【独自8000字】失地回復へ、JDIトップが語る過去の教訓、未来

2020/3/10
正真正銘、最後のチャンスーー。経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)の経営支援の枠組みが決まった。
過去1年、JDIは経営破たんの危機に瀕しているにもかかわらず、支援の枠組みは二転三転。ようやく、いちごアセットマネジメントから3月末に経営支援を受けられる見込みとなった。
だが、この先も予断を許さない。
JDIの主力事業であるスマートフォン用の液晶パネルは慢性的な赤字が続いてきた。2020年3月期連結業績も3期連続の営業赤字、6期連続の最終赤字に陥る公算が高い。
その上、アップルが有機EL(OLED)ディスプレイを採用したiPhone機種を増やしているように、有機EL化の大波によって、液晶の売り先がなくなるという懸念は今も残る。昨年末には、懲戒解雇した元社員から、不適切会計疑惑を告発される事態も発生した。
JDIは、苦戦を続けた日本の電機産業の縮図とも言われる。
「技術への過信」、「神風頼みの投資計画」によって、時代の変化を読み間違え、経営に行き詰る、といった具合だ。
NewsPicks編集部は、2019年9月末に社長就任した菊岡稔氏に、いちごとの契約締結後、初めてとなる独占インタビューを実施した。「遅きに失した」という冷ややかな見方もある中、「日の丸液晶」JDIは今度こそ本当に変われるのか。菊岡社長が、あらゆる疑問に答える。
液晶は残るのか
──新型感染症があらゆる企業活動を直撃しています。アップルが春に投入予定のスマホを発売延期するとの観測もある中、JDIへの影響は。
菊岡 液晶ディスプレイの前工程と呼ばれる工程は全部、日本にある当社の工場でやっていて、ほぼ計画通りに操業しています。
ですが、後工程の一部は中国工場が担っていたり、中国のEMS(生産受託サービス)に委託していたりするので、当然、全体で見れば、影響を受けています。ただ、中国の春節休み前に在庫を積んでおいたことが、影響を少し和らげています。
──2020年に発売されるiPhone12では、全モデルに有機EL(OLED)ディスプレイが採用される観測です。スマホのOLEDシフトにより液晶パネルの採用が減り、経営が苦しくなりませんか。
皆さんが言うほどには、OLED化は進まないかと思いますよ。特定のお客さんの案件については、皆さんの想像にお任せします。一つ言えるのは、スマホメーカーは新興国や中国の富裕層を対象とするだけでなく、中間所得層へと市場を広げていこうとしています。
とすると、やはり廉価で価格競争力がありつつも、性能もそれなりに良いという機種が求められるでしょう。そうなると、むしろ液晶の良さが見直されてくるかなと思っています。OLEDを採用した機種は話題になりますが、実は液晶を採用した機種の方が売れていたといったこともあります。
しかも、スマホメーカー自身もスマホ端末だけでなく、Netflixのように、(動画配信サービスなどの)リカーリングビジネスで稼ぐようになっていますよね。