【須藤憲司】DX成功の鍵は「社内の実力者」と「小さな成果」

2020/3/15
現在普及している「4G」の100倍の通信速度でデータのやりとりを行なう「5G」が、いよいよ今春から開始となる。
ネット環境の転換点に立ちあう期待感と、対応が遅れ自社ビジネスが遅れを取ってしまうかもしれない危機感、この両方を合わせ持つビジネスパーソンも多いのではないだろうか。
本連載では、実際にDXに着手した企業の事例を紹介してきた。これまでの事例を振り返り、「DXを成功させた企業の共通点」についてKaizen Platform須藤憲司氏からのメッセージをお届けする。
NewsPicks × Kaizen Platform「DX人材養成」プロジェクト
DXとは何かといった基礎知識から、具体的なDX計画の策定方法、企業のDX戦略事例までを完全網羅。DXの専門家Kaizen PlatformのCEO 須藤憲司氏が講師を務める、次の日から一流のDX人材になるための全6回講座が2020年6⽉24日よりスタート。
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DXを実現するための5ステップ
Kaizen Platform主催イベント「DX Drive2020」より
須藤 ここまでDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する、数社の事例についてご紹介してきました。
まず共通しているのは、事業のビジョンやミッションなど、事業そのものの再定義から着手していること。これはDXを考えるうえで非常に重要なテーマであり、プロジェクトが困難な状況に直面したとき、立ち戻る場所になるものと言えます。
次に、DXを推進するには5つのステップがあることが分かりました。
①モバイルファースト
②動画活用
③データ活用
④リアル接続
⑤ビジネスモデル変革
このステップは、文字通り階段を登るようなものだと考えてください。
①まず、顧客とのコミュニケーションや従業員の業務を、「モバイルファースト」に変えることがDXのスタートです。
具体的には、業務で活用する社内システムも従業員の端末から操作できるようにするということ。顧客面ではサービスそのものはもちろん、サービス登録までの導線、たとえばホワイトペーパーやカタログもスマートフォンでの閲覧に対応させます。
②モバイルファーストを進めていく際に有効なのが、「動画活用」です。商品説明、利用規約、Q&A、マニュアルだけでなく、社内報などの社内コンテンツを動画化する動きが増えています。
静止画、テレビCM、バナー広告、チラシ、LP、商品ページ、カタログ、パンフレット、POP、マニュアル、商品説明、利用規約、Q&A、社内報などあらゆる素材から動画制作可能
動画はわかりやすく説明することに長けているフォーマットです。結果的により多くの方に適切にコンテンツを届けられ、業務効率や顧客体験の向上につながります。
近年では「撮影を必要としない」手法で動画制作の大幅な価格低下も叶うようになり、広告費に対して得られた売り上げが4500%だったという事例も。ROIなどビジネス観点から動画を採用する企業が増えているのです。
③このように顧客体験や社内業務をデジタルにリプレイスした際に考えていくのが「データ利活用」です。
たとえば先に挙げた動画では、視聴人数や時間帯、人気のあるコンテンツ、離脱してしまったポイントなど、細かなデータを収集し、それをもとに受け手の興味関心に応じてコミュニケーションをパーソナライズしていくことができます。
④モバイルファースト、動画活用、データ活用のステップを踏むと、一定の成果もあがってきます。するとその成果を、実店舗や営業現場など「リアルに接続」しようという動きが起きます。
往々にして①〜③のプロセスは、単一の部署や企業で推進できます。しかしこのステップ以降は他部署や協力会社、実店舗なども巻き込むため、先日ご紹介したNTT東日本のケースのように横断型のプロジェクト構築が必要となります。
⑤つづいてDXの究極進化と呼べるのが「ビジネスモデルの変革」です。
たとえばメーカーを中心に活発なのが、売り切り型から定期購入型(サブスクリプション)に変えようとする動き。
デジタルクリエイターから圧倒的な支持を受けるツールを開発しているAdobe社はサブスクリプションへの変革に成功し、年率20%を超える成長をつづけています。
成功しているDXプロジェクトの共通点
では、DXが成功しているケースには、どのような共通点があるのでしょうか。
私たちはこれまでの伴走実績から、大きく二点を導き出しています。それは「社内に影響力のある実力者のコミットメント」と「結果を先に出し、後から正規のプロセスに変えるアプローチ」です。現状そのどちらが欠けても、うまくいかないのではないでしょうか。
DXのためには既存のレガシーシステムを変革したり、部署を横断してさまざまな決裁を通していかなければなりません。調整能力を持つ実力者の存在はとても有効です。
なおかつ、進め方自体も正攻法を選んでいてはいけません。正面から変革しようとして頓挫してしまうケースは少なくないからです。まずは小さくとも結果を先に出し、後から正規プロセスにのせていくようなスタンスが重要。その際に作ったものはいずれ壊していく前提で進めます。
規模も、部署単位、プロジェクト単位から進めることをおすすめします。
成功が証明されたことだけ実施する
小さく結果を出す方法は色々ありますが、その中で私たちが実践した具体例を一つご紹介します。その方法とは、PoC(Proof of Concept)を最優先に考えること。
PoCとは、「コンセプトの証明」や「概念実証」とも訳されますが、新しいコンセプトやアイデアの有効性を実証するための検証やデモンストレーションを意味します。適切にPoCを実行していけば、その後の大きな失敗を防ぐことができます。
たとえば私たちKaizen Platformでは、ウェブページの改善施策を請け負うサービスを提供しています。
特定のタグをページに入れてもらうだけで、ウェブページの顧客体験を磨きこんでいくことが可能です。具体的には、情報システム部やITベンダーを介さず、入力フォームの改善やコンテンツの出し分けといったパーソナライズ化などの検証から実装までができます。
これは、お客様にとっては基幹システムに大きく手を加えずに、変革に向けたPoCを実施できるということ。
特に金融や保険など大切なお客様データを扱う企業では、サイト改修も慎重です。社内の限られた工数で対応するため、そもそも改修できる機会が限られていたり、システムに影響ないか判断したうえで進めるため実装に数ヶ月、年単位でかかるケースもあります。
実際にタグ機能を導入したお客様には、「フォームはシステム部に申請を出して、数ヶ月待たないと変更できないと思っていました」「当初1~2年かかっていたものが、3ヶ月以内に改修できるようになりました」という声もいただきました。
基幹システムに触れる開発は、リスクを考えれば腰が重くて当然です。それで成果が上がらないなんて日には目も当てられません。だからこそ、このようなPoCから始めることが重要なのです。
DX人材は圧倒的に不足している
Kaizen Platform主催イベント「DX Drive2020」より
ここまでの内容から理解いただけるように、DXを成功させるのに「デジタルの知識だけがあれば良い」という前提は疑わしいと私は考えています。
あくまでテクノロジー理解を起点にしながらも、あるべきビジネスモデルやサービスを描き変革に促していける人材。目的と問題を正しく設定し、プロジェクトマネジメントしていける人材が求められています。
しかし国内の構造的要因からその確保は難しく、人材不足感は否めません。
背景には、ユーザー企業の人件費を変動費化することに貢献してきたベンダー企業にIT人材の割合が寄っていることや、そのような人材の大半が現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)に割り当てなければならないなどの現状があります。
経済産業省のDXレポートには「IT技術の進化のスピードが速い中で、新たな技術に関する再教育をどうするのか、世の中の変化に伴い新しい人材を如何に確保するか等、全体として人材確保について悩みを抱える企業は多い」とまとめられていました。
産業全体でDX推進を担える人材を育てていくことが喫緊の課題となっているわけです。人材が不足している現状は、若い人にとってチャンスでもあります。
DXは今後に大きな期待が持てる成長市場です。難易度は決して低くありませんが、スキルセットに加えておけば、自らの希少性を高めることができるでしょう。みなさんが今後のキャリアを考えるとき、ひとつの選択肢としてDXを思い出してもらえれば、そしていつか、そんな人と一緒にお仕事できればうれしいです。
(撮影:高澤梨緒、構成・編集:株式会社ツドイ)
NewsPicks × Kaizen Platform「DX人材養成」プロジェクト

DXとは何かといった基礎知識から、具体的なDX計画の策定方法、企業のDX戦略事例までを完全網羅。DXの専門家Kaizen PlatformのCEO 須藤憲司氏が講師を務める、次の日から一流のDX人材になるための全6回講座が2020年6⽉24日よりスタート。
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