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【完全解説】TikTokが米国市場でも伸びている理由

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、次世代SNS企業の話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

過去4年間で世界で最も勢いがあるアプリ「TikTok」。AirPodsやMeme(ミーム)文化が爆発的に伸びていた流れに乗っかったのは確かだが、それ以外にも自社のUI判断やグロース戦略でここまで成長できた。そして何よりもソーシャルグラフが必要のないSNS、コンテンツベースのアルゴリズムを作ったのは過去に存在しなかったこと。そんなTikTokの裏のByteDanceの最初のサービスToutiaoから実際にTikTokのインフラが作られていた。

今ではByteDanceの時価総額が$100B〜$140Bになっていると言われている。

2017年11月にBytedanceは当時アメリカで次世代SNSだったMusical.lyを$1Bで買収。2018年8月にMusical.lyとTikTokを一つのアプリとして統合。そのすぐ後に$3B調達して時価総額が$75Bまで上がった。当時はほとんどの人から高すぎる時価総額と言われていたが、今見ると間違ってはなかった。

ByteDanceの2019年の数字を見ると$16B〜$20Bの売上、2018年から2倍になっている。そして中国のデジタル広告市場のシェアが22%(2017年には経ったの5%)。

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引用:Technode

しかもこの$16B〜$20Bの売上の5%しかTikTokから来ていない。TikTokはこれから広告プラットフォームとして伸びるので、今後の成長率が加速する可能性もある。今8年目のByteDanceはTencent、Twitter、Facebook、Snap、Googleの8年目よりも圧倒的に売上が伸びている。

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引用:Turner Novak Substack

それではByteDanceの凄さの始まりであるToutiaoの話、TikTokなどの他社サービスへの拡大、Musical.lyを買収してアメリカ市場へ参入、そして今後の展望について紹介します。

今回の記事の多くはGelt VCで働くTurner Novak氏のブログ「The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance」から引用しています。ご興味がある方は是非彼のメルマガや記事をチェックしてみてください!本記事はTurnerさんからも許可いただき、公開しています。

ByteDanceの初プロダクト、Toutiao(今日頭条)

ByteDanceが作った最初のプロダクトは2012年8月にリリースしたJinri Toutiao。Facebookの友達のコンテンツがないニュースフィードが一番近いものとなる。そこでハイパーターゲティングしたコンテンツや広告をユーザーに提供してた。2018年中旬の2億人DAUがピークで、1ユーザーは1日平均74分使っていた。これはFacebook、Instagram、Snapchatの約2倍の利用時間。

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引用:Y Combinator

ローンチと初期グロース
創業者の張一鳴(Zhang Yiming)氏は2008年にアイデアを思い付いたらしい。当時はMeituan創業者であるWang Xingと一緒にSNSサイトHainei.comを運用していた。Hainei後も張氏はいくつかの会社を作った。彼の経歴を見ると、OTAサイトのKuxanのCTO、Twitter類似サービスfanfouのCEO、不動産リスティングポートあるサイトの99FangのCEOなど。そして大学生時代でもエンタープライズ向けソフトウェアを作り、その後にMicrosoft Chinaで勤務していた。

Toutaioがローンチした際には中国のスマホニュース市場は国がコントロールしていたメディアやポータルサイト(SinaやSohuなど)しかなく、デスクトップ向けの長めのテキストコンテンツが多かった。Toutiaoの初期プロダクトは中国のウェブメディアのひたすらクローリングしてスマホ用にフォーマットし直してコンテンツを提供していた。一時期コンテンツの広告も自社広告に変更するまでのこともやっていたらしい。

初期のToutiaoのグロースは中国版TwitterであるWeiboのインフルエンサーが広げてくれた。Toutiao自体はかなりアグレッシブなプッシュ通知やユーザーにコンテンツ共有を勧めたりした。その結果、90日で1,000万ユーザーまで成長できた。新規ユーザーがSinaもしくはWeiboアカウントでログインした際にはまずToutiaoはそのユーザーの趣味・興味あるものや友達の情報をスクレーピングした。そしてユーザーの利用データ(どうタップやスワイプをしたのか、どのタイミングで戸惑ったのか、記事のかける時間、コメント、場所、時間など)をトラッキングして、そのデータを元にユーザーに合わせたコンテンツをて今日。これは今のTikTokにも存在する手法。

そしてコンテンツのタイトル、カバー写真、記事の長さまでかえるようにした。色んな変更をした結果、80%と恐るべし読了率を得られて、それがユーザーの生涯のリテンションレート(Lifetime retention rate)を45%と言う圧倒的に高い数字を初期に達成できた。しかも編集チームを使わず、完全自動化していたため、コストを抑えながら良いプロダクトを作ることができた。

批判とサービスの進化
もちろん多くの大手メディア企業はToutiaoが嫌いでToutiaoを常に訴訟バトルの間に入っていた。TikTokでも起きているが、Toutaio記事の引用元が分からなかったケースが多々あった。さらに記事のフォーマットをToutiaoが変更した時にアプリがクラッシュした。最終的にはToutiaoはユーザーに他社サイトへの誘導を許したが、多くのメディアのほとんどのトラフィックがToutiaoから来ていたのは間違いない。2014年にWeiboのトラフィックが落ち始めた際にToutiaoの$100M Series Cに参加してトラフィックを流してもらうように約束した。

そしてToutiaoは出版社やキュレーターに直接Toutiaoアプリでコンテンツ制作を依頼して、代わりにレベシェアを渡した。うまく行き始めた瞬間にToutiaoはすぐにパートナー制作記事へシフトし始めた。2017年には120万人の外部クリエイターと提携していた。最終的にTencent、Alibaba、Baidu、その他スタートアップは中国で似たニュースプロダクトをリリースするが、Toutiaoで上手くマネタイズ出来ていたクリエイターが他のプラットフォームへ変更する意味がなかった。実際にToutiaoのビジネスモデルはかなりハイマージンで、2015年では$220Mの売上で黒字化できていたと言われている。

そして徐々にToutiaoは記事にコメント機能を追加したり、フィードに写真や就職情報、フィットネス・音楽・ポッドキャストアプリを開けられるボタン、生配信番組、インタラクティブなQ&Aチャネル、そしてNetflix類似の映画視聴プラットフォームXiguaをToutiaoに追加。2018年には他の中国テック企業と同じようにミニプログラムをリリース。第三者にToutiao上でアプリを開発してリリースできるようにした。レストラン、スーパー、薬局のデリバリーアプリが開発された。Toutiao内でも常に新しいアプリを開発して市場のリアクションを試していた。2ヶ月以内でパフォーマンスがなければシャットダウンするようにしていた。

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引用:Turner Novak Substack

そしてToutiaoはアプリ内に動画を入れるように注力していた。Facebookと同じように動画フィードの広告を入れられるようになった。初期はスマホ広告に投資し始めていた大手ブランドと交渉していた。ブランド側としては、BaiduやTencentよりToutiaoの広告プロダクトの方がハイパーターゲティングが出来るため、主要客により簡単いリーチできると思い締結した。そのターゲティングのパフォーマンスが高かったからこそ、2019年7月自転のMeituanの広告費用の85%はByteDanceサービス(Toutiao、Douyin)で使っていた。

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引用:QuestMobile Ads Report

Toutiaoアルゴリズムとディトリビューション基盤とした新規サービス
Toutiaoのフォロワーを使わず、ユーザーの行動をベースにコンテンツ・広告をレコメンドするエンジン、そしてToutiaoによって多くの中国人へリーチできる配信プラットフォームを活用して2016年9月にDouyin(初期はA.meと呼ばれていた)、2017年にはTikTokの二つのショートフォーム動画アプリをリリース。動画アプリをリリースすることによってToutiaoの動画広告在庫が増えるのと、ユーザー層が男性に偏っていたのを変えて女性ユーザーへリーチできる、さらにEC要素を入れられるアプリとなった。

それ以外に重要点としては2018年にToutiaoがピークしていたことをByteDance側も理解していたこと。今後の成長のためには、別のプロダクトから来なければいけないことを理解していた。

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引用:Turner Novak Substack

スマホ版YouTubeであるTikTokの特徴的なUI

TikTokは今だと誰でも聞いたことはあるアプリになった。2019年6月時点では15億人のMAU、その年の10月にはDAUで10億人を超えるとTikTokアメリカ代表が話していた。ユーザーを考えたUI判断とかなりアグレッシブなグロース戦略でここまで来た。

動画ファーストなUIと簡単なオンボーディング
TikTokのUIで一番重要なのは最初の動画ファーストなインターフェース。アプリをロードした瞬間からプレーし始めてユーザーをアプリへ引き寄せるコンテンツを先出しすること。

まず象徴的なのはアカウント作成が必要ないこと。新規ユーザーとして登録する際には最初に何に興味があるかを指定するだけ(しかも選ばなくても良い)。以下がその様子。約10秒でオンボーディングが終わる。これは2014年のYik YakのUIと似ている(Yik Yakはロケーショントラッキングの許可と通知の許可だけ)。すぐにコンテンツを楽しめるように最小限のオンボーディングをわざとしている。

TikTokは裏側でデバイスID別に裏アカウントを作っている。そのため、ほとんどのTikTokユーザーはアカウントを作らずコンテンツを見ている。出来るだけ大きく動画を見せて、必要があるボタン(プロフィールページ、いいね、コメント、共有)のアイコンだけ出している。Toutiaoのようにアプリ内の行動を見てデータプロフィールをTikTokが作っている。他社のサービスも同じようにアルゴリズムを使ってコンテンツを提供しているが、TikTokとのUIを比較するとどちらがデスクトップベースで作られ、どちらがスマホベースで作られたがわかる。

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引用:Turner Novak Substack

Instagramでさえスクリーンスペースを無駄にしている。上記の動画、もしくは広告を見ると、スクリーンの100%のTikTok、16%のWeChat、31%のInstagramのどちらをユーザーは選ぶか?

ショートフォーム動画
TikTok上のコンテンツは短い。元々15秒のリミットがあった(中国のDouyinでは2分まで伸びた)。スマホでは短めのコンテンツが好まれるので、それ専用のプロダクトを作るとUI/UX、ユーザーの期待値も変わる。アテンションスパンが短くなっている中、10分のYouTube動画でも見れなくなっている。有名YouTuberのDavid Dobrikも3分〜5分動画の方がパフォーマンスが良いと発言している。このロングフォームコンテンツからショートフォームのトレンドは多くの人が感じていると思う。

ショートフォーム動画は制作と消費の摩擦を減らしている。今現在はほとんどのTikTok動画はクリエイター一人で作っていて、一日複数の動画を投稿している。2018年のByteDance広告主向けの資料によると34%のユーザーは毎日コンテンツをアップしているとのこと。

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引用:AdAge

これがロングフォームコンテンツであればスマホで撮影と編集はしなく、チームで撮影を行うことが多い。TikTokクリエイターは自分自身でコンテンツを編集しているため、視聴者を理解するためにTikTokコミュニティに入り込んで自分自身でコンテンツを消費しなければいけない。

そしてコンテンツを消費するユーザー側からするとショート動画だからこそコミットしなくても良い。すぐに始まり、すぐに終わる動画は最悪悪くてもたったの15秒の無駄。各動画は最後の方にちゃんとクライマックスを用意して、もし一部見れなくてもデフォルトで動画がリプレイするので何回も見てしまう。TikTokは裏では各動画の視聴長さ(どこまで見たのか)や複数回見たときはアルゴリズム上かなり高い評価をつける。

短い動画のため、他社サービスより圧倒的なスピードでデータ収集ができて、それでよりアルゴリズムの改善ができる。10分間のYouTube動画の時間帯でTikTokでは40個の15秒動画のデータを取得できる。下記データを見ても他のSNSと比較すると圧倒的な差があることが分かる。

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引用:Digiday

TikTokの一番近い競合はYouTubeだが、YouTubeはテレビ・デスクトップ向けのコンテンツ。実際に2020年3月では1億人はYouTubeをテレビで見ていた。そしてYouTube、Twitter、Instagram、TikTokの1セッションあたりの消費されるコンテンツ量を見るとすごい。

そして今後ショートフォームの動画の間に広告を入れられることを考えると、かなりマネタイズポイントがあると思われる。

The Informationでも上手くTikTokの特徴的なUIをまとめている。

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引用:The Information

TikTokは「ソーシャルではないSNS」

TikTokのすごいところはこれだけ大きいSNS企業なのに、ソーシャルグラフを必要としていないところ。Facebookは10日以内で7人の友達が「マジックナンバー」と言われていたり、TwitterやInstagramも人気になるにはフォロワーが重要。逆にTikTokは友達、フォロワー、アカウントですらいらない。人ではなく、完全にアルゴリズムがコンテンツ、タグ、そして動画内のアクションやものを把握しながらユーザーの視聴履歴、見直した動画、いいね、コメント、共有、視聴後の行動を全てモニタリングしている。a16zパートナーのConnie Chenが言うように、TikTokは初めてC向け商品の中でAIがプロダクトであること。これは過去のFacebookなど、ユーザーとその周りのユーザーのインタラクションを元に作られたアルゴリズムとはかなり違う。

このアンチソーシャルなアプローチはもしかしたら他社プラットフォームと比べて、より長持ちできる施策かもしれない。ほとんどのSNSは友達やフォロワーが増えるとプロダクトのバリューが下がる傾向にある。以前SNSについて説明した記事でもソーシャルメディアからステータスメディアへ進化する話をした。そのフォロワーや友達の概念がそこまでないTikTokはもしかしたら有利なポジションにあるかもしれない。

実際の事例を見てみよう。ハリウッド女優のジェニファー・ロペスのTwitterとTikTokのフォロワー数は:
・Twitter:4,400万人
・TikTok:280万人

TwitterであげたTikTok動画:100万再生回数
TikTokであげたTikTok動画:1,790万再生回数

フォロワー数が多くてもTikTokの方がバズった。

TikTokの拡大戦略

Chenが言うように、TikTokは初めてC向け商品の中でAIがプロダクトであること。これは過去のFacebookなど、ユーザーとその周りのユーザーのインタラクションを元に作られたアルゴリズムとはかなり違う。計画的な拡大戦略をとっていた。

まず、スマホで最も優れたショートフォームの動画編集ツールを作った。簡単にクリッピングしたり、フィルター、音楽を追加できるようにした。そして他社プラットフォームへ簡単に共有できるようにした。そこでTikTokがとった戦略は動画をTikTokからエキスポートする際には必ずTikTokで投稿すること、そしてエキスポートされた動画は必ずTikTokのウォーターマークが自動的に付けられたこと。それによって元々動画編集ツールとして使ってたクリエイターはTikTok上でファンがつき始めたらTikTokで投稿することに注力してくれるようになるから。

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引用:Jack Appleby Twitter

さらにInstagramのように鍵がかかったアカウントが存在しないこと。Instagramコンテンツを共有したが、そのアカウントが鍵がかかったアカウントだったのでコンテンツが見れない不満はある。TikTokは全世界に公開しているので、そこを気にすることはない。

そしてクリエイターをプライオリティーと置くようにした。クリエイターにはTikTokスタッフからのサポート、どう言うコンテンツを投稿するべきかのメールを送ったり、TikTokスタッフと1対1のデモ、TikTokクリエイターコミュニティ用のイベントやコラボ企画を勧めたりもしている。しかもスマホを安定させるためのスマホスタンドも送ってくれるらしい。以下クリエイター向けのイベントがどのようなものかを見せている動画です:

初期では各SNSの有名インフルエンサーを囲い込むようにオペレーションチームが託された。噂によるとTikTokに投稿してもらう代わりにお金を払ったと出ているが、実態は分からない。中国ではセレブにお金を払ってDouyinの初期コンテンツを作っていた。タレントショーのオーディション動画や、Michael Korsとのイベントパートナーシップを行なってグロースした。中国では他のプラットフォームの動画を勝手にとって自社プラットフォームにあげたとも言われている。そしてアメリカとヨーロッパに入るためにMusical.lyを$1Bで買収。ByteDanceとMusical.lyは同じ株主がいたため、その株主が間に入ってM&Aのお手伝いをしたと言われている。

そしてTikTokクリエイターにすぐにソーシャルキャピタルを与えられたのが重要なポイント。過去だと各プラットフォームの初期ユーザーが一番ソーシャルキャピタルを獲得できる仕組みになっていた。TikTokだとフォロワー数関係なく、前コンテンツをプロモーションする。TikTokでは既存のクリエイターに十分なソーシャルキャピタルを与えながら新規ユーザーにも割り当てられるようにしなければいけなかった。Musical.ly創業者で現在TikTokのプロダクトのトップを務めるAlex Zhu氏はこのプロセスを新しい国を作るように例えている。

このソーシャルキャピタルのアロケーションを計画的に割り振るためにはTikTokとしてはショートフォーム動画、アルゴリズムからのコンテンツディスカバリー、フォロワーに重きをおかないこと、ソーシャルグラフを使わないこととオンボーディングを最小限にすることが重要だった。

SNS事業含め、ビジネスの多くではよりユーザーにリーチできる会社が長期的に勝つ。リーチが無ければより良いプロダクトで勝ちに行くのが大体の戦略。TikTokはプロダクトのイノベーションでより大きいユーザーベースにリーチできるようにした。Twitterだと何か投稿したときに、基本的にフォロワーが見てくれるため、フォロワー数が少ないほど広がるチャンスが少ない。TikTokはフォロワー数を無視しているため、よりコンテンツが広がる仕組みを作っているからこそみんなが使いたがる。これはInstagramがSnapchatをコピーしてStories機能を追加した時と同じ。SnapchatよりInstagramでフォロワーが多かったクリエイターはSnapchatではなくInstagramでStoriesを当国し始めた。クリエイターは多くのユーザーに一気にリーチするのが目的なため、TikTokに行く理由は分かる。

TikTokがコンテンツの共有を強調するのもリーチを広げるため。動画が二回ループするとシェアするアイコンが緑になる(日本の場合はLINEのアイコンが出る)。そこをタップすると他社プラットフォーム含めて共有できるように見せている。TikTokはモバイルウェブ対応もしていて、友達から受けた動画はかなり高い角度で見てくれると確信している。しかもこのオフプラットフォームで共有するとTikTokは裏側でそのデバイスID別にソーシャルグラフを作れて、将来的にSNSを作る際には役に立つデータを取得できる。

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引用:TikTok

そして最後の拡大戦略は圧倒的なマーケティング。2018年から2019年にかけて、1日$3Mをユーザー獲得とPRに使ったと言われている。他社プラットフォームをお金で潰したケースも多々ある。2018年ではGoogle広告で$300M、インドだけで毎月$10M使っていた。2019年Q1ではFacebookのアンドロイド版アプリでは見られた13%の広告はTikTokだった。ピークは2018年9月で、Facebook配下のプラットフォームでアメリカで見られた広告の22%はTikTok関連だった。

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引用:Reuters

しかもこのようなインフルエンサー動画もTikTokのウォーターマークを入れて、TikTokの告知をしてくれていた。

InstagramはTikTokより2倍のユーザーがいるのにもかかわらず、合計利用時間はTikTokの方が上

初期のTikTokのアメリカの新規ユーザーの30日リテンションの数字は10%と言われていた(大体20%が「良い」アプリと分類されるが、SNSだともっと高いケースが多い)。これはおそらく最初のターケティングの問題でもあった。徐々に改善して、App Annieによると2019年初旬では28%〜40%の間にまで上がっていたらしい。

ByteDanceは多額なお金を使って多くの批判を受けたが、これも一つのネットワークを作る戦略である。InstagramもFacebookフィードを活用したからこそ新規ユーザー獲得ができた。以下グラフのように、50%〜75%のInstagramダウンロードはFacebook買収の後に来ている。特に買収直後のグロースはFacebookから来たユーザーが多かったのは間違いない。

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引用:MacStories

ByteDanceはFacebookみたいなプラットフォームがなかったので、ハイマージンな広告ビジネスが生む$7Bの売上とソフトバンク・ビジョンファンドからの$3B出資を受けて似たようなことをお金で解決できた。

そして他社プラットフォームのグロースが遅まっている中、TikTokのユーザー数と平均利用時間が爆発的に伸びている。このグラフを見ると、明らかにInstagramのダウンロードに影響を及ぼしている。

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引用:Wall Street Journal

さらに2019年1月と2020年4月のアメリカでの月次のリーチ数を見ると、Instagramの広告プラットフォームは1.2億人でフラット。

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引用:DataReportal

今のところはFacebookやInstagramのユーザー成長率を見て投資家は心配ではなさそうだが、今後は変わりそう。App Annieデータを見るとアメリカのユーザーはInstagramはTikTokより2倍のユーザーがいるのにもかかわらず、合計利用時間はTikTokの方が上回っている。ComScoreもTikTokの利用時間が2019年10月から2020年3月で93%増したと報道している。そして過去半年では利用時間が倍増したとも報道がある。

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引用:eMarketer

TikTokのダウンロードも2020年Q1でかなり加速している。しかも去年末あたりから広告費用を下げると発言しているので、もしかしたらコストを下げながらユーザー獲得ができているかもしれない。

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引用:Techcrunch

TikTokの成長振りは2019年のVidConでも明らかだった。いつもYouTubeインフルエンサーが行くイベントとして知られていたのが、2019年はTikTokインフルエンサーが評判だった。そして全TikTok関連のセッションは満員にお客さんが入っていた。

TikTokのYouTube 2.0へのカギは「音楽」と「Meme」

SNSを始めるには大体コンテンツの消費と制作の摩擦を減らす新しいコンテンツ制作ツール、もしくはコンテンツフォーマットが必要で、さらにクリエイターにソーシャルキャピタルを与えられるように仕組みが必要。上手くいけばグロースサイクルが作られ、ネットワーク効果が生まれる。TikTokのグロースサイクルは数字を見るだけでもちゃんと回っているのがわかる。

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引用:Financial Times

YouTubeは動画フォーマットの大きな成功事例で動画市場では大きなプレーヤーとして存在しているが、YouTubeのプロダクトは横型動画向け、いわゆるデスクトップとテレビ向けのプロダクトで、YouTubeクリエイターはスマホで動画編集をしない。このスマホファースト(縦型)、尚且つショートフォームの動画プロダクトにギャップがあった。このニーズを表しているのがSnapchatとInstagram Storiesだった。

そしてアメリカではMeme文化が進んでいて、今では若手層がMemeをコミュニケーションツール、時にはニュース情報を得るためのものとなっている。Memeの特徴としてはリミックスされることが多くて、一つのMemeがリミックスされるほどより世の中で受け入れられているMemeとなっている。例えば映画ロード・オブ・ザ・リングから生まれた人気Memeの「One does not simply」をGoogleで検索してもこれだけのバージョンが出てくる。

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引用:Google検索

Instagramが公開したデータによるとMeme投稿はMemeではない投稿と比べて7倍以上シェアされる。そしてReddit上では新しいMemeの人気度を予測するスレッドまで出てきている。

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引用:Reddit

TikTokは二つトレンドに乗っかって成長してきた。それはMemeとAirpods。Musical.lyを統合した時には最初はMusical.lyで人気だったリップシンク系のユースケースが多かった。2018年中旬から下旬でTikTokアプリを見ると、元々のMusical.lyコンテンツからVineっぽいコンテンツに進化していくのが見えた。そして使ってたGen Zはミレニアル世代が好む「完璧」なインスタ映えとは違く、より皮肉なジョークやリアルなものを好んでいたため、TikTokがフィットした。

Vineに近しい部分は多かった。Vineも若手層が皮肉なジョークを共有し合う場、そしてリミックスする場でもあった。

そしてVineユーザーのリミックス文化をスケールさせられたのがTikTok。TikTok(Musical.ly)のリップシンク編集ツールを使うと同じ音楽で動画をリミックス出来るようにした。TikTokの一つ重要なUIは動画内の曲ベースで検索が可能なところ。これはどの他社プラットフォームも出していない(一瞬Vineも同じような機能を出したが、すぐにシャットダウンした)。

タイミングも重要だった。TikTokがアメリカで人気になり始めてた時にはAirPodsが爆発的に売れ始めていた。2017年にはAppleは1,600万個のAirPodsを売り、2018年には3,500万個、2019年は6,000万個、2020年には1億個売ると言われている。AirPodsユーザーは音声付きのMemeを聞くのに最適なユーザー層だった。それで生まれたのが音声Meme。音声Memeの初期の有名事例はAdeleのSomeone Like Youと言う曲。

その他TikTokのMeme活用法について知りたい方は、以下ポッドキャストでTIkTokが作り上げたMemeからのソーシャルコマースの話をお聞きください!

Lil Nas XとアーティストのTikTok活用方法
Musical.lyのルーツが音楽にあった中、TikTokもそこを強調した。TikTok上で人気になった多くのMemeは音楽ベースでもあった。その中で最も有名なのはやはりLil Nas XのOld Town Road。

17週間連続でBillboard Hot 100の1位にランクイン。しかしこれはたまたまTikTokでバイラル化して伸びたのではなく、Lil Nas X自身がTikTokのリミックス文化を活用して伸ばした。

Lil Nas Xは音楽のキャリアをやるために大学を中退した。中退したものの、新しい曲作りにフォーカスしなかった。まずはTwitter上で友達作り、Memeの投稿をひたすらして、フォロワー数を3万人まで伸ばした。フォロワー数を伸ばした後に自分の音楽の投稿をすればバズると思っていたが、そんなに簡単に行かなかった。

「面白いMemeを投稿すると2,000リツイートされるが、歌を投稿すると10リツイートぐらいしかもらえない」-- Lil Nas X

それを見たLil Nas Xは戦略を変えて、SoundCloudのURLを出すのではなく、Memeに合わせた歌のプロモーションを考えた。

「短く、キャッチーで、面白くなければいけなかった」 -- Lil Nas X

その結果がOld Town Road。踊っているカウボーイと合わせてフォロワーに共有した。

その動画がバイラルになったので、Lil Nasはこれで新しいプレイブックを作った:
・Old Town Roadに合わせた
・短いバイラル動画
・曲のリンクは動画の下にリンクする

Twitterで広がり始めた曲がついにTikTokまで、そして爆発的に伸びてBillboardのカントリー・ミュージックカテゴリーに載った。

Lil Nasはカントリー・ミュージックのカテゴリーの競争率が他と比べて低いと知っていてわざとカントリー・ミュージックとリストしていた。その一週間後にBillboardがカントリー・ミュージックではないと判断し、ランキングから取り除いた。この判断がLil Nas Xにとって良い展開だった。これによって全米でニュースになり、2週間後にはBillboardの全体ランキングで1位になった。

この勢いをさらに加速するためにLil Nas Xは次に音楽業界のスターとOld Town Roadのコラボ(リミックス)曲を出した。Billboardのちょっと変わったルール上で、リミックス曲はオリジナル曲の再生回数としてカウントされる仕組みになっていた。

リミックス曲が出るたびに何百万と再生回数が増え、Old Town Roadのランキングを首位のままにさせた。17週間後、マライア・キャリーの記録を破った。5ヶ月前まで大学中退で銀行口座がマイナスだったと考えると、すごい成長。

Lil Nas X自身もこれはラッキーなことではなく、計画性がちゃんとあってここまで伸びたものとのこと。その一例がこちら:Old Town RoadがTwitterでバズり始めた一つのきっかけが一人の男性が馬の上に立ちながら馬が走っている動画。

この動画はいろんなバージョンが出てきたが、全ての動画はOld Town Roadが音声となっていた。

一番最初のこの動画は2018年12月24日に投稿されていた。そのTwitterユーザーに何故その動画を作ったかと聞いたところ、Lil Nas Xが彼にDMを送ってそのアイデアを提案したとのこと。しかもその動画を見て曲を検索すると知っていたLil Nas XはYouTubeとSoundCloud上で曲のタイトルを変更し、バイラル動画で入っている歌詞を追記した!

TikTokでもLil Nas XはTikTokを活用してチャレンジを作り、色んなユーザーがOld Town Roadに合わせてMemeを作り始めていた。

そして2018年からTikTokから生まれた人気曲が出てきたが、今はアーティスト側がリリース前にTikTokに曲の一部を出してバズらせている。ネットで有名ダンサーのToosieがDrakeから直接連絡もらって、まだタイトルが付いてない曲の一部を渡され、「ダンスを考えてくれないか?」と聞かれた。

それで出来上がったのが「Toosie Slide」で、それを踊るチャレンジが出てきた。

最終的にTikTokでヒットして、Drakeが音楽配信アプリで公開した。

これはDrakeだけではなく、多くのアーティストが一部公開をしてTikTokで流行らせてから公開する流れになり始めている。

TikTokは徐々にリップシンクからMeme、そして今ではコメディー、教育(チュートリアル)、アートなど様々なコンテンツに広げている。コンテンツ領域を広めるとターゲットユーザー層も拡大するし、TikTokにとってはユーザーの興味グラフを作れるようになる。これはByteDanceが今後YouTubeや他のSNSと対抗に戦うためには重要な要素となる。

TikTokの次の動きは?

TikTokの未来を知るには、Douyinの機能を見るのが一番良い。クリエイター向けのアプリなので、TikTokは今後クリエイターのマネタイズに注力すると思われる。アメリカではまだベータ版だが、今後リリースされる機能は動画内のEC機能。DouyinではAlibabaのTaobaoと連携して動画ショッピングが可能になっている。

アメリカではFacebookがShopifyと最近Shopsをローンチ。ByteDanceはこれを見てもしかしたらアメリカではローンチ日を早めるかもしれない。最近だと寄付用のステッカーをリリースしたが、これで少しずつユーザーにアプリ内で決済することや、クリエイターに投げ銭する行為を慣れさせることを目指している。投げ銭はライブ配信でよく見かけることですが、ByteDanceもTikTok内でライブ配信を始めている。

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引用:Alice Ophelia Twitter

TikTokはインフルエンサーマーケティングの価値を理解しているので、去年あたりからCreator Marketplaceをリリース。

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引用:Turner Novak Substack

まだベータ版だが、今のところSquareなどが使って自社プロダクトをプロモーションしているらしい。今後はセルフサーブの広告管理ツールを出すらしい。これをリリースすると、ByteDanceは唯一の中国含め全世界の広告セルフサーブプラットフォームとなる。

今後はブランドやクリエイターにAIで作られたコンテンツやエフェクトのレコメンドをするかもしれない。もしくはARフィルターを第三者が開発できるようにオープン化する可能性もある。最終的にはクリエイター向けの動画、音楽、EC、ポッドキャスト、解析、フィンテックなど、クロスプロダクトツールが出来上がるかもしれない。

TikTokを活用して新プロダクトのローンチ

ByteDanceは間違いなくTikTokのユーザー、コンテンツ、そしてAIアルゴリズムを活用して新しいプロダクトをリリースする。彼らの採用スピードを見るとそれが明らか。

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引用:Matthew Brennan Twitter

ユーザーと直接関係性を作り、そのネットワークを活用して新しいプロダクト、もしくはよりハイマージンなプロダクトを売り込む。これは特に新しい施策ではない。SNSですとFacebookがInstagramとFacebook Messengerで同じようなことをやっていた。過去記事でも話したが、ディスニーもDisney+の大赤字事業を活用してクルーズ船やディズニーランドへの年間パスを売り込もうとしているのと同じ。

TikTokはデータ収集ツールや広告のマネタイズプラットフォームだけではなく、トップオブファネル、いわゆるユーザーにリーチして他のプロダクトを売り込めるプラットフォームとしても認識しなければいけない。実際に中国ではTikTok内でByteDanceの新しいメッセージアプリのDuoshanをプッシュしてた。

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引用:Matthew Brennan Twitter

これからTikTokが出しそうなプロダクトを以下まとめました。

ロングフォーム動画
2019年中旬ぐらいからDouyinは15分動画のアップロードを数名のクリエイターにテストし始めた。ByteDanceは過去にVineのクリエイターが後々YouTubeへ移行したことを知っているので、それを避けるためにロングフォーム動画も試しているはず。

ByteDanceはNetflixの類似プロダクトであるXigua Videoを中国で運用している。現在は5,500万DAUで、一日の平均試聴時間は70分。

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引用:Xigua Videoホームページ

Netflixは一部データを活用してユーザーが何を見たいかを分かって映画・テレビ番組の制作をしているため、TikTokも同じことをやり始めてもおかしくない。最近だとXigua自体がBBCやPBS、そして子供番組の出版社などからコンテンツを獲得し始めている。そして直近では元Disney+のトップであるKevin Mayer氏をTikTokの新しいCEOとして採用。Kevin Mayer氏はDisney+を1年もたたずに5,000万ユーザーまで伸ばし、過去だとMarvel、Lucasfilm、Pixar、21st Century Fox、Club Penguin、Maker Studiosなどの買収を担当した。ByteDanceがこの領域に入るのはほぼ間違いないはず。

映画や著名IPの獲得もそうだが、TikTokはもしかしたら次世代メディアやGen Zに流行っているBratCrypt TVの買収に取り掛かるのが面白いかもしれない。そしてTikTok自体がインハウスのスタジオを作ってクリエイターと一緒に番組を作ることはやってもおかしくない。個人的にはこれはQuibiが本来やるべきことだと思っている。

音楽ストリーミング
実はByteDanceはインド、インドネシア、ブラジルで自社ストリーミングアプリのRessoを既にリリースしている。TikTokとSpotifyのUIを組み合わせたものとなる。こちらもTikTokと同様、コメント、制作、コンテンツ共有を強調していて、直接TikTokに投稿できるようにしている。そして歌詞を他社プラットフォームより強調しているのがポイント。TikTokはMeme・曲の文化をユーザーの頭の中に叩き込みたいので、音楽からMemeを作るために歌詞からインスピレーションを与えるために歌詞を前に出している。

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引用:Routenote

TikTokはさらにユーザーから好きな音楽のデータを取得できるし、さらにTikTokでよく聞く音楽をRessoに誘導させることもできる。今後は中国でも流行っているカラオケ・ライブ配信アプリなどもTikTok内に入れたりして、Spotify、Apple、WeSing、Kugouなどの競合と対抗する可能性もある。

今後TikTokが音楽のレーベル会社を作ってもおかしくない。

ゲーム
ByteDanceはゲーム市場に入り込むことについてはかなり発言している。ここ数年にかけて数社のベーム開発会社を買収していて、ByteDanceのゲーム部門は1,000人以上の従業員がいる。中国の旧正月時期の人気ゲームの3つがByteDanceからのゲームだった。そして3月に日本でも「ヒーローズコンバット」をローンチして1週間ほどアプリストアで1位だった。

ユーザーをソーシャル領域で囲い込んでゲームを売り込む戦略はTencentと非常に似ている。ByteDanceとしてはToutiao上のユーザーの多くがゲームをプレーしているのが分かっている。中国で最もスマホゲームの広告費を使う会社トップ100のうち、63社は広告予算の半分以上はToutiao上で使っている。こうなるとByteDanceは将来アプリ内課金、アプリ内広告、そしてセルフサーブ広告ネットワークを全部自社で保有するかもしれない。

フィンテック
中国ではスーパーアプリが流行っている中、その中でもフィンテックが最もマネタイズできるポイントだと思っている。中国ではないが過去だとスーパーアプリを目指しているGrabのCFOもGrabのフィンテック事業は本業である配車サービスの20倍の市場だと発言している。ByteDanceも同じく、個人・法人ローン、保険、ウェルス・マネジメント商品を2,300万人のユーザーに提供している。今後も決済やスマホのウォレットを提供してもおかしくはない。

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引用:Turner Novak Substack

教育
この領域はByteDanceのかなり重要なプライオリティになっている。今年だけで教育関連で1万人採用すると発言している。実際に何をするかは噂にしか出てないが、学校用のハードウェア、AI家庭教師、家庭教師ポータル、そして有料授業などの話が出ている。過去には中国の学生と海外の英語を教える先生をマッチングするサービスのGogokidをリリースしているが、トラクションがあまり伸びてなかった。初期従業員で元ToutiaoのトップのChen Lin氏は次の1億人DAUのプロダクトを探すことを命じられていて、それが教育かメッセージにあると言われている。

メッセージ
Tencentは競合プロダクトをWeChatや自社のAndroidアプリストアのYingYongBaoをブロックすることが有名。ByteDanceのSnapchat類似プロダクトのDuoshanも初月で500万ダウンロード達成した時にブロックされた。ByteDanceはDuoshan以外に今年新しくリリースしたFlipchatなどでメッセージ領域に入れるかを試している。

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引用:Techcrunch

最近だとアメリカのTikTokではアプリ内で他のユーザーにメッセージするように勧められていて、Douyinでは知らない人と一緒にゲームをプレーする機能も作っているので、メッセージはかなり興味があるように見える。

ニュースフィード
ByteDanceはニュースフィード系のプロダクトをこれからも試してFacebookやTwitterにプレッシャーを与えにいくと思われる。Toutiaoもそうだが、それ以外にはTopBuzzNews Republic、インドネシアのBaBe、インドではHeloなど。さらにインドではDaily Huntに投資して、2016年にはRedditを買収しようとしていた。キャッシュもかなり持っているので、今後はMusical.lyと似た形で買収からのユーザー獲得戦略に入るかもしれない。

エンタープライズ/B2Bソフトウェア
2019年にByteDanceはSaaSプロダクトのFeishuをローンチした。Feishuチームは1,700人いて、Slack、Microsoft Teams、Google Suiteの競合プロダクトである。メール、チャット、ビデオ会議、カレンダー、クラウドで資料のストレージなどの機能が含まれている。

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引用:Turner Novak Substack

ByteDanceはFeishuを最初は社内用に使っていた。ByteDanceは珍しく中国市場ではなく、アメリカ、ヨーロッパ、日本を初期マーケットとして挙げている。プロダクトの優位性はユーザーが読みやすいように自動翻訳、他国との時差調整を簡単に出来る仕組み、そして立替申請を簡単に出来るようにしているとのこと。

その他
ByteDanceはインドとアメリカでデータセンターを2019年から運用始めている。これは自社プロダクトようかもしれないが、もしかしたらクラウド・ホスティングサービスのリリースを考えているかもしれない。クラウドサービスとSaaSソフトウェアだと完全Microsoftの領域に入ってくる。そしてさらにライブ配信、検索、EC、電子書籍なども考えられる。検索を作ればGoogleのように検索とYouTubeのループを作れる。さらに2019年には中国で安いAndroidスマホをリリースした。これは「ByteDance OS」を作ろうとしているかもしれない。過去にはFacebookなども試して失敗した。

結論

ByteDanceはGoogle、Facebook、Instagram、Snapなどの競合に最もなり得るサービスかもしれない。過去にはあり得なかった中国とアメリカ・世界の市場を取りに行けて、デジタル広告でマネタイズできている。しかもいまだにTikTokからちゃんとマネタイズが出来ていないのに$14B〜$20Bの売上を保てている、非常にパワフルな会社である。

この会社を作り上げられたのは創業者が考えたソーシャルグラフが必要ないSNS、コンテンツ・広告アルゴリズム、そしてTikTokにおいては画期的なUI。このループは今のところ、ほとんどの会社は止められなさそう。そして裏側ではどんどんプロフィールデータ、ソーシャルグラフ、興味グラフ、コンテンツグラフをデバイスID毎にデータ収集している。このエンジン、グロースサイクルを聞くと恐怖感しか思い浮かばない。

もちろんTikTokの人気度が下がってダメになるかもしれない。ByteDanceの他のプロダクトも全く上手くいかないかもしれない。ただ、万が一TikTokがダメになっても、TikTokで育った世代が期待する編集方法、ストーリーの伝え方を見るべき。ジャンプ、ワイプ、音楽を利用したトランジションが今までの動画とは圧倒的に速い。間違いなくTikTokの影響で今の若手層のコンテンツ・エンタメに対しての価値観、期待値が変わった。この次世代ユーザーが次の消費者になると考えると、今のうちにTikTokに入り、何に引き寄せられているかを調べるべきであると思っている。今だとTikTokはGen Zのプラットフォームだけではなく、ミレニアル世代も入っている。この層に何かしらのプロダクト・サービスを売り込みたい人たちはTikTokを見なければいけないプラットフォームになっている。

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Written by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)

引用:

https://turner.substack.com/p/the-rise-of-tiktok-and-understanding
https://medium.com/@anthonymcguire/old-town-road-the-best-entertainment-case-study-of-2019-391e6e59f064
https://www.buzzfeednews.com/article/laurenstrapagiel/2019-tiktok-songs-viral
https://www.zackhargett.com/tiktok/
https://www.theinformation.com/articles/the-10-ways-tiktok-will-change-social-product-design
https://newsroom.tiktok.com/en-us/tiktok-top-100-2019
https://www.rollingstone.com/pro/features/songs-are-becoming-hits-on-tiktok-before-theyre-even-released-976819/
https://fortune.com/2018/07/16/fintech-uber-grab-payments/
https://www.scmp.com/tech/start-ups/article/3074480/tiktok-owner-bytedance-scores-video-game-hit-japan-sharpening
https://www.abacusnews.com/games/bytedances-move-gaming-already-paying/article/3049072
https://36kr.com/p/663511590710916
https://technode.com/2019/11/07/bytedance-launches-consumer-lending-app-on-android/
https://www.scmp.com/tech/start-ups/article/3074480/tiktok-owner-bytedance-scores-video-game-hit-japan-sharpening
https://www.wsj.com/articles/tiktoks-owner-makes-push-to-grow-globally-11582194600
https://newsroom.tiktok.com/en-gb/introducing-tiktok-donation-stickers-with-british-red-cross-and-help-musicians
https://techcrunch.com/2017/11/09/chinas-toutiao-is-buying-musical-ly-in-a-deal-worth-800m-1b/
https://www.theverge.com/2018/8/2/17644260/musically-rebrand-tiktok-bytedance-douyin
https://www.forbes.com/sites/ywang/2017/05/26/jinri-toutiao-how-chinas-11-billion-news-aggregator-is-no-fake/#2690dd294d8a
https://www.youtube.com/watch?v=raIUQP71SBU
https://www.nytimes.com/2020/05/07/style/memers-are-taking-over-tiktok.html
https://www.nytimes.com/2020/02/22/nyregion/inside-the-new-york-city-bodegas-going-viral-on-tiktok.html
https://www.nytimes.com/2020/02/13/style/the-original-renegade.html
https://www.businessinsider.com/tiktok-owner-bytedance-plans-to-launch-music-streaming-ft-2019-11
https://www.wsj.com/articles/tiktoks-videos-are-goofy-its-strategy-to-dominate-social-media-is-serious-11561780861
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-05-20/tiktok-owner-s-value-surpasses-100-billion-in-private-markets
https://www.youtube.com/watch?v=wTyg2E44pBA&feature=youtu.be

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