【眞鍋亮平×須藤憲司】「BTC人材」の奪い合いが始まる

2020/5/25
7月に始動する「NewsPicks NewSchool」は、「クリエイティブ×ビジネス×テクノロジー」がコンセプトのひとつ。NewSchoolで「広告クリエイティブ」プロジェクトを担当する眞鍋亮平・電通 統括クリエーティブ・ディレクターと、「DX人材養成」を担当するKaizenPlatformの須藤憲司CEOが、広告とクリエイティブの未来を語り合う(全3回)
【眞鍋亮平×須藤憲司】「クリエイティブ×DX」の可能性
リクルートのすごさは「挑戦量」
眞鍋 須藤さんが在籍していたリクルートは、最短ルートで新規事業を成功させるための方程式が確立していますよね。
方程式があると、成長スピードが増す一方、傍流が生まれづらいようにも思うのですが、そのあたりはどう考えますか?
須藤 リクルートは僕が見た範囲で言うと、最も数を打っているんですよ。
僕は創業50年くらいの時に在籍していましたが、50年間で新規事業への投資や出資を1000件くらいやっていました。
そのうち、爆発的に儲かった案件が3件、投資を回収できた案件が30件くらい。要はすさまじい数の新規事業を張っているんです。
須藤 憲司/KaizenPlatform 代表取締役
2003年に早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。その後、2013年にKaizen Platformを米国で創業。現在は日米2拠点で事業を展開。著書に『ハック思考』『DX入門』
眞鍋 失敗してもいいから頑張れと。
須藤 そうです。その中から本流になるような事業が生まれてくる。そして、本流に挑戦するような傍流がまた出てくる。基本はそういう矛盾を抱えたメカニズムです。
この矛盾がなくなると、逆に弱くなる。あまりにも仕組みで最適化してしまうと、エコシステム全体として機能しなくなるんです。
眞鍋 属人的な変なものが生まれづらくなりますよね。
眞鍋 亮平/電通 統括クリエーティブ・ディレクター
中長期で展開する耐用年数の長いブランドアドと、短期で結果を出すコンバージョンアドの両方を得意とする。マス広告やデジタルアド、PR、OOH、イベント施策の最適な掛け合わせを考える企画や、コンテンツをハブにした参加型の広告キャンペーンに多数携わる。主な仕事は、大塚製薬「ポカリガチダンス」「ポカリNEO合唱」/YouTube「好きなことで、生きていく。」など。
須藤 シリコンバレーも、エコシステムの中に矛盾をうまく内包しています。
GoogleやFacebookも保守本流になっていますが、新しい会社を買収しながら、自らのエコシステムの中に矛盾をつくっていっています。
僕は基本的に、メディアや広告代理店というのは、エコシステムによって再生するんだとずっと思っています。
そのエコシステムをどうやってデザインするか、矛盾をどうやって内包するかが、大事なキーワードです。
銀行や証券会社の人と話していても、「自分たちのエコシステムの中に矛盾をなかなかつくれなかった」と異口同音に言いますからね。
眞鍋 今まではそれをやらなくてもすんでしまった面もありました。でも今、山が動き始めたという感じですよね。
流行を継続できる人は少ない
――なぜエコシステムの中に矛盾をつくれない企業が多いのでしょうか?
須藤 ひとつのネックになっているのは、レガシーなITシステムです。
本当は、これからのビジネスモデルを考えた上で、新たなシステムを考えないといけないのですが、今のシステムを前提として引っ越ししようとするから、失敗してしまう。
眞鍋 ITシステムの問題はありますが、一方で、レガシーな事業に残っている能力やスキルもありますよね。
そこを生かして、うまくDXと掛け合わせたら、意外と面白いことが起きるチャンスはあるのではないかと。
須藤 そうだと思います。
大事なのは、今持っているケイパビリティがこれからのビジネスモデルに持っていけるかどうかの見極めです。今までの能力が全く必要なかったら、単なる負債になってしまいます。
【須藤憲司】DX成功の鍵は「社内の実力者」と「小さな成果」
例えば、コンテンツそのものを作る能力がトップクラスなのであれば、それを商売の軸にしたほうがいいですよね。
今までは、流通のところで儲けてきたため、コンテンツが過小評価されている面があるかもしれません。
今は皆がチャンネルを持てる時代なので、流通の重要性が相対的に弱まっています。
その結果、コンテンツ制作力がより重要になるんだとしたら、「サブスクリプションで課金したほうがいい」という発想になってきますよね。
眞鍋 今後は、コンテンツを作れるクリエイティブディレクターがサブスクリプションで儲けるビジネスは有望だと思います。
だからこそ、コンテンツを作れる人に価値がある。とくに、中長期で継続できる人に価値があります。
一瞬の流行を作れる人は結構いるのですが、その流行を継続できる人は意外と少ない。
だからこそ、そこに価値が出るはずですし、放送局や広告会社は、いかにコンテンツ価値をサブスクでマネタイズできるかがますます重要になってくると思います。
UXの独裁者が必要
須藤 実は、コンテンツの作り方もたくさんありますよね。
タレントという軸もあれば、商品という軸もあれば、なんでもコンテンツになります。
番組もあるし、ニュースもある。それをうまく掛け算して、ハイブリッドさせていく時代になってきています。
眞鍋 メディアのようにコンテンツを作る企業の場合、コンテンツ自体がプロダクトです。
そのため、広告コミュニケーションに力を入れるよりも、コンテンツそのものが一番のコミュニケーションになる可能性があります。
今後は広告会社も単にCMを作って枠を売るだけでなく、番組やコンテンツ作りが主戦場になってくるだろうなと思っています。
――コンテンツプロデュースとマーケティングを同じ人がやったほうが、統一感が出ていいのかもしれないですね。
眞鍋 同じストーリーを通すことができますからね。
ただし、一人で全部やれるのが理想ではあるのですが、それはすごくリソースがかかりますので、必然的にクリエイティブディレクターがどんどん不足することになります。
だからこそ、今回、「NewsPicks NewSchool」で「広告クリエイティブ」プロジェクトを立ち上げることにしました。
須藤さんも「DX人材が不足している」と感じているからこそ、「DX人材養成」プロジェクトを手掛けるわけですよね。
クリエイティブ側もDX側もプロが足りません。
須藤憲司氏、豪華ゲストと学ぶ「DXを成功に導く“真のノウハウ“」
須藤 ウェブサービスにおいてプロダクトマネジャーといわれる人たちは、トヨタで言うと、主査ですよね。
要するに、クリエイティブディレクターでも、ブランドマネジャーでも、プロダクトマネジャーでも、役職名は何でもいいのですが、プロダクトやUXの王様が必要なんですよ。
独裁者がいて、その人が決めるというふうにしないとうまく機能しません。
【須藤憲司】withコロナの時代を勝ち抜く「ハック思考」を伝授しよう
今は、PL責任を持っていないクリエイティブディレクターやブランドマネジャーもいますが、それは本来あってはならないことです。
PL責任を持たないマネジャーはどこか迫力に欠けますよね。
今は、「クリエイティブ×DX×ビジネス」の領域に価値がよってきているので、それを横断的にマネジメントしないといけないのですが、それができる人材がすごく欠けています。
「BTC人材」になる方法
――そうした人材の呼び名がほしいですね。
須藤 Takramの田川欣哉さんは、ビジネス(Business)とテクノロジー(Technology)とクリエイティブ(Creative)がわかる人材を「BTC人材」と呼んでいますが、すごく共感します。
BTC人材になるための山の登り方はいろいろあります。
クリエイティブディレクターから始めて、テクノロジーやビジネスを学んでもいいですし、ビジネスの人がクリエイティブとテクノロジーを学んでもいいですし、テクノロジーの人がクリエイティブやビジネスを学んでもいい。
眞鍋 この3つのハイブリッドになるのは、相当高い山なんですよね。だからこそ、そこまで登れた人は、相当すごい仕事ができますよね。
須藤 逆に言うと、BTC人材をどれだけ抱えられるかが、企業のHR戦略の核になります。これからは明確に、BTC人材の奪い合いになりますよ。
眞鍋 社内で育成するのも難易度が高いですね。
須藤 だから僕は、1人の人物に3つを担わせるのではなく、うまくチームを組んでかけ合わせるのがいいと思っています。
眞鍋 背中を預けられるプロ同士で組むということですよね。
須藤 そうです。ただ、今は、この3つの世界がめちゃくちゃ離れてしまっているんです。もう隣接すらしていない。
眞鍋 もう会わないまま終わるみたいな。
須藤 そうです。この距離を縮めて、グッと近づけていけると、いいんじゃないかと。
眞鍋 まずは3領域のプロ同士が背中を預けあって、同じ目的を設定して、ブランドの定義を決めるだけでも、だいぶ効率がよくなりますね。
須藤 その意味でも、これからのテーマは越境じゃないかと思っています。
眞鍋 私も須藤さんと一緒に仕事したい理由もそこにあって、DXのところを見れるようになりたい。
そうすると、またひとつ自分の見える領域が広がるなと。
須藤 僕も基本は、ビジネスとDXの人なので、クリエイティブはまだあんまりわかっていません。これまで優秀なクリエイターと組むことで補完してきました。
自分で全部を持つのは難しいですが、うまく組めばいい。それができるかが、これからのカギじゃないでしょうか。
眞鍋 越境を面白がれる人にとっては、今はすごくチャンスですよね。
須藤 僕もめちゃくちゃそう思っています。
(写真:是枝右恭、デザイン:九喜洋介)
2020年7月よりプロジェクト型スクール「NewsPicks NewSchool」を開校。その中で、眞鍋亮平氏の「広告クリエイティブ」プロジェクト、須藤氏の「DX人材養成」プロジェクトをスタートします。詳細はこちら