[ワシントン 2日 ロイター] - トランプ米大統領は2日、原油の協調減産を巡りサウジアラビアとロシアの間を仲介したことを明らかにし、両国が最大で日量1500万バレルの減産に踏み切る可能性があるとの見通しを示した。

発表を受け、新型コロナウイルス感染拡大の影響で急落している原油相場は持ち直し、一時約30%急騰した。しかし、減産がどのように行われるのかはなお不透明だ。

トランプ大統領はロシアのプーチン大統領、サウジのムハンマド皇太子と個別に電話会談。両国の減産量が日量1000万─1500万バレルに達する可能性があると述べた。これは世界の原油供給量の10─15%に相当し、石油輸出国機構(OPEC)単独では不可能。

OPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国による「OPECプラス」が、3月末の協調体制崩壊まで続けた枠組みは、日量約170万バレルの減産。トランプ氏が言及した減産幅はこれをはるかに上回る。

トランプ氏はツイッターへの投稿で「実現すれば原油・天然ガス業界にとって素晴らしいことになる!」と述べた。

トランプ大統領は3日にホワイトハウスで国内石油企業の幹部との会合を開催するが、米政府当局者によると、協調減産に同意するよう要請はしない見通し。

これとは別に、サウジ国営メディアによると、サウジはOPECプラスによる緊急会合の開催を要請した。新型コロナ流行で混乱する石油市場の安定化に向け、適切な措置を巡り合意を取り付けたい考え。

ロシアのノバク・エネルギー相もロイターに対し、原油市場はすでに供給過多の状態にあるため、ロシアとして増産する計画は全くないと明言。石油市場の安定化に向け、OPECと連携していく用意があると示唆した。

サウジの要請した緊急会合が実現するかはなお不透明だが、開催されれば、サウジ・ロシア間の緊張緩和につながる可能性がある。

両国の対立は、3月初めのOPECプラス会合でOPECによる追加減産と減産延長に関する提案をロシアが拒否して以来、鮮明になっていた。

一方、新型コロナ感染者は世界各地で急増しており、感染対策の外出制限で経済活動が停止し、原油相場へのさらなる下押し要因となっている。

カール・マーケッツ・アドバイザーズのパートナー、ブライアン・ウィリアムズ氏は「減産が大いに必要とされている。原油価格が20ドルでは何も機能しない。供給を実質的に止める必要がある」と強調した。

OPECプラス筋は「トランプ氏がプーチン氏と電話会談を行ったことが全てを変えた」と明かした。OPECプラスではこれまで、カナダやブラジルなど他の主要産油国が協調減産に加わる必要性について話し合われていたという。

カナダで最も産油量が多いアルバータ州のケニー首相は2日、同州は協調減産に加わることに前向きだと表明。ただ、「サウジとロシアが問題だ」と述べていた。

世界では約30億人が新型コロナ感染拡大を抑えるための外出制限の対象となっており、世界の原油需要は4月に、1日当たりの消費量の約3分の1に相当する日量約3000万バレル減少すると予想されている。

需要の大幅減退で原油価格は2002年以来の低水準である20ドル近くまで下落、産油国の財政や米シェール業界を直撃している。

トランプ氏の発言を受け、2日の北海ブレント原油先物の清算値は21%高の1バレル=29.94ドル、米WTI先物が25%高の25.32ドルとなった。それでもなお、北海ブレントは2019年末時点の価格である66ドルの半分以下にとどまっている。

*内容を追加しました。