1台300万円。奈良で生まれた「型破り」のかき氷マシン

2020/5/8

300万円超のかき氷機「himuro」

かき氷はおいしいが、それをつくるマシンはあまりお洒落じゃない。
これが常識だろう。でも、そのマシンをイタリアンデザインで磨き上げ、氷を削る方法を精査し、日本の職人技術を結集したらどんなマシンができるだろう。
今回は、この一見無謀な仮説に挑戦した奈良の塾の塾頭の物語だ。
かき氷といえば読者は、涼しげな皿かカップに山盛りに盛った氷に様々なシロップをかけて食べるスタイルを思い浮かべるはずだ。
近年、かき氷ブームが起きたのは、第一には氷がサクサク削れるようになったハード面での技術開発によっている。第二に、混ぜ合わせるものが、昔のように色が違うだけでメロンもイチゴもレモンも大して味が変わらないというものから、生ジュースやコーヒーやたっぷりのクリームやワインなど、多様な素材を使うようになったソフト面での進化による。
今夏、かき氷界のフェラーリとも呼ばれる「himuro」がデビューする予定だが、これはまさに第三のジャンプと言えるだろう。価格は1台300万円超。常識外のハイエンドマシンだ。
お酒を凍らせてから削るフラペチーノ・カクテルを提供するカフェか高級なバーにしか置けない。むしろ、最高級のエスプレッソマシンに近いかもしれない。
なぜ、このようなチャレンジが奈良発で行われたか。それは東大寺の門前にある氷室神社が氷屋さんやかき氷屋さんの聖地だからだ。
たぶん1300年以上前、聖武天皇に献上する食物を氷によって保存した冷蔵庫だった。平城京ではすでに氷を商品として売っていたし、平安京では清少納言が『枕草子』に「削氷(かずりひ)の甘葛(あまづら)に入りて、新しき鋺(かなまり)に入りたる」と表現している。
聖地から誕生したかき氷マシン「himuro」、成功か失敗かはまだ五分五分だ。