[ロンドン/ニューヨーク 1日 ロイター] - 第1・四半期の世界のM&A(合併・買収)は28%減少し2016年以来の低水準となった。新型コロナウイルスの感染拡大による経済への打撃が3月に顕著になったことが背景。

リフィニティブのデータによると、第1・四半期のM&Aは6980億ドルで前年同期の9640億ドルから28%減少。米国は半減して2520億ドル、アジアも17%減少し1429億ドルとなった。

欧州は倍以上に増えて2320億ドル。感染の影響が深刻化する数週間前に大型案件が成立したことが寄与した。

移動制限などで世界的に経済活動が沈滞するなか、新たな案件候補はまばら。各国政府・中央銀行が新型コロナ対策に乗り出すなか、今後は救済や再編目的や、国有化の案件が主体となる見込みだ。

シティグループのEMEA銀行資本市場の会長、ルイジ・デベッキ氏は今回の危機は特異だとし「株式市場が30%も下げる局面では、契約上可能なら合意の再交渉を期待すべきだ。だが、合意に至っていないのなら、先行きが見通しやすくなるまで締結を先延ばしするだろう」と述べた。

第1・四半期の最大の案件は、ロシア政府の大手銀行ズベルバンク<SBER.MM>買収。買収額の390億ドルは国民福祉基金(NWF)から捻出した。

その他、大型案件としては、米保険仲介大手エーオン<AON.N>による同業ウィリス・タワーズ・ワトソン<WLTW.O>買収(株式交換方式で300億ドル)、独鉄鋼大手ティッセンクルップ<TKAG.DE>のエレベーター事業のプライベートエクイティ連合への売却(180億ドル)などがある。

バンク・オブ・アメリカのグローバルM&A責任者パトリック・ラムゼイ氏によると「この2週間に世界で発表された合意は前年比43%減」。この局面を乗り越えれば、状況が改善するとみているが、改善の度合いは、経済見通しや株式市場の回復次第だと指摘した。

<国の介入>

米連邦準備理事会(FRB)をはじめ、世界の中央銀行は新型コロナ危機を受けて3月に緊急利下げや非伝統的措置を相次ぎ打ち出した。

ペレラ・ワインバーグ・パートナーズの創業パートナー、パウロ・ペレイラ氏は「市場の混乱とボラティリティが続けば、今回の危機をうまく乗り切れるより耐性があるセクターの企業と、キャッシュ不足に陥った最も打撃の大きいセクターの経営危機の企業とに分かれる」と予想する。M&Aの回復は、経営危機の会社が、金融サービスなど、他のセクターに「著しく不安定化させる影響」を及ぼすかどうかにかかっていると指摘。「ただ金融システムは2008年の時より資本基盤がしっかりしている。政府や中央銀行の行動が、経済回復能力のカギになるだろう」と語った。

M&A業務担当者らは、国家戦略上重要な企業の救済に政府の介入が増えるとみている。