【現地報告】コロナ時代、中国で勃興する「新経済」とは
2020/4/1
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、日本以上に厳しい外出規制が敷かれている中国。しかしその背後で、「新経済」と呼ばれる新たな動きが起きていた。新型コロナはミクロ・マクロ両面で、中国経済にどのような影響を与えているのか。現地在住18年、対外経済貿易大学教授の西村友作氏が解説する。
SARS流行時とは全く状況が違う
新型コロナウイルスの感染拡大により不要不急の外出が厳しく制限され、中国国内における日常生活は一変した。
グループでの会食を禁止する通知が出され、春節が明けてから2カ月以上経つ今でも開業していない飲食店も少なくない。
特に居酒屋やバーなどの飲食店には人が集まらず、北京の友人が経営するバーも閉店を余儀なくされ「収入ゼロの状況が続いている」と肩を落とす。
感染拡大のリスクを抑えるため、できる限り出社を控えて在宅勤務を行う企業が増えた。教育現場でも、新学期開始の延期や帰省している学生の帰校禁止などの決定が下された。
北京でソーシャル・ディスタンシングを呼びかける街頭看板(写真:UPI/アフロ)
私が勤務する北京の対外経済貿易大学においても、学生寮にはほとんど人影がなく、教職員も登校を原則禁止にしている。
映画館やカラオケといった娯楽施設は休業、スポーツやコンサートなどのイベントも軒並み中止となった。国内外すべての団体旅行も禁止となり、観光地から人が消えた。
このような「食べる」「働く・学ぶ」「遊ぶ」といった生活シーンは、2カ月前には想像できないほど大きく様変わりした。
私は2002~03年に流行した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」も経験しているが、今とは状況が全く異なる。
当時はスマートフォン(スマホ)どころか、パソコンやインターネット環境さえも整っていない家庭がほとんどで、2003年6月におけるインターネット普及率は5.3%にすぎなかった(データは中国互聯網絡信息中心)。
2003年、SARS流行時の中国・広州。当時も外出制限や施設入口での体温測定が実施された(写真:ロイター/アフロ)
当時の娯楽と言えば、サッカーやバドミントンといったスポーツや、麻雀やトランプといった卓上ゲームなど、複数人で遊ぶものが主流。日常から「娯楽」が激減した。犬を飼うにも高額の「狗証(犬用証明書)」が必要だった時代だ。
閉じ込められた家の中に「癒し」は皆無だった。隔離疲れした人々の心は荒み、のちに当時の人間模様を描いた映画や現代劇も話題となった。
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