【冨山和彦】コロナショックは、日本のラストチャンスだ

2020/3/12
コロナショックは、世界と日本の経済にどんなインパクトを与えるのか?日本企業はどうコロナショックに立ち向かうべきか。経営共創基盤CEOの冨山和彦氏に聞いた。

日本は今のところ優秀

コロナショックは、リーマンショックとは意味合いがちょっと違う。
今回は金融機関が痛んでいないので、経済を駆動する心臓が壊れたわけではない。だから、医学的パンデミックさえ収まってきたら、戻りは早いと思う。
戻る時期は正確にはわからないが、統計的数字を見ていればある程度はわかる。
私の理解では、もっとも信頼できる数字は、人口あたり死亡者数だ。
これは、検査をしたかどうか、という人為的なサンプルバイアスがかからない絶対数値だから信頼性が高い。だから、死亡者数の増加傾向と、人口あたり死亡者数の推移を見ていくのが、いちばん正しい。
人口あたり死亡者数の推移は、感染率と、高齢者比率と、医療体制が健全かどうかの指標となる。
要は、医療体制が整っていれば、重症化しても死なないし、高齢者隔離がうまくできていれば、重症化はしにくい。ある意味では、国や地域がどれだけちゃんとコントロールできているかの指標にもなる。
冨山和彦(とやま・かずひこ)/経営共創基盤CEO。1960年生まれ。東大法学部卒、司法試験合格。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。ボストン コンサルティング グループ入社後、コーポレイトディレクション設立に参画。2003年産業再生機構に参画しCOO。その後、経営共創基盤設立。パナソニック社外取締役、東京電力ホールディングス社外取締役。
新しい国に飛び火すること自体はそんなに大きな問題ではない。それは交流人口がある以上は起きる。
本当に大事なのは、飛び火した国で、コントロールができているかどうか。だから、経営に関わっている人は、各国の人口当たり死亡者数を注視していったほうがいい。
その数字で見ると、日本は今のところ優秀。圧倒的にパフォーマンスがいい。
これだけ中国から近くて、中国からの交流人口が多くて、人口密度が比較的高い中で、これだけコントロールできていることは評価できる。あまり政府のことを批判しなくてもいいと思う。
ちなみに、政府のコロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーも一流の人たちが集まっている。会見で出てくる副座長の尾身茂さんは、WHOでポリオを根絶した立役者。あまり報道されないが、世界的な有名人ですよ。
コロナウイルス感染症対策専門家会議で副座長を務める尾身茂氏(写真:時事通信)

逆オイルショックのリスク

今回、純粋経済面でコロナより厄介なのは、原油ショックのほうだと思う。
世界のリスクマネーをオイルマネーが供給していたので、これが逆回転し始めると、リーマンショックに近い状況が生まれてしまう。
孫さんのビジョンファンドが典型だが、世界のAIやシェアリングエコノミー系スタートアップの資金を支えていた中東マネーが引いて、株価が大きく下がると、その連鎖でニューヨークやサンフランシスコの地価が下がって、ネガティブスパイラルが起きかねない。そのインパクトは、コロナショックを超えるリスクもある。