高難度のデータ活用が急務。ソフトバンク、博報堂、Armが挑む大仕事

2020/3/18
 いまマーケティング施策のためのデータ活用は、死活問題だと言われている。しかし、データを適切に収集・分析して、成果を出せている企業は多くないようだ。
 企業におけるデータの利活用の調査では、「データ活用によりビジネスへの成果を得ている」と答えた企業は、4割にも満たなかった。
 こうした時勢を背景に、データを活用したビジネス変革をワンストップで支援する、「本気」の座組みが生まれた。
 ソフトバンクが持つデータ・テクノロジーと博報堂グループのマーケティング・コンサルティング力、Armのカスタマーデータプラットフォームを集結して設立されたのが、インキュデータだ。
 2019年10月に事業を開始して以来、垂直に立ち上がり、商談が引きも切らず、すでに300社以上からラブコールを受けているという。それは裏を返せば、多くの企業がデータ活用に困窮しているからこそのニーズと言える。
 なぜ今データ活用が大事なのか。
 企業のデータ活用を阻むものはなにか。
 どうすればビジネスの変革につながるのか。
 インキュデータの代表取締役社長 兼 CEOを務め、同時にソフトバンクのデジタルマーケティング事業を統括する要職に就く藤平大輔氏に話を聞いた。
ソニーを経て、2004年ソフトバンクBB(現・ソフトバンク)入社。福岡ソフトバンクホークスのITシステム本部長、ソフトバンクテレコム(現・ソフトバンク)の新規事業営業本部デジタルマーケティング事業統括 統括部長などを経て、17年より現職。19年インキュデータ設立を発表し、同社代表取締役社長 兼 CEOを兼任。
データを使わないともう“生き残れない”
──いまやほとんどの企業がデータを活用したマーケティングを行っているようですが、うまくいかないという声も多いようです。なぜでしょうか?
藤平 そもそも、データを活用したマーケティングで結果を出すのは、本当に難しいことですが、うまくいかない主な要因は3つあります。
 まず、たくさんのデータを集めればなんとかなると考えている経営層の方が意外と多いことです。経営指標を左右する、本質的な結果を導き出すためには、プロでも最低1年はかかります。それを社内の余剰のリソースだけで取り組んだとしても、結果が出ないのは仕方のないことです。
 もうひとつの要因としては、社内で横断的にデータを活用できていないことです。営業部は営業部、宣伝部は宣伝部でそれぞれ収集しているデータがあっても、それらが共有されていない。
 データは可能な限り多面的に統合して分析しなければ、打ち手は見えてきません。基本的なデータの利活用が実践できていない企業が多いと感じています。
 最後に、施策を実施するための各種ツールとの連携がうまくできないことです。多くの企業はすでに膨大な社内データを持っているのですが、大きな箱にぎゅっとデータを詰め込んだだけで満足していて、その出口となる施策へとつなげることができていない状態です。
 例えば、社内のデータを突き合わせて、顧客を深く知ることができれば、ターゲティング精度を高めることができますし、MA(マーケティングオートメーション)ツールにつなげば高度にターゲティングされた顧客へメール施策を行うことも可能になります。
 良質なデータをたくさん持っていても、そうした施策が実施できていないケースは非常に多いのです。
──そもそもデータ活用は、企業にとって必ずやるべきことなのでしょうか?
 これはもう、ほぼすべての企業にとって必須だと思います。
 少し前までの日本では、良いものを作ればそれだけで売れていました。しかしGAFAのような巨大なデータプラットフォーマーの台頭によって、市場を奪われ縮小していく日本企業が増えた。
 GAFAは徹底的にデータを活用したマーケティングで成功していますから、対抗するにはやはり日本企業もマーケティングを抜本的に見直さなければならない状況です。
 以前はこのような話をしても、ほとんどの経営者の方は「まあ将来的にはそうなるかもね」と自分ごと化していなかったのが、この数年はかなり考え方が変わってきています。もはやデータを使わないと勝てないと言っても過言ではありません。
──競合に勝つ、ということですか?
 それ以上に、その企業が生き残れるかどうかですね。デジタル中心だったGAFAの影響範囲が、現在はリアルな市場にまで波及してきました。
  それを受けて、これまでは「データなんて自分たちの商売には関係ない」と考えていた製造業や流通小売、そして金融の方々も、データを活用したマーケティングに果敢に取り組み始めています。いまや商品開発を行う上でも、データを用いることが当たり前になってきました。
 今まで一番データ活用から遠いと思われていた企業が「これ以上遅れてはいけない」と行動を起こし始めている場面を見ると、危機感は相当大きくなっていると思います。
デジタルマーケティングは、Webにとどまらない
──具体的にはどのようなデータをどう活用すれば良いのでしょうか?
 データという意味では、これも「すべて」です。もちろん業種業態によってバラツキはあるでしょうが、どんな人が何を買っているかの顧客データ、購買データ、閲覧したWebサイトのデータなど。
 つまり、顧客データだけでなく、タッチポイントや行動履歴に加え経営指標に照らし合わせて、カスタマージャーニーを分析する必要があります。
 最終的に店舗で購入した顧客がいたとして、店舗のデータとWebのデータを突き合あわせることで、顧客が事前にWebサイトでどのような情報を見ていたかがわかります。
 同じWebサイトを見ていても購入しなかった方がいたとすると、Webサイト上の行動データを分析することで、何が購買の有無に作用したかがわかります。こうした分析を通じて、実際に有効な打ち手を考えることができるのです。
──なにかわかりやすい事例はありますか。
 自動車ディーラーの例をあげると、以前は店頭で購入するまでに顧客が6~7回店舗を訪れていたのが、現在では3~4回に減っているのですが、これはネットの普及により店舗へ行かなくても情報が得られるようになって、店舗に行く時にはすでに買う商品を決めているからです。
 良い商品を複数揃えて待っていても、その前に大方の勝負が決まっているということです。何が購買の意思決定に作用しているかを知るためには、顧客が店舗に来る前にデータを因数分解して、実施する施策を決めなければなりません。
 データの分析に基づいた施策を打つことで、来店数や営業効率が上がり、最終的に売上の向上につながります。
──施策というと、やはりWeb広告でしょうか。
 これまではそうでしたが、もはやデジタルマーケティングはWeb広告だけでは終わらない状況です。経営者がマーケティングに本腰を入れて、最終的に売上を見据えた施策をやっていこうと考えた時、Web広告が指標にしてきたPV数やクリック数だけを追いかけていては、結果を出すことが難しい。
 どんな相手に何を届けたいかという目的に合わせて、多種多様なメディアを用いる施策が必要だと思います。
──冒頭で、「データ活用は本当に難しい」とおっしゃっていましたが、確かに、社内のデータを統合・分析して、施策を行うところまで考えると、スキルの面でも、リソースの面でも、社内だけで行うのは難しそうですね。
 まさに企業が直面している課題を解決するためにインキュデータを設立しました。元々ソフトバンクは数年前から、法人のお客さまのデジタルマーケティング支援サービスを提供してきた。その中でWeb広告中心のデジタルマーケティングが、MAツールやデータを活用した事業変革にまで広がっていくことを実感しました。
 そこで、トレジャーデータとの協業を開始して、データ活用には欠かせないCDP(カスタマーデータプラットフォーム)をお客さまへ提供するようになったのですが、ほどなくしてトレジャーデータはソフトバンクのグループ企業であるArmの傘下に入りました。
 実際に「Arm Treasure Data CDP」をご導入いただいた企業では点と点だったこれまでのマーケティング施策が線でつながるようになり、再現性のあるものとして把握できて、良い結果が出せるようになりました。
 一方で、CDPを導入しても「どうやって使えばいいんだっけ?」とうまく結果を出せない企業も少なくありませんでした。マーケティングへの期待値が高い分、データ活用のレベルを上げる必要があるのですが、社内に適した人材がいないために、データを分析して施策につなげることができないというわけです。
 そこで、データに強く、あらゆるメディアの知識を持つ博報堂とタッグを組むことにしました。
 データ活用のベースとなるArmのカスタマーデータプラットフォームに、ソフトバンクのデータ・テクノロジーを用いた事業変革ノウハウ、そして博報堂グループのマーケティング・コンサルティング力を掛け合わせれば、クライアントの求める結果に高いレベルで貢献できます。
 お客さまからの必然的なニーズに応えるために設立したのが、インキュデータです。データの統合・分析から施策の立案・実施までワンストップでお客さまに寄り添う覚悟です。
──なるほど。たしかに強固な座組みですね。インキュデータの強みは、特にどこになるのでしょうか。
 そうですね。我々しか持ち得ない、大きな強みは、関連領域のトップランナーとしての知見と、十分に匿名化されたソフトバンク独自の統計データと博報堂グループが保有する生活者データです。
エンドユーザーのパーミッション・コンセントをマネージをした上で、お客さまが持つ顧客データや購買データ(ファーストパーティーデータ)と掛け合わせることで、顧客理解も深まりますし、マーケティング施策の精度が上がります。インキュデータをパートナーにお選びいただければ、データ活用の幅は格段に広がるはずです。
──データの取り扱いについてはリスクもありそうですが、どうでしょうか。
 もちろんです。データの扱いは当然デリケートな部分なので、非常に気を使っています。
 そもそも、インキュデータではお客さまのデータをお預かりすることはありません。お客さまのデータはお客さまご自身で管理していただき、活用していただくというスタンスをとっています。
 個人情報保護法においては、改正がたびたび行われるため、違法とまではいかないにしろ、グレーなデータ活用例が少なくありません。ですから、インキュデータとしてはお客さまの立場に立って、ユーザメリットにならないことや批判されそうなことはしないと決めています。また、第三者の視点を取り入れることで、常に見直しの議論を続けています。
他の会社がやらない案件をやる
──データ活用は、具体的にどのような手順で進めるのでしょう。
 まず、経営層からのご相談としては「データを使って売上を上げたい」という話をよくいただくのですが、その際、社内にはどんなデータがあるのか、そのデータをどうつなぐとどんなことができるか、最終的に何を実現したいのかをヒアリングさせていただきます。それを踏まえて、それらを実施・実現するための膨大な企画書に落とし込み、実行していきます。
 インキュデータでは、これをお客さまのプロジェクトとして「データストラテジスト」がリーダーとなって進めます。お客さまのご要望を、データの統合・分析を通じて、ビジネスのゴールにつながる戦略に落とし込み、さらに、ソフトバンク・博報堂・Armの3社が持ち寄った武器を存分に使って、データを活用したビジネス変革を支援していきます。
──データストラテジスト、かっこいいですが、難易度の高い仕事に聞こえます。
 そうなんです、当社の案件は大きくて難しい(笑)。普通の会社がやらないレベルの仕事にクライアントと共に挑戦していると自負しています。
 だからこそ、当社がそれをワンストップで支援する価値があります。結果が出るまでクライアントに伴走して責任を持ってやり遂げる。この仕事ならではの醍醐味です。
──それでは今後、デジタルマーケティングはどのように変化していくのかを教えてください。
 消費者がネットに触れる時間は、これからますます増えていきます。インキュデータは立ち上げたばかりですが、市場のニーズの高まりをとても強く感じています。
 国内外のプラットフォーマーが業種業態を超えて領域を拡張していく中で、自社のデータを使ってどんなアクションができるのかをすぐにでも考えなければならないと、多くの企業が感じているのだと思います。実際にかなりの数のご相談をいただいていますし。
 一方で、データを使うことへの危機感も高まっています。例えば現在の日本のWeb広告は、世界でも特に遅れが目立ちます。GoogleもサードパーティーCookieの利用制限を打ち出すなど、コミュニケーションのやり方が今後ますます変わってくるはずです。
 ですからコミュニケーション方法をどんどん発展させていかないと、日本のマーケティングに未来はないのではないかと危惧しています。リターゲティングで同じ広告を何度も当てるといった手法ではなく、消費者が本当に受け入れたくなる広告にしなければいけないでしょうね。
 これはWebに限ったことではなく、すべての領域において、今後マーケティングはより消費者目線に大きく変わっていくと思います。ですから企業は生活者の立場や体験を理解して、データを適切に活用し、マーケティングによって企業価値を高めていかなければなりません。
 インキュデータは、マーケティング領域にとどまらず、データ活用で企業価値を上げられるよう、より大きな視点でお客さまのビジネス変革を支援できればと考えています。
(編集:中島洋一 構成:シンドウサクラ 写真:小島マサヒロ デザイン:月森恭助)
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