【安永竜夫】オンライン出張で問題なし。兆単位の商談を締結

2020/6/26
現在、世界65の国と地域で事業を展開。連結従業員数は約4万5000人。巨大商社、三井物産のトップが安永竜夫社長だ。社内序列で32人抜きという異例の抜擢を受け、2015年、三井物産史上最年少で社長に就任。1年目の決算では創業以来初となる赤字に転落したものの、翌年には見事にV字回復を成し遂げた。
主に化学や発電所などのプラント事業畑を歩み、担当した地域は五大陸を制覇。舞台は砂漠かジャングルかツンドラか。そうした過酷な地域で、ハードな交渉をまとめ上げ、いつしかタフネゴシエーターへと成長。
三井物産には「人が仕事をつくり、仕事が人を磨く」という言葉がある。安永社長は数々の修羅場体験をくぐり抜ける中で、デリバラビリティ(Deliverability)、すなわち想定通りに結果を出せる力を獲得していった。その仕事人生を振り返る。(全7回)

「世界10周」目前でコロナ

これまでの会社人生を振り返ると、10代の頃の念願がかなって世界中を飛び回る毎日でした。
入社3年目、台湾への語学研修留学を経て中国、インドネシアを担当。29歳で米国に転勤、北中南米担当を経て32歳で世界銀行へ出向。帰国後はアジア・オセアニア、続いてロシア・欧州、さらには中近東・アフリカまで。担当した地域は五大陸すべてに至ります。
安永竜夫(やすなが・たつお)/三井物産 社長
1960年愛媛県生まれ。83年東京大学工学部卒業、三井物産入社。主に化学や発電所などのプラント事業畑を歩む。経営企画部長、執行役員機械・輸送システム本部長を経て2015年4月から現職。当時、上席の役員32人を飛び越え、社長に抜擢され注目を集めた。
社長になってからも年間約120日は世界中の現場を飛び回っていました。時差ボケをものともせず、議論や交渉をします。ちなみに昨年、飛行機で飛んだ距離を調べてもらったら地球9.5周分でした。
年初の抱負は「世界10周」。1月、2月の頭までは欧州に行ったり、アジアを回ったりしていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、それ以降はぱったり。2月にシンガポールと北海道に行ったのが最後になりました。
そんなわけで劇的に生活習慣が変わりました。おかげでこの3カ月ぐらいすこぶる体調が悪い(笑)。私にとって飛行機の中は安息の地だったのだなと実感します。機内が一番よく眠れるし、くつろげた。
(写真:Bertlmann/iStock)
顧客との直接的な接点が減っていることに関しては、これではいかんなと思いつつも、一方で、在宅でも十分仕事ができるじゃないかというのが、この2カ月の率直な感想です。

オンライン出張2カ月で40回

今、私は世界中に“オンライン出張”をしています。大きな拠点から始めて、比較的小さな拠点にまで順々に回っています。