新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本政府は2020年4月7日、史上初めてとなる緊急事態宣言を7都府県に発令した。これによって日本の消費環境はどう揺さぶられたのか。小売りやサービス業などに与えた影響と変化について、ビッグデータから解析していく。

匿名加工された約100万人分のJCBクレジットカードの取引データなどを活用して国内の消費動向を調査する「JCB消費NOW」。毎月そのデータを読み解く本連載の第2回は、緊急事態宣言の消費への影響だ(写真/Shutterstock)
匿名加工された約100万人分のJCBクレジットカードの取引データなどを活用して国内の消費動向を調査する「JCB消費NOW」。毎月そのデータを読み解く本連載の第2回は、緊急事態宣言の消費への影響だ(写真/Shutterstock)

 ジェーシービー(JCB)とナウキャスト(東京・千代田)が提供している指数「JCB消費NOW」のデータを見ると、2020年4月7日に発令された新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が日本の消費環境に大きな影響を与えたことが分かる。JCB消費NOWは、JCBが無作為に抽出した約100万人分のクレジットカードの決済や属性などのデータを個人等が特定されないように匿名加工をして、両社が共同でクレジットカードデータから現金支出を含めた国内の個人消費全体の動向を調査するものだ(i)

 緊急事態宣言の対象は、当初は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に限定された。本項で解析をするデータは4月1日から15日までのものなので、緊急事態宣言の影響が含まれている(ii)

 旅行産業が前年同期比ー91.9%と大幅に減少しているのを筆頭に、宿泊が同ー75.3%、外食が同ー51.5%、交通がー38.3%と軒並み前の期から減少幅を大きくしている。娯楽もー50.9%と大幅に下落しているが、内訳を見ると遊園地が前年同期比ー97.2%、映画館が同ー93.3%などと壊滅的な結果となっている。

 商品や飲食料品の小売業の消費動向を見てみると、営業時間の変更や一部店舗の休業を行う百貨店が前年同期比ー20.8%と減少幅を拡大。コンビニが同ー1.1%となる一方で、スーパーは同+25.3%と非常に大きな伸びを示している。昨年10月の消費増税の際は、キャッシュレス決済のポイント還元の影響もあり、小売業態ではコンビニが独り勝ちという状態だったが、コロナ禍においては密閉空間を避けたいという気持ちから、店舗面積が広く、品ぞろえの面でも商品数の豊富さに分があるスーパーに追い風が吹いている。

 また、興味深いのは酒店の消費指数が伸び続けていることである。これは在宅勤務が増え、居酒屋の利用が制限されるなかで、Zoomなどを利用したオンライン飲み会をする人が増えていっていることの証左だろう。

JCB消費NOWのデータ推移(前年同期比)
JCB消費NOWのデータ推移(前年同期比)
スーパーと酒店に特需(出所/「JCB消費NOW」のデータを基にナウキャストが作成)
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