【最前線】過熱する新型コロナ「ワクチン開発競争」の舞台裏

2020/3/27

「国家安全保障」の焦点へ

新型コロナウイルスの流行が始まってから3カ月。
中国と欧州、そして米国が「世界初」のワクチン開発成功を目指して、しのぎを削っている。
ライバル企業間での協力など、さまざまなレベルでの協調が見られるものの、国家主義的なアプローチが、そこに影を落とす。
この開発競争の「勝者」は、自国民を優遇し、経済的かつ地政学的に優位に立てる可能性があるからだ。
(写真:David Malan / GettyImages)
ワクチン開発の成功によって得られる科学的栄誉、特許、経済的利益の先に、いま突如として加わったのが、国家安全保障の問題だ。
競争激化の背景には、厳しい現実がある。
新型コロナウイルスに対する効果が証明された新ワクチンは、開発した国の政府が自国民に最初に届けようとするために、世界的には間違いなく供給不足に陥るのだ。
中国では現在、1000人の科学者が開発に取り組んでおり、すでに軍事の領域にある。人民解放軍の軍事科学院の研究者らが、同国で最も有望視されているワクチンの研究に取り組み、治験のためのボランティアも募っている。
「中国が他国に後れをとることはない」と、中国科学院の生物学的製剤の専門家、王军志(ワン・ジュンジー)は3月17日の会見で述べた。
こうした中国の取り組みは、プロパガンダ的様相を呈している。
人民解放軍のウイルス学者、陳薇(チェン・ウェイ)が「世界初」と喧伝されたワクチンを投与されている写真が拡散されたこともあったが、これはフェイクであったことが判明している。
(写真:Sebastian Gollnow/Getty Images)

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