【解説】トヨタ社長の「記者会見」から読み取るべきこと

2020/5/24
今、最も「顔が見える経営者」として注目される、トヨタ自動車の豊田章男社長。その知られざる実像に迫った一冊、『豊田章男』(東洋経済新報社)が話題だ。
著者である経済ジャーナリストの片山修氏が、章男氏の「リーダーシップ」の核心を解き明かす本連載。最終回では、章男氏が見通す「未来図」に迫る。
【新】トヨタ社長に学ぶ「強いリーダー」の条件

「バトンタッチ」への覚悟

──片山さんは、豊田章男氏の「死角」は、後継者選びにあると指摘されていますね。
片山 章男氏のカリスマ性は今や突出しています。後継者問題はトヨタ最大の死角だと私は考えています。
バトンタッチの時期も、すでに射程圏内に入ってきているでしょう。数年以内、遅くとも5年以内には社長の交代があると考えられます。章男氏のご子息はまだお若いですから、今後しばらくトヨタではサラリーマン社長の時代が続くことになります。
今の章男氏は、そのときに備えてあらゆる手を打とうとしています。
サラリーマン社長になれば、なかなか自分のように責任を背負うことはできない。だから、大きな決断は今のうちに全部自分がやっていくと言っています。
(Andrej Sokolow/picture alliance via Getty Images)
2年前のCES(コンシューマーエレクトロニクスショー)で、章男氏が「トヨタは(ハードメーカー、自動車メーカーの枠を超えた)『モビリティカンパニー』になる」と発言したときは、世界中に大きな衝撃が走りました。
世界トップの自動車メーカーが、自ら“脱自動車メーカー”を宣言するなど前代未聞。当時の副社長たちにとっても、その発言は“寝耳に水”だったと言います。
つまり、これほど大きな決断は自分にしかできないという自負と覚悟が、章男氏にはあるわけです。
さらに、今年のCESでは、東富士の山麓に実証都市「ウーブン・シティ(Woven City)」を建設し、自動運転をはじめとするテクノロジーを実地で検証する場にするという構想を発表しています。これもまた、サラリーマン社長では到底描けないような「大きな絵」だと言えます。
(AP/アフロ)

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