【解説】MRJが完成しない理由は、「日本の歴史」にある

2020/2/27
これで延期は6度目。
2月6日、三菱重工業はスペースジェット(旧MRJ)の初号機納入が、計画していた今年の半ばから来年度以降に延期されることを発表した。
2008年に本格スタートしたスペースジェットの開発は、10年以上の時を経てなお、1機たりとも旅客機として空を飛んでいないことになる。
やっぱり、もうダメなんじゃないか──。延期の発表が繰り返される度、多くの日本人がスペースジェットに対して懐疑的な視線を向けるようになってきた。
なぜいつまで経ってもスペースジェットは納入されないのか。その理由の1つは、日本の航空機産業がたどった、不運な歴史にある。
NewsPicksは、鈴木真二東京大学名誉教授に話を聞いた。日本の航空工学の権威と一緒に、航空機産業の歴史と現在地を学ぼう。

航空機は「国策」ビジネス

鈴木 なぜ三菱重工業が、何度も納入の延期に迫られながらも、スペースジェットを作り続けるのか、疑問に思われる方も多いかもしれません。
もちろん三菱重工も、投資とリターンを見定めながら意思決定を行なっています。
しかし航空機産業は、単なる民間企業の1つの事業以上の意味を持っています。企業の新規投資という観点だけではなく、日本という国レベルで俯瞰しなければ、本質はつかめません。
航空機ビジネスには、「国策」の側面があるからです。