【藤原和博】己に眠る「狂気」で、沈滞を突き破れ

2020/5/5
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回はゴールデンウィーク特別編として、教育改革実践家の藤原和博氏の物語をお届けする。

今回のコロナショックをふまえ、藤原氏が「伝えたい思い」があるという。まずは藤原氏からのメッセージを読んで欲しい。
私はプロの研修講師として年間100回の講演を行っている。
ただし、ただのお話では参加者が寝てしまうので、アクティブラーニング方式でブレストやディベートを頻繁に盛り込み、聴衆が主人公になれる講演にするため、ライブのように盛り上がる。
「講演依頼.com」の2019年度下半期調べでは、8000人の講師登録がある中で、ビリギャルの小林さやかさんと並んで堂々3位の人気だったそうだ。イノベーションやモチベーションアップが主たるテーマである。
もっともコロナ以降は10数回の講演会や研修が延期となった。改めての仕事始めは6月以降になりそうだ。
ここで、コロナ後の企業の命運を握る「イノベーションって、なんだろう?」を改めて考えてみる。
藤原和博(ふじはら・かずひろ)教育改革実践家
1955年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、リクルートに入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、1996年、同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08〜11年、橋下大阪府知事(当時)ならびに府教委の教育政策特別顧問。著書に『つなげる力』(文藝春秋社)、『100万人に1人の存在になる方法・不透明な未来を生き延びるための人生戦略』(ダイヤモンド社)など。
たった一人からイノベーションは始まる
企業からすれば、現状を打破するアイデアとそれを実現する一連の行動のことを指すだろう。ただし、これを組織で起こす場合でも、私は、あくまで個人の行動が鍵になると考えている。個人がどう考えるか、その思考法が大事なのだ。
「ああ、コロナで全体が沈滞するだろう。自分が前向きになれないのもしょうがない」「利益が出ないのは当たり前だよね、だってコロナで営業日数が圧倒的に減ったんだから」......というように、全体の景気や業界の調子悪さを自分自身の浮沈にリンクさせ「コロナのせいでダメなんだ」という思考法を全従業員が取るなら、会社も組織もそのようになるだろう。
「革命はいつも、たった一人から始まる」......これが基本だ。
だから、破壊的に現状を打破して、突破していく個人を育てなければならない。
ビジネススクールでアート教育が流行するのも、同じ文脈のニーズだ。ただし、アートで刺激して組織にちょっとだけ「遊び」や「クリエイティブ」を持ち込んでも、その効果は薄い。
こういう激しい逆風下でイノベーションを起こすには、まだちょっと弱いのだ。
自分の中の「狂気」を自覚する
イノベーションは個人の人生にも利いてくる。人生が鮮やかに彩られるためには、会社人間が会社内「個人」として覚醒し、自分の人生の主人公として生き始める意識改革が必要だ。
だから、「誰のようでもない人生を切り拓きたい」と考える読者ならば、自分の中に、組織にあらがう革命を起こさなければいけない。いや、実はコロナがあなたを覚醒させるまたとないチャンスを与えてくれていると考えた方がよさそうだ。
ここで、結論を言ってしまおう。
個人と組織の両方のイノベーションにとって鍵になるのは、誤解を恐れず言えば、「狂気」をどうマネジメントするか、なのである。
なぜなら、個人の中の「狂気」を起動しないで、現状を革新するのはそもそも無理だからだ。
藤原氏は、「コロナ以降に社会を良い方向に動かす突破力には、この作品に象徴されるように、ある種の"幼児性(どの子の中にもある狂気)"が必要だ」と語る。(林 茂樹《mini Q.P》H16 x W14.5 x D12.5cm、2015年、白磁、撮影:野村知也)
会社がイノベーションを望む場合、社員を熱狂させなければならないし、開発チームのチームビルディングが上手くいくのは、リーダーのちょっとした「狂気」にメンバーが恋するときだと思う。
恋をするから50%や70%ではなく、120%とか200%の力が発揮される。できそうもない課題(例えば、車の流麗な美しさと内部の広い居住性を両立させる課題)をクリアするときなど、まともな分析や整然とした処理仕事では、納得できる解が導けるわけがない。
「狂気」に恋をさせるリーダーシップが必要なのだ。
「狂気」は、その芯に寄ってくる同じ志を持った「同志」をくっつける接着剤の役割を果たし、それがやがてドラマチックな「物語」に進化していく。
言葉を換えれば、あなたの中に眠るちょっとした「狂気」を起動することで、その「狂気」が伝染、感染し、コロナ後の沈滞を突き破る力になる。
この連載では、そんな思いで仕事をしている私の3つのイノベーション・プロジェクトを通して、「狂気」がどんな役割を果たすのかを伝えようとしている。
コロナ以前の常識に疑問を持とう
まず3つの物語を今回、さらに加えて3つを今秋に連載する予定だ。
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でも、「狂気」と言われても、仕事は忙しいし、コロナ騒動をなんとかやり過ごしてつつがなくやっているから、どう発揮すればいいかわからない......という声も聞こえてきそうだ。
安心してほしい。そんなに大げさに考えることはないから。
まず、コロナ以前の「目の前の常識」に疑問を持つことから始めればいい。