(ブルームバーグ): 富士フイルムホールディングスが新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の増産検討に入った。国内での感染拡大が続く新型コロナウイルスへの治療薬として、政府からの増産要請を受けたことに対応する。

富士フHD広報担当の田口貴広氏は25日、「政府から増産に関する検討要請を受けていて、検討を進めている」とブルームバーグの電話取材で述べた。新型コロナウイルスと新型インフルエンザでの用法用量が異なるかは定かでなく、量がどれくらい必要かも現時点では不明という。これまで、新型または再興型インフルエンザ向けに約200万人分を備蓄用として政府に納入している。 

富士フHDの株価は25日の取引で一時8.8%高の5890円まで上昇し、ブルームバーグのデータによると1974年9月11日以降での最高値を付けた。日中上昇率は昨年11月5日以来の大きさ。

加藤勝信厚労相は22日の会見で、研究観察の一環として2つの医療機関でアビガン投与の具体的な準備に入り、そのうち1つの医療機関で開始したと話した。アビガンは富士フHDグループの製薬会社である富士フイルム富山化学が開発した。 

富士フHDでは現在、新型コロナウイルス向けの治験は行っていないが、加藤厚労相によるとアビガンはウイルスを増殖させる酵素を阻害し、新型コロナウイルスにも効く可能性があるという。

野村証券の和田木哲哉アナリストは電話取材で、25日の株価上昇について「化学や医療系の企業へと変革を進めており、アビガンの投与開始によってその実力を示した格好だ」と評価した。収益的には数十億円の寄与と大きくないが、「新型コロナウイルスに対して効果があるとなればさらに株価上昇が期待される」とみる。

一方、みずほ証券の森貴宏シニアアナリストらは25日付のメモで、現在の新型コロナウイルス検査陽性者数が政府備蓄量に対して限られるため、「現時点で政府備蓄の追加納入の可能性は低い」と指摘した。

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