幸せな仕事人生を送るためのたったひとつの方法とは

2020/5/11
私たちビジネスパーソンは、人生の多くの時間を仕事に費やしている。できればやりがいが感じられて、誰かの役に立つことがしたい、つまりは「仕事によって幸福度を高めたい」と考えるのは当然だろう。
ビジネスパーソンの幸福度の向上に向けて動きはじめたのが、4月に社名変更を行い、コーポレートビジョンを「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める」とした「Hajimari」だ。これまでHajimariは、「ITプロパートナーズ」として「自立」を目指すIT人材のキャリア支援と、人材不足に悩む企業のマッチングを行い、急成長してきた。
なぜ今、改めて「幸福」にフォーカスするのか。ビジネスパーソンが幸せになるために、なぜ「自立」が重要なのか。Hajimariの取り組みを追った。

「熱意あふれる社員」はわずか6%という衝撃

米国の人材コンサルティング企業ギャラップ社の調査では、日本における「熱意あふれる社員」の割合はたったの6%だ。
衝撃的な結果だが、「僕は納得できる数字です」と言うのは、Hajimari(旧:ITプロパートナーズ)代表の木村直人氏だ。
新卒で大企業に就職したものの、周りは誰一人楽しそうに仕事をしていなかった。あるとき同期が「こんなつまらない毎日が続くなら、40年タイムスリップして、65歳になりたい。そしたら定年になって、やっと俺の人生が始まるんだ」とつぶやいた。
「ひどい話ですよね(苦笑)。でも、僕も同じ気持ちでした。
ここにいちゃいけないと、覚悟を決めて転職した2社目は一転してベンチャー。当時は誰も知らない会社で、給料も福利厚生も圧倒的に1社目のほうがよかった。でも、僕も周りも『自分たちはすごいサービスをつくっているんだ!』と、毎日の仕事が楽しくて仕方なかったんです。
そういう経験から、ビジネスパーソンの『幸せ』に対して何かできることはないか、ずっと考えてきました」(木村氏)
経済産業研究所による幸福に関する調査(「幸福感と自己決定―日本における実証研究」 経済産業研究所 2018年)でも、「自己決定できること」が「所得」や「学歴」よりも幸福感に強い影響を与えることがわかっている。
自分で人生の選択をすることが、選んだ行動の動機づけとなり、同時に満足度を高める。木村氏の例からもわかるように、それが「幸せ」につながるのだろう。
出典:経済産業研究所「幸福感と自己決定―日本における実証研究」2018年
もちろん、「高い年収」「会社の知名度」「福利厚生」「ライフワークバランス」など、世の中的な「いい会社」の条件はとても重要だ。しかし、一時的に給料が安くても、自分の成長のために、会社に泊まり込んででも働きたいという人もいる。
つまり、人生における仕事の位置づけや幸せの源は、それぞれの価値観によって大きく異なるのだ。

なぜビジネスパーソンの「自立」が「幸福」に影響するのか

「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める」。これは、木村氏が代表を務める「Hajimari」のコーポレートビジョンだ。
「私たちの考える『自立』とは、以下の2つを満たすことです。
自分の人生の主導権を握ることが、幸福への足がかりになります。自分が信じる道を選ぶことがその第一歩。そして自分の道を選んだら、その道を正解にできるだけの実力をつけて、自分が選んだ人生を正解にしていく。
そういう『自立した人材』の、新しい人生のはじまりをサポートするのが『Hajimari』なのです」(木村氏)
Hajimari はこれまで、「ITプロパートナーズ」として、起業や独立にチャレンジしたい優秀なIT人材=「ITプロ」と、優秀なIT人材の採用に悩む企業をマッチング。それによって、「ITプロ」が起業、独立後にすぐ案件を獲得できる環境をつくり、彼らの自立支援を行ってきた。
ユーザー(ITプロ)は、週に2、3日のクライアントの案件をこなし、直近のマネタイズを実現する。それと並行して事業を立ち上げることで、資金難に陥ることなく事業を軌道に乗せられる、という仕組みだ。
登録しているプロは3万5000人。書類選考だけでなく、面談によるスクリーニングを行うというハードルの高さながらも、毎月、新規登録は1000人以上。利用企業も2500を越えた。
「なかには、すでに数億円の資金調達をして上場直前の企業にまで成長させた人や、創業から2年で大規模なバイアウトに成功する人たちも出てきています」と木村氏。
そうした実力の持ち主だからこそ、企業の即戦力としてwin-winの関係が築けるというわけだ。
Hajimariは、「挑戦する人」をサポートするITプロパートナーズという事業によって、人材不足に悩む企業だけでなく、ビジネスパーソンの幸福を支え続けてきたとも言えるだろう。
さらに、人材マッチングの枠を超え、起業家支援ビジネスコンテスト『HATCH』を主催。所属するITプロが立ち上げたスタートアップへの出資などもスタートしている。
「これからも、何かを成し遂げるために起業や独立に『挑戦できる人』を1人でも増やしていきたい。そして、挑戦する人たちに案件を紹介するだけでなく、出資を含めて多方面から支援する事業に育てていきたいと思っています」(木村氏)

新卒学生「約6割が入社を後悔」の日本を変える

Hajimariがサポートするのは、起業家やフリーランスだけではない。創業5年にしていくつもの新規事業を立ち上げてきたが、その中のひとつ「intee」の対象となるのは、これから社会に出ていく学生だ。
「『2018年の新卒学生の約6割が入社した会社を後悔している』というデータがあります(レバレジーズ調べ)。非常に残念な結果ですが、これはまさに新卒のときの私です。
社会人1年目で『仕事はつまらないもの』と諦めてしまうのは、あまりにもったいない。この状況を変えたくてinteeでは、一人でも多くの新卒学生が自立の一歩を踏み出せるよう、独自の教育プログラムを通じて就職活動を支援しています」(木村氏)
あれだけ時間をかけて就職活動をしているのに、なぜ多くの人が入社した会社を後悔してしまうのか。Hajimariはその理由を大きく3つと分析している。
これらを解決するため、intee登録時に社会人メンターを付け、そのメンターがプログラム終了まで伴走する形態をとっている。
メンターが、「自分はどんなときに幸せを感じるのか」「幸せに働いていくにはどんな要素があればいいのか」「それを叶えてくれるのは、どういう会社なのか」、担当学生一人ひとりの価値観を深堀りすることで、「とりあえず有名企業から受けていこう」という思考停止状態での就活を防ぐのだ。
次に行うのは、ビジネスパーソンとしての土台となる「パーソナルスキル」「テクニカルスキル」の向上だ。
「パーソナルスキルにあたるのは、コミュニケーション力やセルフマネジメント力など、『人間力』とも言い換えられるもの。テクニカルスキルにあたるのは、プログラミング、事業企画、マーケティングなど、ビジネスの現場で必要になる知識です。
上記のような総合的なスキルを高めながら、並行してメンターと共に自分の価値観と向き合い、本当の意味で幸せに働ける企業を選んで欲しいと思っています」(木村氏)
「メンター以外からも多角的な情報収集ができるよう、さまざまな会社で活躍する『先輩社会人』からざっくばらんに話を聴ける場を提供したり、就職活動中の仲間との横のつながりができるコミュニティ作りも行っている」と木村氏。
現在、inteeの累計登録者数は1万4000名と、事業としても順調な立ち上がりを見せ、優秀な新卒学生を獲得したい数百社の企業からも活用されるサービスへと成長した。
社会人1年目のミスマッチを防ぐことで、これから人生の長い時間を仕事に費やしていく若いビジネスパーソンの「幸せ」にも貢献しているのだ。
このようにビジネスパーソンの幸福を支えてきたHajimariは今回、エン・ジャパン株式会社を引受先とした第三者割当増資と金融機関3行から、合計で約10億円を調達した。
「今後は、調達した資金でITプロパートナーズやinteeのような既存事業も伸ばしながら、アルバイトや幼児教育、シニアの領域にも自立支援の幅を広げていく予定です。そうやって自分の価値観と向き合い、自分の人生を正解にしていく人を一人でも増やしていく。
だって、『熱意あふれる社員が94%』になった日本を見てみたいじゃないですか」(木村氏)
未来が容易に見通せない時代だからこそ、「これ」と決めた道を歩むことには今まで以上の価値が生まれる。個の力を高め、より幸福に働ける日本を作り出せるのか。Hajimariの挑戦ははじまったばかりだ。
(執筆:唐仁原俊博 編集:大高志帆 撮影:小池彩子 デザイン:Seisakujyo)