[シドニー 8日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は8日に公表した四半期金融政策報告で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で豪経済は過去最大の縮小に直面しているとし、雇用や所得を支援する方針を示した。

金融、財政両面の支援にもかかわらず、豪経済が2020年前半に10%縮小するとし、30年ぶりの景気後退を予想。通年では6%のマイナス成長になるとの見通しを示した。

失業率は6月までに10%まで上昇し、2021年を通じて約7.5%にとどまると予想した。インフレ率については4─6月期にマイナスに転じた後、年末までに小幅なプラスに回復するとの見通しを示した。

新型コロナ対応の封鎖措置で経済は大打撃を受け、豪中銀は緊急利下げや無制限の量的緩和策を、政府も大規模な景気・雇用支援策を実施した。

中銀は、数カ月より先の景気回復のペースや時期は非常に不透明と指摘した。

新型コロナの影響で企業も個人も資金繰りに窮している。オーストラリア銀行協会(ABA)によると、これまでに少なくとも2000億豪ドル(1301億2000万米ドル)に上る銀行融資の返済が猶予されている。

ロウ総裁は、雇用や所得、企業の支援に向けて可能な措置を講じるとあらためて表明。声明で「このような異例な状況の中、国民の経済的福祉を推進する理事会の任務に沿って、豪中銀は景気回復に向けた架け橋を構築する上で引き続き役割を担う」と述べた。

また、社会的距離を確保する規則が「やや早めに」緩和されれば、より速いペースの回復も期待できると指摘した。

モリソン豪首相は8日、感染の抑制継続を前提に3段階に分けて7月までに経済活動を完全に再開する計画を発表した。

豪中銀のベースライン・シナリオは、失業率が7.5%にとどまり、基調インフレ率は中期的目標の2─3%を下回るというもの。このことから、政策金利は当面、過去最低水準に維持するとみられる。

一部エコノミストは、2021年に景気が持ち直するという中銀の予想は楽観的と指摘する。

RBCのエコノミスト、スーリン・オング氏は、失業率の上昇、時限的な所得支援措置の縮小、移民の純減、その他多くの構造問題を考えると回復シナリオに慎重姿勢を示す。そのうえで、新型コロナ後の支出や貯蓄行動の恒久的な変化など「新常態」がどんなものか模索していると述べた。

*内容を追加しました。