ドラッカーに学ぶ、セルフマネジメントの「本質」

2020/4/4
セルフマネジメント研究の第一人者であるジェレミー・ハンター氏と、新時代の組織論で注目される埼玉大学大学院准教授・宇田川元一氏が、「コロナ後の世界」に求められる思考や行動を論じ合う特別対談。
第2回では、セルフマネジメントの核心である「ドラッカーの思想とのつながり」を解き明かしていく。
【新】コロナ時代を生き延びるための「セルフマネジメント」

「変わること」をあきらめない

ジェレミー 私の新刊『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室』(プレジデント社)を深く読み込んでくださって嬉しいかぎりです。もし「ここは違うんじゃないか」などと違和感を覚えた点があれば、ぜひお聞きしたいですね。
宇田川 それが、おおむね納得してしまったので特にないんですよ(笑)。
あえて伺うとすれば、セルフマネジメントは短期的な成果にすぐにつながる「解決策」ではないと思うのです。
しかし、読者が実際にセルフマネジメントに取り組もうとしたとき、例えば上司が「それよりも数字だけ出していればいい」というような反応であった場合はどうすべきか……ということでしょうか。
それに対するヒントもきちんと書かれていると私は感じましたが、読者を代弁して見解を聞かせてください。
ジェレミー ありがとうございます。今回の本は個人のセルフマネジメントについて書いたものですが、ぜひ組織のリーダーにも読んでほしいと考えています。
まず、「自分たちの会社の存在意義は何なのか」という質問に、即座に回答できる企業はどれくらいあるでしょうか。
前回論じた「マインドレスネス(無意識・無自覚に行動すること)」に陥っているのは、個人ばかりでなく組織も同様です。来四半期の数字は考えていても、「私たちはなぜこのビジネスに取り組んでいるのか」「誰のためにビジネスを展開しているのか」という点は考えていないわけです。
宇田川 組織がマインドレスな状態から抜け出せない状況は、実際あるでしょう。資本主義のシステムに埋め込まれた存在である以上、数字のことを考えないわけにはいかない。これは大切なことです。
しかし、その中でも個々に考える余地はあるのだということを、よく認識する必要があると思います。前回、ジェレミーさんは現在のような危機の中におけるセルフマネジメントの大切さを述べていますが、それともつながる話ではないでしょうか。
われわれはつい「社会そのものが変わらなければ、自分たちにはどうしようもない」と考えがちなのだけど、組織にしても個人にしても、自分から始められることはある、自分から変えられることはある
それは、私が自分の本で伝えたいと思っていたことであり、ジェレミーさんの本にも共通するメッセージを感じました。

ドラッカーと“セルフ”マネジメント