【野中郁次郎・寄稿】危機にこそ、リーダーシップを鍛えろ
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本記事のベースとなっているのは、冒頭で紹介されている野中教授のご著書「史上最大の決断」です。
その第8章では、アリストテレスの「ニコマコス倫理学」をベースに、知識を3つに分類しています。
a. 客観的な知識
b. 暗黙のスキル
c. 実践と知性をバランスさせる「実践知」
そして、c.「実践知」を、「多くの人が共感できる良い目的を掲げ、個々の文脈や関係性の只中で、最適かつ最善の決断を下すことができ、目的に向かって自らも邁進する」能力と定義した上で、「実践知」をさらに6つの能力に分類しています。
実践知リーダーの備える6つの能力
(1)善い目的をつくる能力
(2)ありのままの現実を直観する能力
(3)場をタイムリーにつくる能力
(4)直観の本質を物語る能力
(5)物語りを実現する能力(政治力)
(6)実践知を組織する能力
「善い目的がなければ、多くの人を巻き込むことできない。現実を正確に把握しなければ、間違った判断を下してしまう。場をつくる能力がなければ、衆知を創発できない。うまく物語る能力がなければ人を説得できない。政治力なくしては優れた構想も画餅に終わってしまう。実践知を組織に広められなければ、メンバーが育たず、組織が一代限りになってしまう。だからこそ、この6つが必要不可欠なのだ。」(345ページ)
現在私たちが置かれている、予測が困難で不確実なカオス状況を乗り越えるためには、このような「実践知」に基づくリーダーシップが求められているのではないでしょうか。
なお、スタートアップの経営もまた、予測が難しいカオスそのものです。このため、私自身も起業から5年間の間に、本書を20回は通読し、その度に新しいことを学び、経営に取り入れてきました。本書は歴史書であると同時に実用的なビジネス書でもあると思います。
(参考)
野中郁次郎・荻野進介「史上最大の決断ー『ノルマンディー上陸作戦』を成功に導いた賢慮のリーダーシップ」(ダイヤモンド社、2014年)
https://www.amazon.co.jp/dp/447802345X「危機」という漢字は「危険=Danger」と「機会=Opportunity」という二つの言葉から来ていると教えられた。中国では、古来から危機と機会は表裏一体で、苦難な時ほどチャンスと捉えよという意味らしい。自身のたった60年の人生を振り返っても、その通りだとつくづく思う。
父と祖父が共に厄年の42歳で病死したことを知ったのは10歳の時。母子家庭で育ちながら自分も3代目の長男だから早死にするのでは?と思って、37年前当時選択肢としては無かった外資系のネスレに入社した。普通の家庭に育っていたら、間違いなく日本の大手企業に就職しただろう。ネスレ日本の社長に就任して4ヶ月で東日本大震災。阪神大震災で被災した経験から、地震と津波によるダメージのみならず放射能問題も乗り越えてきた。そして社長退任の年に新型コロナウィルスによる世界的パンデミック。デジタル情報化社会になって世界で初めてのパンデミックは、世界中の人々に心理的不安とパニックをひきおこしている。これほど、政官民でリーダーシップが必要とされる時はない。
経験した事の無い問題に立ち向かうリーダーは、
① 結果責任をとる覚悟での決断
② 過ちが判明したら即座に修正する迅速な柔軟性
③ わかりやすいコミュニケーション能力
が不可欠だ。
今こそ、あらゆる組織でリーダーの資質が問われている。新型コロナウイルスがトップニュースを「占拠」するようになってかなり経ちました。正直、気が滅入っている人も多いと思います。私もその一人です。
疲弊し、不安な今だからこそ、求められているのは強力で頼りがいのある「リーダーシップ」ではないかと思います。
そこで今週は「危機のリーダーシップ」に焦点を当て、今私たちに求められている能力とはどんなものなのか掘り下げていきます。
初回の本日、珠玉のヒントを提示してくださるのは日本の経営学の第一人者、野中郁次郎先生です。
危機下のリーダーシップは普段のリーダーシップとは違うといい切る野中先生。では、危機で求められる能力とはどんなものなのかについて、「6つの条件」を示していただきながら具体的にご解説いただきました。
野中先生にしか語れない、この上なく貴重なご指摘が満載のご寄稿です。ぜひ、ご一読ください!