[31日 ロイター] - 米事務機器大手ゼロックス<XRX.N>は31日、米パソコン・プリンター大手HP<HPQ.N>に対する350億ドルの敵対的買収案を取り下げると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大が影響した。

ゼロックスは今月に入り、新型コロナ対応に注力するため、HP株主との会合を延期する方針を示していた。両社の株式を大量に保有し、合併を推進していた米著名投資家カール・アイカーン氏にとって打撃となる。

ゼロックスは5月に開催されるHPの年次株主総会で、HP取締役の入れ替えを目指す予定だったが、これを断念。HP株のTOB(株式公開買い付け)も取り下げる。

ゼロックスは「こうした措置を取ることは残念だが、われわれは何よりも従業員、顧客、パートナー企業といった利害関係者の健康、安全、幸福、およびパンデミック(世界的な大流行)への対応を優先する」とした。

一方で、HPとの連携は長期的に財務・戦略的な利益があると指摘した。新型コロナ危機が後退すれば両社が連携を選択する可能性があるが、今回の決定は2021年春の次回年次株主総会まで同様の圧力をHPにかける機会がないことを意味する。

ゼロックスはまた、TOBを資金面で支援する各銀行は新型コロナに伴う市場混乱にもかかわらず「決してコミットメントがぶれなかった」と指摘した。

HPは発表文で「株主、パートナー企業、顧客、従業員に対し、今回のプロセスを通じた支援に感謝したい」とした。

ゼロックスとHPはともに新型コロナ危機で事業に打撃を受けており、ゼロックス株はこの5週間で半値以下となったほか、HP株は約25%下落した。

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