粉飾決算をなぜ税理士と税務署と金融機関が見逃すのか。 – M&Aや会社売却なら「M&Aファイナンス新聞」
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注目のコメント
なんとも誤解が生まれるタイトル・記事内容だなぁ、と思ったのでpickします。税理士、税務署、金融機関が粉飾を「見逃して」いるわけではありません。
会計にはその目的によって財務会計、管理会計、税務会計の3種類に分かれます。会計士と税理士の一般的な守備範囲も含めて、以下簡単に記載します。
【財務会計】
・金融商品取引法および会社法から求められている、投資家や株主など対外的な説明を行うことが目的の会計
・一般的に粉飾決算というと、この財務会計上の処理を意図的に操作することをいいます
・基本的に会計士の守備範囲
【管理会計】
・企業がセグメント別等で、業績管理を行うことが目的となる会計。社内的に利用する目的の会計
・こちらも会計士の守備範囲
【税務会計】
・法人税等に基づき、企業が適切な納税を行うために課税所得を計算することを目的とする会計
・基本的に税理士の守備範囲
・意図的に税法の定めを逸脱して課税を免れることが「脱税」
したがい、税理士と税務署の業務の目的は「税務会計」による納税額の算出であり、「財務会計」上の不正である粉飾決算の訂正が主目的ではありません。税額が適切に算出されてさえすれば、財務会計が誤っていても訂正は行わないことは良くあります。
例えば、減価償却費について本来計上すべき金額を全く計上していなかった場合、税務会計上は財務会計上で費用として計上している金額を上限として損金算入をする定めのため、財務会計上は×ではあるものの、税務会計上は問題ない、という結論になります。
このような話は金融機関ももちろん把握しており、金融機関に提出している資料から、減価償却を財務会計上正しく行った場合の損益は金融機関内部で基本的には把握されていると思います。
ゆえに、税務署等は見逃している、というわけではなく、それぞれの目的に応じて作成された決算書等を利用している、という表現が適切です。
もちろん、利益調整を行った決算書をもって自分の会社の価値と勘違いされているような経営者の方のリテラシーの向上は、税理士や会計士の役割として求められているとは感じています。
なお、税務上OKだからといって利益調整による黒字化を行うことは僕は全く是としておりません。いや、税務署も金融機関も粉飾を指摘してきますよ。
経験ないんかなこの人。
粉飾に加担した税理士の責任を2割認めた裁判例(東京地裁平成28年9月14日)
なんか嫌だなこう言う内容の記事。
税理士法45条
財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第36条の規定に違反する行為をしたときは、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる。
2 財務大臣は、税理士が、相当の注意を怠り、前項に規定する行為をしたときは、戒告又は2年以内の税理士業務の停止の処分をすることができる。なんともステレオタイプにまみれた、
雰囲気で書いている記事ですね。
こういうのを真に受けないで欲しいものです。
税理士は見逃しているのではありません。
そもそも、決算書自体の正確性について責任を負っていません。
つまり、見逃す以前に、探す義務・責任を負ってません。
それ以上でもそれ以下でもありません。
なお、実務上、粉飾の兆候を見つけて、やんわりと経営者を
諭すことはあるかもしれませんね。
そもそも論としてこのタイトル。
「見逃すのか」って、オールスルーしてるような書き方ですが、
何か確証を持って書いているんでしょうかね。
監査法人や会計監査人でさえ見逃すことがあるんですから、
それ以外の会計監査責任を負ってない人達は、なおさらに
見逃す「ことが」あって当然ではないかと。
なお、近年、税務調査を発端として発覚する粉飾決算もあります。
税務署も、課税所得を増やしてる誤りをなんでもかんでも
全部スルーしているわけでは無いですよ。
追記
税理士兼公認会計士は少なからず存在します。
じゃあ、公認会計士持ちの税理士だったら、
粉飾決算を見逃さないのか?
こういう質問は極めてナンセンスです。関係ないから。
資格の問題ではなく、立場の問題。