【3分解説】なぜイランで、新型コロナが深刻化しているのか？

2020/3/9

新型コロナウイルスの対応を巡って、日本でも政府の不手際や検査体制を批判する声が高まっている。

しかし、日本以上に感染が蔓延しているのに効果的な対策が取られていない国がある。

中東の大国、イランだ。

新型コロナウイルスによるイランのこれまでの死者数は194人。

中国以外ではイタリアに次ぐ死者数で、政府高官にまで死者が出ていることからも深刻さが浮かび上がる。

感染拡大に歯止めをかけようと、政府は集会の自粛要請や5万人以上の囚人の一時釈放に踏み切ったが事態は改善の兆しが見えない。

NewsPicksでは、そんなイランの状況を「現状」「拡大した原因」「対応」の3つの切り口からアップデートする。

現状：194人死亡。保健省次官も感染

コメント

注目のコメント

• 鈴木 一人

  東京大学 公共政策大学院教授

  ・2020年03月09日

  イランで新型コロナウィルスが拡大していく理由を解説する記事。拙コメントも使っていただいていますが、なぜこれほどまでに拡大したのかをよく整理した記事になっています。
• キアラシ ダナ

  NewsPicks 記者

  ・2020年03月09日

  この週末、3/6→3/8にかけてイラン国内の新型コロナ感染者は1800人以上増えました。死者も70人増です。
  
  日本も含め世界の国々では、時間の経過とともに何らかの対策効果が現れる国が多いです。なぜイランは泥沼の感染拡大が続いているのか、現状と原因、そして政府対応についてまとめました。イラン情勢を熟知する北海道大学の鈴木一人教授による分析が非常に明快です。
  
  ひとつだけ、間違いないことがあります。
  「経済制裁は政権を倒さず、国民を殺す」ということです。
• 塩崎 悠輝

  静岡県立大学国際関係学部 准教授

  ・2020年03月09日

  イランで最初に感染が拡大したのはコムかもしれませんが、現在感染者が最も多いのは、首都テヘランと考えられています。テヘランの人口1000万人の内、３～4割は今月中に感染するという専門家もいます。
  　テヘランで感染が拡大しているとなると、中国の武漢やイタリアのロンバルディア地方でやっているような、地域全体の封鎖というのは難しいです。東京を封鎖するわけにはいかないのと同じことです。現在、イラン政府がとっている対策は、革命防衛隊傘下の民間防衛組織、バシージの隊員30万人に、一軒一軒家を見回らせて、感染者と思われた人間は病院に収容する、というものです。しかし、バシージは医療の専門家でも何でもないですから、専門家からは、この対策の意義は疑問視されています。学校や大学の休校はすでに実施されています。
  　なぜイランでこれほど急速に感染が拡大したのか、というのはいろいろ説のあるところですが、外国の専門家が現地で検証することもできないので、本当のところはよくわからないです。マスクや消毒液といった、基本的な公衆衛生のための物資が不足していることは確かです。
  　中国や韓国でも、経済への打撃は大きいですが、イランの場合、比較にならないくらい壊滅的な打撃になるのではないかと思われます。イランは、米国の経済制裁には長年耐えてきましたが、けっこう耐えられているようでも、やはり社会のいろいろなところが脆くなっており、今回の感染拡大で、一挙に崩れてきているように見えます。