体ってなんだろうと考えたときに、カメラの画角に収まることってけっこう苦痛なタスクなんじゃないか、ということに気づいた。
オンラインカメラって、身体性を維持するようなシステムになっているんです。
そういう暗黙の了解的にやっているタスクっていうのがまだまだあって、まずはそこに対する理解が必要なんじゃないか、って思うんですよね。

リモートワークが削ぐ「やる気」

リクルートキャリア HR統括編集長の藤井薫氏は「仕事にのやる気が上がる5つの要素」という観点から「リモートワーク疲れ」の分析を試みる。
藤井 内的動機を上げるこの5つの要素が満たされていると、やる気が上がりやすいとされています。そして、モチベーションが高い人は、仕事に対する満足度も高い。
ただ、リモートワークの場合、まずは自分の仕事をこなすことが先になってしまい、会社でいま他の社員がどのように動いているのかわかりづらくなる。
自分はパーツ部分の仕事しかしていない、と感じるなど、全体性が削がれるとやる気も失いやすくなります。
リモートワークはこの5つの要素を削ぎやすい働き方になっているんですよね。

イノベーションを起こす“バイブス”の喪失

東京大学大学院情報学環教授で落合の師でもある暦本純一氏は、リモートワークによっって「バイブス」が落ちていると指摘。師の言葉にも落合と通ずる“エモさ”が宿っていた。
暦本 いま一番心配しているのは、イノベーションが起きるとき特有のvibes (バイブス)
のようなものが著しく落ちてしまっている状態です。
リモートワークはアジェンダのある優等生的な対話はできるけど、計画性のない雑談や出会いは生まれない。
暦本 ルーティーンの仕事はできるんだけど、「え、これ何なの」という驚きが生まれにくいことは問題ですよね。
なのでアブノーマルでありたい人間にとってはあまり整合されない方がいいかも、と思っています。

無意識の雑談がもたらしていた価値

社員約700名がフルリモートワークだというキャスター取締役COOの石倉秀明氏は、これまでのオフィスが担っていた役割について、こう分析する。
石倉 オフィスの中にはオンとオフのグラデーションがあるんですよ。
業務について話すこともあれば、ランチを食べながらカジュアルな会話をすることもある。これらが混在しているから気分のオンオフも切り替えやすくて仕事が進む。
それがリモートになった途端にみんな仕事の話しかしなくなる。
雑談や相談、アイデア打ちなどがすべて置き去りにされて、それらの時間もすべて仕事にあてられてしまう。

リモートとリアルの「ハイブリット」が重要

Waris共同代表の田中美和氏は、リモートワーク疲れは「ハイブリッド」で解決すべきと語る。
田中 たとえばリモートの実現には女性が社会で働きやすくなる一面もあります。
我が社も8割は育児中のママ社員ですが、時間と場所の自由度が高まるだけで仕事と生活のバランスはとりやすくなる。
ただ、リモートの良さはもちろんある一方で、やはりリアルの手触り感や恩恵もあります。
今後もリモートとリアルの融合した働き方をしていきたいと改めて思いましたね。

真面目ににリモートワークし過ぎない

慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏は、リモートワークのやり方の可能性について模索しているという。
宮田 お話を聞いていると、みなさん真正面からテレワークをしているなあという印象です。
僕はどちらかというと、いかに楽に、楽しくテレワークができるか、を考え続けています。
宮田 たとえば、オンライン会議は家で座ってやるのではなくて、皇居の周りを歩きながら話すとか。
テレカンならではのリソースの使い方や自分なりの試行錯誤をしてみるのはいいのでは、と思っています。

リモートワークの最適解を探ろう

25日夜、政府は緊急事態宣言をおよそ1ヶ月半ぶりに全国で解除しました。
今後、段階的に「新しい日常」を獲得していく過程で、それぞれの職場で出社と在宅勤務のバランスを探る動きが加速していくと思われます。
“リモートワークの最適解”を皆さんそれぞれが考えるにあたって、「WEEKLY OCHIAI」がその一助になることを願っています。
ぜひ、番組本編をご覧ください。
番組本編の視聴はこちらから(タップで動画ルームに遷移します)
<執筆:富田七、編集:安岡大輔>