【論文PICKS】東京五輪は「集団免疫」にかかっている

2020/4/18
緊急事態宣言の対象がついに全国に拡大することとなりました。
新型コロナウイルスのワクチン開発も最短で18カ月かかると言われており、2021年7月に延期となった東京五輪の開催も、雲行きが怪しくなりつつあります。
そうした中、パンデミック(世界的流行)が収束するには、もはや社会が「集団免疫」を獲得するしかない、と言われています。
これは、世界の大多数の人々がウイルスの抗体を持つことを指します。さもなくば流行は終わらない、というのです。
第2の震源地となったヨーロッパでは、イギリスやスウェーデンなどの国が、早くから「集団免疫の獲得を目指す」と打ち出していました。
果たして集団免疫とは何か。今回のPaperPicksでは、集団免疫にまつわる注目の論文2本を取り上げて解説していきます。
ナビゲーターは、熱帯感染症学が専門で、多くの開発途上国で感染症対策に従事してきた、山本太郎医師です。
自由を制限する「痛み」
世界中で今、ロックダウン(都市封鎖)や外出自粛が行われています。そもそもなぜ、自由を制限されるような我慢が必要なのか。
読者のみなさんは、腹の底から理解しているでしょうか?
3月18日、ドイツのメルケル首相は国民に対して、テレビで演説をしています。少し長いですが、大事なことなので引用しておきましょう。
新型コロナウイルスの治療法もワクチンも開発されていない中、喫緊の課題はウイルスの感染速度を遅らせることです。

ドイツ連邦と(国内の)各州が課した日常生活におけるさまざまな制約(幼稚園や学校などの休校、店舗の休業など)が、私たちの生活や民主主義の考え方において、いかに重大な介入であるかを承知しています

我が国では、かつて経験したことがないような制約です。しかし今は、命を救うために避けられないことなのです。
3月18日、国民に向けてスピーチするドイツのメルケル首相(写真:Thomas Trutschel/Photothek via Getty Images)
彼女は旧東ドイツの出身で、移動が自由でなかった国に生まれ育っています。そういった権利は天から与えられるものではなく、自分たちの手で獲得すべきものだということを、よく知っている。
その人物が「自由を制限する」というのですから、その言葉は重いのです。
それくらい、社会や個人に大きな痛みを与えるし、例外的な措置であるということを認識するのがとても重要だと思います。自粛を要請する側も、それに応える側も、です。
中国のように、割と強い権限を持った国家体制の方がよいのではないか、という議論が巻き起こっていますが、これはそう簡単に、短期的に決められる話ではないでしょう。
民主主義国家においても国民の自由を制限してまでやろうとしているのは、「感染の速度を遅らせよう」という戦略です。
そして、最終的な収束の姿は、社会全体の7割程度の人々が、免疫を持った状態をつくること。これによってしか、収束は達成できない。
これこそが、「集団免疫」と呼ばれる考え方です。
人口8000人の島で起きたこと