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日経電子版に寄稿しました。

今般、バブルが崩壊して金融危機に陥っていた時期に導入された金融庁の検査マニュアルが廃止されました。それにより、これまでマニュアルに沿って機械的になされてきた銀行の貸付債権の分類や引き当ての実務が大きく変わります。

マニュアルに沿った一律の基準に基づく実務は過去の財務諸表や貸し倒れ実績を重視する一方で、企業の経営環境の変化など将来的なリスクを踏まえた分類や引き当てを妨げてきました。また、担保や保証があれば引き当てを積まなくてもいいというマニュアルの指針が、担保や保証頼りの融資姿勢に繋がってきました。さらに、少子高齢化や低金利の長期化など銀行を取り巻く環境も変化しており、ファンドの活用などの工夫によって銀行も将来のキャッシュフローを重視した取引先支援を強化する必要に迫られているなかで金融検査マニュアルは実情にそぐわなくなっています。同マニュアル廃止の背景にはこうした経済状況の変化があります。

金融検査マニュアルが廃止されるということは、今後は銀行の経営陣自らがどのような経営方針に基づいて融資や資産運用をするか、経営環境をどのように捉えているかが問われることになります。

また、融資先の将来の姿を見るということは過去の貸し倒れ実績で引き当てを積むのではなく、将来のマクロ経済環境や業界環境なども考慮に入れることも求められます。それをどう考えるかが、まさに経営判断です。平常時に引当金がいきなり増えて赤字にならないようにするだけでなく、(今回のコロナウイルスの件などを含め)予期せぬ経済混乱のときであっても自己資本が不足しないようにするのが銀行経営者の責任です。

そして各銀行は金融検査マニュアルの機械的な自己査定に甘えて低下した目利きの力を取り戻す必要があります。筆者が属するプライベート・エクイティ(PE)ファンドの世界では、企業の事業性に基づく将来キャッシュフローの予測で投融資を決め、それを実現すべく実際に投資先の現場で汗をかいています。こうした力が現在の銀行の役員・行員に最も求められているのではないでしょうか。銀行員諸君のご健闘を祈ります。