【解説】ビジネスパーソンが学ぶべき、「#KuToo運動」の本質

2020/2/26
受付係や営業職、サービス業などに就く女性はヒール靴を履き、足が痛くても我慢するもの──。そんなこれまでの価値観にあらがう動きが、世界中で広がっている。
2015年にはフランスやイギリスで、女性の服装規定や慣例への抗議運動が活発化。
フィリピンでは2017年に、1インチ(2.5cm)以上のヒール靴を強制してはならないという行政命令が出された。
(出所:労働政策研究・研修機構 内藤忍氏発表資料からNewsPicksで作成)
そしてその波は、日本でも広がり始めている。
日本での抗議運動は「#KuToo(クートゥー)」と呼ばれ、次第に複数の大企業が、女性のスニーカーでの勤務を認めるようになった。
#KuTooは、「靴」と「苦痛」という言葉に加えて、性差別に遭った経験をSNSで語る際に用いられてきた「#MeToo」が掛け合わされた造語だ。
2019年にはユーキャンの「新語・流行語大賞」トップ10にノミネートされた。
その運動の中心に立つ石川優実氏は、英BBCの「世界で最も影響力のある女性100人」にも選ばれている。
なぜ、#KuTooは影響を持つ運動になったのか。こうした運動が起こる背景には何があるのか。石川氏による寄稿をお届けする。
石川優実(いしかわ・ゆみ)/グラビア女優、ライター、フェミニスト
1987年生まれ。2004年に芸能活動を始める。2017年末に芸能界で経験した性暴力を公表。以来、ジェンダー平等のために活動する。2019年に「#KuToo」運動を展開。

きっかけは1つの「ツイート」

#KuTooをひと言で表すと、「職場で女性にヒールが義務付けられたり、マナーとされたりすることを差別とし、異を唱える運動」です。
決して、ヒールを否定する運動ではありません。あくまでも、「職場で強制される」ことに抗議しています。
日本では、サービス業界を中心に女性従業員に対してヒールを義務付けている企業は、数多くあります。
そもそも私が#KuToo運動を始めたのも、葬儀場のアルバイトでの出来事がきっかけでした。
その職場の服装規定には、女性の靴について「黒のパンプス。ヒールは5cmから7cmを目安に」と書かれていました。