藤原辰史:パンデミックを生きる指針——歴史研究のアプローチ
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注目のコメント
藤原辰史さん(京都大学人文科学研究所准教授)が「B面の岩波新書」に寄稿したエッセー。必読だと思います。
主題はスペイン風邪の歴史と受け止めました。それに加えて、私が白眉と思ったのは、以下の部分です。
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想像力と言葉しか道具を持たない文系研究者は、新型コロナウィルスのワクチンも製造できないし、治療薬も開発できない。そんな職種の人間にできることは限られている。しかし小さくはない。たとえば、歴史研究者は、発見した史料を自分や出版社や国家にとって都合のよい解釈や大きな希望の物語に落とし込む心的傾向を捨てる能力を持っている。そうして、虚心坦懐に史料を読む技術を徹底的に叩き込まれてきた。その訓練は、過去に起こった類似の現象を参考にして、人間がすがりたくなる希望を冷徹に選別することを可能にするだろう。科学万能主義とも道徳主義とも無縁だ。幸いにも私は環境史という人間と自然(とくに微生物)の関連を歴史的に考える分野にも足を突っ込んでいる。こうした作業で、現在の状況を生きる方針を探る、せめて手がかりくらいを得られたらと願う。
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いま人文科学の研究者にできることとはなにか。それは脊髄反射で「マスク2枚はけしからん」と反応することではないはずです。ビスマルクの名言「愚者は経験に学ぶ、賢者は歴史に学ぶ」を思い出しましょう。
藤原先生のお仕事では『トラクターの世界史』(中公新書,2017)が印象深かったです。「なぜトラクター?」と思うと、度肝を抜かれると思います。あわせておすすめします。
https://www.amazon.co.jp/dp/4121024516・"想像力と言葉しか道具を持たない文系研究者は新型コロナウイルスのワクチンも製造できないし、治療薬も開発できないが、……虚心坦懐に資料を読む技術を徹底的に叩き込まれている。その訓練は過去に起こった類似の現象を参考にして、人間がすがりたくなる希望を冷徹に選別することも可能にするだろう。"
・"一つの国が文明国家であるかどうかの基準は、高層ビルが多いとか、軍隊が強いとか、科学技術が発展しているとか…決してそういうことではない。基準はただ一つしかない。弱者に接する態度である。"by武漢の作家、方方
危機の時代だからこそ、危機の皺寄せがくる人々のために何ができるか
・医療従事者へのケア
・消毒文化の弊害