[東京 21日 ロイター] - 森雅子法相は21日、黒川弘務東京高検検事長が辞表を提出し、22日の閣議での承認を受けて正式に辞職すると記者団に発表した。緊急事態宣言下に2度にわたり記者と金銭を賭けたマージャンをした事実は極めて遺憾であるとして、法相は同日法務省の調査結果を安倍晋三首相に報告した。後任は速やかに決めるとした。

安倍政権は、世論の強い反発を受けて検察庁法改正の今国会成立を見送ったばかりだが、政権に近いとされる黒川氏の不祥事に野党は反発、国会での説明を求め22日以降の審議に応じない構え。新型コロナウイルスに対する2020年度第2次補正予算の審議が急がれるなか、与野党対立が激化する可能性がある。

首相は検察庁法改正とセットで見送られた公務員の定年延長法案についても「国民の理解を得ないと進めることができない」と述べて見直しに含みを持たせた。

<森法相、定年延長で「責任痛感」>

森法相は「法務省の調査結果を安倍首相に報告した。黒川氏は東京高検検事長の立場にありながら、緊急事態宣言下の5月1日と13日の2回にわたり報道機関関係者3人とマンションの一室で会合し、金銭を賭けてマージャンをしていたことが分かった」とし「この行為は誠に不適切というほかなく極めて遺憾。これらの事実関係が認められたことから黒川検事長に対し監督上の処分として訓告とした」とコメントした。

ことし1月の黒川氏定年延長に関して「責任を痛感」とも述べた。

20日に週刊文春のニュースサイトが黒川検事長は新聞記者と賭けマージャンをしハイヤーで送迎された疑いがあると報道した。

報道によると立憲民主党の安住淳国対委員長は21日記者団に対して、黒川東京高検検事長が辞意を固めたことについて、国会内で記者団に「黒川さんの(定年)延長は余人をもって代え難いと言ってきたのは安倍首相だ。本来だったら総辞職に値する」と語った。

<賭けマージャン、ハイヤー、三密と自粛無視で満貫>

報道は20日時点で一部漏れ伝わっており、野党側が「言語道断だ。事実なら辞任に値する」(立憲民主党の蓮舫副代表)などと強く反発したのみならず、公明党の石田祝稔政調会長も記者会見で「事実であれば職務を続けられる話ではない」と強く批判していた。公明党の伊佐進一衆院議員も同日のツイッターで「本当なら、賭けマージャンにハイヤー、三密と自粛無視。それだけで満貫です」と厳しく批判した。

賭けマージャンそのものが違法であるのみならず、緊急事態宣言を受け政府が国民に外出や夜の会食などの自粛を要請している最中であることも批判を高めた。

安倍政権は今年1月末、2月7日で63歳の定年を迎える黒川氏について8月7日までの勤務延長を閣議決定した。政府・与党が今国会での成立を見送った検察庁法改正案は検察官の定年を引き上げ、内閣の判断で幹部の定年を最長3年延長できる特例規定を盛り込んでいる。政府は否定しているが、法案審議は黒川氏の定年延長を決めた直後に始まったため野党側は法改正が政権による恣意的人事介入を招くものとして批判していた。

*内容を追加しました。

(竹本能文※ 編集:高木匠)