[ロンドン 7日 ロイター] - イングランド銀行(英中銀)は7日、政策金利と量的緩和(QE)の規模を据え置くと発表した。市場の予想通り追加緩和を見送ったが、新型コロナウイルスの感染防止のための封鎖措置の影響で今年は約300年ぶりの大不況を予想し、必要に応じて追加措置を講じる方針を示した。

政策金利は過去最低の0.1%に、債券買い入れ目標は、国債6250億ポンド、社債200億ポンドの合計6450億ポンドにそれぞれ維持した。量的緩和については、ソーンダーズ委員とハスケル委員が1000億ポンドの拡大を主張した。

ベイリー総裁は「経済見通しがどうなろうと、長期的な繁栄と国民のニーズに応えるうえで不可欠な金融面での安定に向け、中銀は必要に応じて行動していく。これはわれわれの揺るぎないコミットメントである」と述べた。

また、政府の封鎖措置緩和方針が一段と明確になるであろう6月に、債券買い入れプログラムと共にどのような政策が必要なのかを検討すると指摘。現時点では「積極的な」債券買い入れペースを維持することが適切であるとした上で、封鎖緩和やそれに伴う経済への影響および政府の借り入れニーズなど「今後数週間でどのような情報が出てくるのかを確かめるのは理にかなっている」と語った。

英中銀は、標準的な予想に代わり、政府が6月から9月の間に封鎖措置を徐々に解除するという「例示的シナリオ(illustrative scenario)」を設定。そのシナリオに基づき、4─6月の国内総生産(GDP)が25%減、失業率は9%に跳ね上がると予想した。

2020年のGDPは14%減少と、「非常に大規模な金融・財政刺激」にもかかわらず、自然災害や戦争に見舞われた1700年代初め以来の大幅な落ち込みとなる見込み。しかし、封鎖措置の解除に伴い21年は15%増へと急回復を遂げるとみている。

ベイリー総裁は、経済が今後回復していくと想定するが、そのスピードは世界金融危機後の回復よりも速いとの見方を示した。

エコノミストの中には、世界金融危機からの回復が当初の予想よりかなり時間を要したこともあり、中銀が予想するように急速に回復するか疑問視する向きもいる。

モルガン・スタンレーのジェイコブ・ネル氏は「2020年の予想は信頼できるが、21年の回復予想は、あまり納得できない。われわれの予想は慎重で、成長率やインフレ率はより低く、赤字は拡大、中銀の追加措置を見込む」と述べた。

英中銀は3月に量的緩和目標を2000億ポンド拡大した。エコノミストらは、買い入れ目標に達する前に再び拡大すると予想。来月にも拡大するとの見方が多い。

新型コロナウイルスの感染防止のための封鎖措置の影響に対応し、英政府はすでに約1000億ポンドの対策を打っている。

<シナリオ「甘い」との懸念も>

英中銀は、インフレ率は向こう数カ月、中銀の目標の半分の1%を下回るとみるが、最近の経済データは需要が非常に低水準ながら安定したことを示唆するとしている。

今回の金融政策委員会の議事要旨によると、委員からは、封鎖措置が解除されても、市民は通常の生活に戻るのを警戒する可能性があるとして、例示的シナリオが楽観的すぎるリスクがあるとの意見があがった。

労働者は自分の仕事のことを心配し、企業もリスク回避姿勢を強める可能性がある。

議事要旨は「ただ今回は家計や企業を支援する点で金融システムは世界金融危機の時と比べてはるかに良好な状態にある」としている。